SDGs(エスディージーズ)で世界を変えよう!キックオフ講演会レポート
2017年1月26日(木)、ルミネtheよしもとにて「SDGs(エスディージーズ)で世界を変えよう!キックオフ講演会」が開催され、国連広報センター所長・根本かおる氏、国連大学サスティナビリティ高等研究所所長・竹本和彦氏、国際協力機構(JICA)企画部参事役・紺屋健一氏、GCAP Japan(動く→動かす)事務局長・稲場雅紀氏が登壇しました。
本講演会は、今後、国連総会で採択された『持続可能な開発目標SDGs(エスディージーズ)』の啓蒙活動に向けてよしもとがさまざまな取り組みをスタートするために、全社員が参加する勉強会として開催されたもので、大阪の劇場にも中継、「YouTube Live」でも生配信し、従業員約1000名を対象に実施されました。
いずれはよしもと所属芸人やタレントを通じてSDGsを広く啓蒙することをめざした最初の取り組みとなる本講演会には、従業員だけでなく芸人、そして文化人や俳優、ダンサーなども参加。芸人のみならず、さまざまな方面からの取り組みが期待されていることがうかがえます。
登壇者の紹介の後、まずは国連広報センター所長・根本かおる氏の講演が行われました。過去に15年、難民支援の最前線で仕事をしてこられたという根本氏は、難民キャンプでの娯楽のほとんどない暮らしを強いられている人々にとって、「笑うこと」がいかに大切なものかを痛感したといいます。自身も関西出身であり、お笑い好きでもあった根本氏は、その経験から「笑いが人を逆境から救う、笑いが人を支える」ことを実感し、「SDGsをよしもとさんと一緒に伝える活動をしていきたい」と発案、今回の取り組みに至ったことを明かします。
また、2030年までに世界をよりよい方向に引っ張る活動である『持続可能な開発目標SDGs(エスディージーズ)』について、全部で17の目標があることや、ホーキング博士やジェニファー・ロペス、ビル・ゲイツ、スティービー・ワンダーなどのそうそうたるメンバーによるSDGsの啓蒙VTRも紹介されました。
また、17の目標について、その中のひとつに含まれる「女の子の教育」を例にあげ、女の子の教育が推進されるとまずは目標4(質の高い教育をみんなに)が達成されるが、その後、教育によってその女の子が職を得られると、今度は目標8(働きがいも経済成長も)が達成され......というように、波及効果によって、一つだけの目標達成に留まらず、先進国・途上国の区別なくそれぞれのゴールがつながっていることが説明され、日本も例外ではなく、自分の足元から一人ひとりがアクションを起こしていくことの大切さを語りました。
続く国連大学サスティナビリティ高等研究所所長・竹本和彦氏の講演では、「大切な地球を将来世代に引き継ぐために」と題し、「"持続可能な開発"とはなにか?」や、「持続可能な開発目標SDGs」策定の背景についてなどが語られました。わかりやすい「持続不可能な例」のたとえとして、綿花の栽培のために湖面の面積が激減し、塩水化してしまったアラル海の現状を紹介し、「持続可能な開発」とは、こういった開発ではなく、環境や社会を守った節度ある開発であることが説明されます。
2015年が達成期限であったMDGs(ミレニアム開発目標)で積み残された課題への対処も行われることや、日本の取り組みとしては2016年の伊勢志摩サミットでSDGsをアピールする活動が行われたことなども報告されました。
続いては、国際協力機構(JICA)企画部参事役・紺屋健一氏による講演「セカイを変える国際協力−SDGs達成へのアクション−」。元サッカー日本代表の永島昭浩氏によるラオスやスーダンでのサッカー教室の模様や、世界各国にいる、さまざまな事情で「取り残されている人」を助けるために、JICAとの協力のもとLIXILや味の素などの日本の企業が製品を開発するなど、現在行われている具体的な取り組みが紹介されます。
また、紺屋氏は「吉本興業の方々に期待すること」として「誰もがチャンスがある、誰でも幸せになれる、そんな世界になる」ための支援を呼びかけ、「ぜひ一緒に世界を変えましょう!」という力強い言葉で締めくくりました。
最後に登壇したのはGCAP Japan(動く→動かす)事務局長・稲場雅紀氏。稲場氏は開口一番「『SDGsをどうやって伝えるか?』その結論は、『よしもとさんと一緒にやっていくしかない』と思っています!」と断言。これまでさまざまなSDGsを世に広めていく活動を重ねてきた中で、その難しさを痛感したという稲場氏は、1億2500万人の国民にSDGsを広めるためには、「よしもとの力が必要!」と、重ねて断言していました。
再度登壇された根本氏が「SDGsはいろんな意味でビジネスチャンスでもあります」と話した後、「私たち専門家がどんなに話してもなかなか伝わらないことを、芸人さんはわかりやすく面白く伝えることができる」と、とあるイベントに出演した際、SDGsの話をしたオリエンタルラジオの例を通して説明し、「"伝える"ということに力を入れていきたい私たちは、彼らの活躍に期待しています」と述べます。さらに、アジア6カ国に移住した「住みますアジア芸人」や、日本各地で活躍する「住みます芸人」についても、今後SDGsを啓蒙する役割を大いに担ってほしいとの期待も寄せました。
黒柳徹子さんからのメッセージや早見優さんのSDGsのテーマソング『恋のブギウギトレイン』のMV、『プラン』をテーマとした映画のワンシーンをつなげたコンピレーション映像などが紹介された後、2016年1月1日から始まったSDGsのこれまでの活動をまとめたVTRが流されますが、そのVTRには日本の映像がないことに触れた根本氏は、「今後は日本のアクションも世界に紹介したい」と語ります。
最後の質疑応答では、番組制作を担当している社員から「SDGsをテーマとした番組づくりについて」の質問や、世界の現状への問題意識についての質問などシリアスなものから、「『取り残された人がいないように』とのことですが、よしもとには『取り残された芸人』もいます。そんな芸人も『取り残さない』でくれるのでしょうか?」などの少々ユニークな質問も飛び出し、思わず会場から笑いが起こる場面も。
最後に登壇者の方々との名刺交換会も行われ、講演会は終了。
今後のさまざまな取り組みが今から期待される、有意義な講演会となりました。