14年の活動に終止符! カナリア解散ライブin東京『ボン&安達』
3月10日(土)、東京・ルミネtheよしもとにて「カナリア解散ライブin東京『ボン&安達』」が開催され、この日をもってカナリアはコンビを解散しました。
2003年に結成されたカナリアは、今年で15年目を迎えるコンビ。コンビとして最後の単独ライブとなった『ボン&安達』は大阪と東京の2カ所で実施され、この日の東京公演は、立ち見スペースまで埋め尽くした多くのファンがカナリアの最期を見届けることになりました。
いよいよライブがスタート。大きな拍手で迎えられ、ステージに登場したカナリア。1本目のネタは2006年の漫才「土下座のマリオネット」ですが、登場するなりいきなりネタに入ろうとする安達に、ボンが「急すぎちゃう?」とツッコみ、さっそく会場が笑いに包まれます。「ウエディングソングといえば?」をテーマに漫才は進んでいくのですが、安達によると、1位はペスカトーレ坂下の「土下座のマリオネット」だそうで、誰も知らないその曲を熱唱する安達に戸惑いながらも「ああー、これな!」と知ったかぶりをするボンに笑いが起こります。
ブリッジにこれまでの単独ライブの「オープニングVTR集」をはさみ、続いては2009年作のコント、「Music Box」。地方のうさんくさいラジオDJ・マイキー(ボン)の番組にゲストでやってきたアイドル・涼風らん(安達)。奥ゆかしく恥ずかしそうにしているらんにメロメロのマイキーでしたが、ファンからの「アキバ系は嫌いですか?」というメールに「嫌いです。気持ち悪いですよね。死ねばいいのに」と答えたり、その後にかけた新曲『ラブスケッチ』が、歌詞に「あんた」「ネオン」「入れ墨」などの言葉が入ったアイドルにあるまじきムード演歌調の曲だったり、最後の曲『武士道』は完全に長渕剛(風の曲)だったりと、徐々にらんのキャラは崩壊していくのでした。
続いては転換時の様子をステージで見せるという斬新な企画により、2人はステージ上で着替えながら会話を交わすことに。「終わりやね、ボンちゃん」としんみりとした様子で話しかける安達でしたが、先ほどのコントでセリフを噛みまくりだったボンに、続けて「ボンちゃん、今のコント......」と言いかけます。するとボンに「カンペキやったね」とさえぎられ、「え?」と愕然とする安達。さらに「ああいう"噛む人"なんですよ、マイキーさんって」と言い張るボンに、安達が「ああ、役作りなんや」と苦笑ぎみに返すと、「ちょっと僕、今、次(のネタ)のことで頭いっぱいなんで」と、暗に「話しかけないで」と会話を拒否するボンに笑いが起こります。
次は2017年作の漫才「マン様サービスセンター」。いろんな「〇〇マン」専用のサービスセンターに電話をかけるボンでしたが、家電が壊れたときに電話をするサービスセンターのように、回りくどい音声案内が続き、なかなか聞きたいことを聞けません。アンパンマンやモーガン・フリーマンなどのさまざまな「『〇〇マン』の場合」を経由しながら、さんざん時間をかけてやっと辿り着いたと思ったら、故障の原因を「電池かと」の一言で終わらされてしまうボンでした。
「スタッフの押し入れから出てきたカナリアVTR集」映像に続いては、2011年作のコント「伝説の剣」。選ばれた勇者にしか抜けないという、これまで誰も抜いたことがない伝説の剣をあっさり抜いたボンに驚く、剣を見守り続ける白髪の老人(安達)。しかしボンはその抜いた剣をまた元に戻してしまいます。驚いて「なんで戻したん? 1回カンペキに抜けたやん」と言い、もう1回抜いてもらって、「行け! 竜王を倒すのじゃ!」とキメた老人でしたが、またもや興味なさそうに剣を戻すボン。その後も「抜いてよ」「いや、抜かない」のやりとりが延々と続き、しまいにはお金のことまで言い出すボン。すると、「金の問題ちゃうねん!」と絶叫してキレる老人に爆笑が起こっていました。
コントのあとは、ここでもブリッジ代わりにステージでの転換タイムとなったのですが、ステージに現れるなり、「ヤバイヤバイ、時間ない!」と焦るボン。すると安達が「おまえが早く(剣を)抜かへんからやん(笑)!」とツッコみます。
ここからはショートネタが続けて4本披露されることに。2006年作の「カナリア日本語教室」、2007年作「二者択一」、2008年作「カナリア国語辞典」と続きますが、2004年作のショートネタ「アソパソマソ」ではひときわ大きな歓声が上がっていました。
続いて、2016年作のコント「パイロット」。部隊を去るという隊長(安達)に「なんでですか!? オレのせいですよね。オレが第3部隊のやつを殴ったから......」とうなだれるボンでしたが、隊長は「おまえ、オレをかばってくれたんだってな」と、美しい師弟愛の会話が繰り広げられます。が、そこに緊急出動の要請が! 最後の出動となる隊長でしたが、とにかく緊急なのに着替えがめちゃめちゃ遅く、どんくさい隊長にドン引きのボン。しまいには「オレ今日やめとくわ」と言い放つ隊長に爆笑が起こっていました。
2006年作の漫才「新郎ボン溝黒」では、いずれは結婚したいと思っているというボンが「緊張するから今から練習しておきたい」と新郎役を練習するのですが、「ボン溝黒」ではなく本名の「溝黒和昭」と呼んでほしいのに、牧師役の安達が何度やっても「ボン溝黒」と言ってしまうため、練習がまったく進みません。イライラしたボンが、「顔もうつろやな」と安達にダメ出しを続け、「いいか、(本名の溝黒和昭が)ボンっと入ったらええねん!」と自らややこしいことを言ってしまったため、次の練習でも安達にドヤ顏で「ボン溝黒」と呼ばれてしまい、観客からは拍手が起こります。
この作品でも言い間違いや言葉が出てこないなど、とにかくグダグダだったボン。新婦と神父を言い間違えた時などは「読みが"シンプ"で同じでややこしいから、神父じゃなくて牧師にしようってなったやん!」と安達が呆れたようにツッコむ場面も。また、あまりのボンのグダグダぶりに業を煮やした安達が思わずコント中に「どういうことや」と漏らすと、ボンが客席に向かって「みんなで作っていきましょう!」と完全に開き直った一言を。しかしこの日の温かい観客はボンの言葉に拍手で応えてあげていました。
2010年作のコント「卒業」では、元カノからの結婚報告の電話を受けたボンが、思わず映画『卒業』のダスティン・ホフマンのような"結婚式場から花嫁を奪う"というシチュエーションを実践するのですが、式場から奪ってきたのは花嫁ではなく花嫁の叔父だった......というとんでもないミスを犯してしまいます。そのミスにやっと気づき、立ち止まったボンに花嫁の叔父(安達)が「......え~、のりちゃん(花嫁)の叔父です」と自己紹介し、「君は誰やー! ここはどこや」と言い放つ場面では大爆笑が起こります。さらに「僕ずーっと言うてたよ。『まちごうてる』て。『君、まちごうてるよー』って」と冷静に言い続ける叔父さんに笑いが止まらない観客でした。
2011年作のコント「青空」では、水泳部の監督(ボン)に呼び出された安達が「おまえを水泳大会の選抜メンバーから外す!」と言われ、「なんでですか? 僕、誰よりも早いのに!」と納得できないと食い下がるのですが、その頭はどう見てもカッパそのもの。ずっとそのことを黙ってあげているボン監督がこらえきれなくなり、「だって自分カッパやん!」と言い放ったところでなぜかダンスタイムに。その後もむりやり水泳大会に出場するものの失格となってしまい、泣きながら客席(水泳大会の会場?)をあとにするカッパの姿が印象深いシュールなコントとなりました。
その後の転換時、ステージで着替えながらポツリと「最後、間違えてもうたわ」とつぶやくボンに「え? ......全部やろ?」と容赦なくツッコむ安達。セリフが思い出せなくてずっと焦っていたと話すボンに「ストレスいかついな」と同情しながら「でも、次で最後か......」とつぶやく安達に「え? 次が最後なん?」と、驚いたように返すボン。次が最後だということにも気づいていないボンの言葉に笑いが起こります。さらに安達が「『新郎ボン溝黒』の出だし、エグかったで。マジでニワトリとしゃべってんのかと思ったわ。カナリアとややこしいけど」とダメ出しをしながら、いよいよ最後の漫才へ。
最後に披露するのは、2010年作の漫才「ドレミの歌ゲーム」。オリジナルの歌詞の「ドレミの歌」でゲームを展開する2人ですが、歌が長すぎてどの音を指定されたかわからなくなりながらも必死で食らいつこうとするボンと、その姿を笑顔で見つめる安達の姿は、これが本当に最後の漫才かと思うほど楽しそうです。
そして、ついに漫才が終了。14年半分のねぎらいが込もったお客さんの温かくも盛大な拍手に見送られ、ステージを後にする2人でした。
すべてのプログラムを終え、舞台に再登場したボンは、泣きながら「めちゃめちゃ楽しかったです。僕がどんだけ間違っても笑ってくれてうれしかった。ほぼ全部間違えました。ホンマ、ムリなんです! ネタ10本なんて覚えられないんです」と、芸歴10年以上の芸人とは思えない発言で、しんみりとした客席をも笑いの渦に巻き込みます。
さらに、解散に至る経緯を真摯に説明するボン。2003年からM-1優勝をめざしてがんばってきたこと、でもそのラストイヤーである今年、「もう出たくない」と自分が言ったことなどを説明し、「解散します」と言ったのですが、それまでのボンの間違いっぷりを見てきたファンからは涙ではなく笑いが起こっていたため、若干不満そうに「......なんで笑うんですか」とつぶやくボン。
安達も「まず、え~っと......、ずっとなに言うてるかわからないです」と相方をバッサリ切ったあとは、去年の10月にボンに呼び出され、解散したいと言われたことを明かし、「今までよくついてきてくれたな、と。すごくしんどかったんやろうなと思って。ボンは芸の道をあきらめて大阪に帰ろうとしてるんやなと思ったのに、『1人でやんのかい!』と」とツッコみ、笑いを誘います。
安達の「名前は残して、それぞれピンで活動したらええやん」という提案も蹴ったというボンでしたが、ここへきて急に名残惜しくなったのか「お互い50歳くらいになったら、また......」とモゴモゴと言い出し、安達に「解散せんかったらええやん、じゃあ(笑)!」と呆れながらツッコまれます。さらに「だからデータ消さんと、台本残しといてください」と話を続けるボンに「残してたって覚えへんやないか!」と安達の渾身のツッコミが炸裂。そんなコンビの最後のトークをファンは笑顔で見守っていました。
終演後、コメント取材に応じてくれた2人。ボンは涙の理由を「楽しかったから泣かないと思ってたんですけど、終わった瞬間に実感が湧いてきて、(涙が)止まらなくなりました」と話しますが、安達は「ボンがずっと何言ってるかわからなかったので涙もクソもなかったですね(笑)。これがボンの真骨頂です」と笑います。
ライブでは、カナリアでいちばん最初に作ったネタ「アソパソマソ」が感慨深かったと話す安達は、「『笑って見送ってあげよう』っていうお客さんの気持ちが伝わってきて......。本当にあったかいお客さんに支えられてここまでやってきたんやなって思いました」とファンへの感謝の気持ちを明かします。するとボンも「お客さんがあったかすぎて、『え? オレ、こんなに間違えてんのに、これでいいの?」って。そのぐらい笑ってくれはるんで助かりました。楽しい2時間でした。幸せでした」としみじみと振り返っていました。
ラストライブなのにあんなに間違えてしまったことについて「後悔はないですか?」と聞いてみると「ないですね。僕の限界出せたんで」と断言するボン。すると安達が「これぞボンちゃんです。別にケンカ別れしたわけじゃないので、なんか困ったことがあったらいつでも相談してくれたらなって思います。まぁ、断りますけど(笑)」とおかしそうに話します。
そんな安達のことを「お笑いの才能があるので、僕に(その才能を)使うよりもっといろいろ、幅を広げてもらったら絶対すごい人になると思うんで」と言いながらも、続けて「もう、僕いなくても大丈夫です」と、どこか上から目線な言い方をするボンに爆笑する安達でした。
今後の2人はそれぞれピン芸人となり、活動を続けることに。安達はこれまで通り「安達健太郎」の名前で活動。「将来は、芸人としても役者としても作家としても、第一線でできてたらいいですね」と展望を話します。
ボンは「ボンざわーるど」に改名し、音楽ユニットを結成するなど新たな試みにも挑戦するよう。「お互いが一流になっていて、カナリアをまたやったときにお客さんが集まってくれるのが理想なので、そうなってるといいですね」と話し、そのためには「子どもからお年寄りまで、みんなに受け入れられる人になりたい。平和の象徴になりたい」とボンが明かすと、「......ハト? カナリアからハトになってややこしなあ、もう」と呆れながらもツッコむ安達でした。
そんな2人の最後の姿は、4月27日(金)にオンエアされる番組「最後の一日 最後の言葉~本当にそれでイイんですか?~」(日本テレビ)でも見ることができますので、お見逃しなく! そして今後の2人の活動にも期待していてください!
【カナリア】