大盛況の東京初独演会で『ちりとてちん』など三席披露! 桂文三独演会『THE 文三(BUNZA)』レポート
7月15日(日)、東京・神保町花月にて、桂文三独演会『THE 文三(BUNZA)』が開催されました。
ほんわかとした愛嬌のある温かい人柄と初心者でも楽しめる親しみやすい陽気な高座が魅力の落語家の桂文三(かつらぶんざ)。
1991年に五代目桂文枝の十八番目の弟子として入門すると、2009年に伝統ある名跡である五代目桂文三を襲名し、戦後初となる吉本興業主催による襲名公演も開催しました。
2010年に繁昌亭大賞激励賞、2016年に繁昌亭大賞を受賞するなど、上方落語界の次世代を背負う注目の実力派による初の東京での独演会は、ゲストに柳家喬太郎さんを招いて満席での開演を迎えました。
出囃子に合わせて高座に上がった桂文三は、「ものすごくお熱いなか、みなさんのご来場、ありがとうございます」とさっそくの笑顔で挨拶。
そして、兄弟子である六代 桂文枝による『第10回 神保町・創作落語の会』が前日同会場で行われ、その際に使用された紋入りの幕を「そのまま使わせていただいております」と説明します。
その後は、桂つく枝時代、師匠の前座として新宿紀伊国屋ホールの高座に出演したことなど、東京での思い出を回想しつつ、上方落語と江戸落語の違いをまくらにし、一席目に上方落語の『時うどん』を披露。
江戸落語の『時そば』では主人公が一人ですが、『時うどん』では、喜六、清八という2人組がうどん屋へ入る様子が描かれており、文三は見事に演じ分けて、随所で笑いを誘いました。
下げを迎えると、日本舞踊を習いに行った際、「丸いものがおばさま方は好きなんですかね(笑)。かわいがっていただきまして」と年配の女性陣に好かれたことや、地方の落語会にて、あまりにも『時うどん』に感情移入する客から「鰹だしや!」といった声が上がったといったエピソードで場内は爆笑!
二席目の『七度狐』も喜六、清八のコンビニよる伊勢参りを題材にした上方落語ですが、"はめもの"と呼ばれる三味線、太鼓の上方落語ならではの効果音も加わり、見る者を独特な世界観へと引き込みました。
そして、文三に入れ替わって、ゲストの柳家喬太郎さんが高座に登場。
挨拶後、すぐに「ゲストに呼んでいただき、ホントにいい迷惑でございます」と言い放ったり、神保町花月について「何度来ても微妙に道に迷う」「個性的な建物の割にはまわりに埋没している」などと各方面に毒づき、さっそく笑いを誘います。
その後は、1年半ほど入門が遅い文三について「いつもニコニコ笑っています。いつもニコニコ笑っている人間は信用できないんですが」などと人柄を紹介しつつ、二人会を展望する一幕も。
また、学校寄席で北海道を巡ったエピソードや、共通の趣味がでもある『ウルトラマン』シリーズの「怪獣」をテーマにした居酒屋『怪獣酒場』へ一緒に出かけた際の文三の興奮ぶりを再現してみせました。
2人の親交は「仲間内の愛情を超えて、これは恋愛と言っていい。文三の恋の物語...それが言いたかっただけです」とまくらを締めて、創作落語『結石移動症』へ。
池袋の歓楽街にある飲食店を舞台にした親子の物語で、ハッピーエンドながらも意外な結末に爆笑と拍手が起きました。
仲入りを挟み、再び桂文三が高座へ。
「柳家喬太郎師匠による桂文三の人となりを聞いてもらいました(笑)」と、柳家喬太郎さんとのエピソードの釈明をした後、「極端に好かれる人間、嫌われる人間、そんな人間が出てくる」噺として、本日最後となる三席目の『ちりとてちん』を披露します。
NHK連続テレビ小説のタイトルにも使われたおなじみの上方落語を終始、陽気に演じ終えた文三は、この独演会の継続を展望しつつ、「2回目の時は、ゲストが変わり、3人になるかもしれません。その時はぜひお越しいただければと思います」と呼びかけます。
また、満員の客席に「感謝の気持ちでいっぱいでございまして、この気持ちを大阪に持ち帰って、精進いたしまして、また東京に来れるようがんばります」と意気込む文三。
そして、「もし可能でございましたら、よしもとが責任を持って、お金を届けます。お気持ちで結構です」と、西日本を中心とした豪雨災害被害支援のための募金を呼びかけ、希望者には今回の独演会のポスターにサインを入れて差し上げる旨を伝えます。
改めて文三が感謝を述べ、終演を迎えると、ロビーに設置された募金箱前には長い行列が出来ていました。
今後の桂文三、並びによしもと落語の活動にご注目ください。
【桂文三】