犬の心・押見が演出『解放』がいよいよ11月16日開演!押見×ヒラノショウダイ×いまさらジャンプ山田座談会
11月16日(金)~18日(日)まで、東京・神保町花月にて犬の心・押見泰憲が演出する『解放』が上演されます。
本作は、登場人物6人だけの、密室で繰り広げられる会話劇。いったいどんな舞台になりそうなのでしょうか? 稽古真っ最中の押見と、出演のいまさらジャンプ・山田裕磨、ヒラノショウダイを直撃し、公演の見どころなどについて語ってもらいました。
(向かって左から:犬の心・押見泰憲/ヒラノショウダイ/いまさらジャンプ・山田裕磨)
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――物語の内容について、脚本のたぐちプラスさんと押見さんで作っていかれたんですか?
押見:そうですね。プロット段階から相談して。なんなら稽古中も相談しながらやっていますね。
――この作品のアイデアというのは、どのようなところから?
押見:脚本のたぐちさんは、「締め切りに追われすぎて、"解放されたい"っていう気持ちをタイトルにしたんだ」っておっしゃっていました(笑)。なので、セリフの端々に「たぐちさんって日頃こういうこと思ってるんだ」っていうのは感じますね。
――演出される上で注意されている点は、どんなところでしょうか。
押見:ふざけてはいます(笑)。台本を壊さない程度に、できるだけ笑いを増やす作業をしていますね。
――出演者のおふたりはいかがですか?
押見:このふたりはよく一緒にやっているのである程度信頼感がありますね。ほかに初めての子もいますけど、稽古しながら「こんな子なんだ」ってわかったり。「この子、この役合わないから配役変えないとな」とか。
ヒラノ:ありましたね(笑)。
押見:配役、変えました。初日の本読みの段階で「あ!」と思って。
山田:僕がやることになった松葉役は、元々ぺんとはうすヤマトがやるはずだったんです。でも、本読みの段階で交代になりました。
――松葉は重要な役ですよね。
押見:そうなんですよ。だから、重要な役をあいつが背負えなかったってことですよね。まぁ、人数が少ないので全員がキーパーソンではあるんですけどね。合う合わないがあるので、変えてよかったです。
――ではヒラノさん、山田さんはお稽古してみての感触はいかがですか?
ヒラノ:本読みを1回して、配役が変わって。次にまた本読みして、押見さんが体調崩して稽古がなくなり......(笑)。
押見:だから、昨日が稽古初日みたいなもんだよね。
ヒラノ:稽古がなくなったのでセリフ覚えておいてくださいって言われて、稽古が再開したら今度は台本が少し変わっていて。
押見:ごっそり変えたとかじゃなくて、パズルを組み替えたみたいな感じだよね。僕は芸人をやっていて、自分が出ることも多々あるのでそう思うんですけど、芸人だったら対処できるんじゃないかなって。役者さん相手だったらこんなことしないと思います。
――じゃあ、それに対しておふたりも見事に対応されて?
押見:本番どうなるか、まだわかんないけどね。
ヒラノ:ハハハッ! 僕らもまだ全容が見えていないので。
――ほぼ出ずっぱりで、大変そうですね。
山田:そうですね。出たらずっとハケずに舞台にいるので、そこはみんなでの助け合いになるのかなと。だから台本通りに覚えていると進まないだろうなとは思います。誰かがセリフを飛ばしたりすることも絶対にあると思うので、そういうときにうまく汲み取れたらいいなと思います。
――では、それぞれの役柄について教えてください。
ヒラノ:僕は高嶺凌というシナリオライターの役です。先ほどの押見さんの話で、いろんなセリフが「これはたぐちさん自身の言葉だったんだ」と初めて知ったんですけど(笑)。どういう人物かというと......内容に触れずに説明するのは難しいな。......一見ちゃんとした人に見えますけど、ダメなところは自分に近いような気がしますね。僕も遅刻の言い訳とかしちゃうほうなんで。
押見:一番よくいるような人かもしれない。善良な人なんだけど、ダメな部分もあるっていう。で、山田の演じる松葉海良という役は、稽古でがらっと変わったんだよね。
山田:僕は、みんなより一日遅れて稽古に参加したんですけど、その時点でまったく変わっていました。最初の本読みでは闇を抱えたような人だったんですけど、稽古していくうちにバカ正直な部分が前面に出されて、どっちかといえば天然な感じになっていました。
押見:キャラクターを変えたっていうより話のシステムをちょっと変えたので、それに伴って変わりましたね。なんていうか......すげーバカになっちゃった。
ヒラノ:シンプルにいえばそうですね。
押見:バカが頭いいことしようとしてるやつになりました。
――おふたりのキャラクターは、少し因縁のある間柄で。
ヒラノ:そうですね、一悶着ありますね。
押見:僕は俯瞰で全部を見るじゃないですか。そうすると「全員、大したことねーことを大ごとにしちゃってるよな」って(笑)。
ヒラノ:最初の台本では、このふたりのやりとりがすっごくシリアスな、人生を揺るがすような大問題として描かれていたんですよ。でも、稽古を重ねてみると、多分そんなことにならないだろうなって。改札前の痴話喧嘩ぐらいに見える、でも真剣、ぐらいの見え方になってきそうだなと思いますね。
押見:ワンシチュエーションの会話劇ってよく言われるけど、会話劇なのかなってだんだん思ってきて。
ヒラノ:バカ6人の......。
押見:ふざけ合いみたいな感じになりそうです。
――アドリブもけっこうありそうなんですか?
山田:日替わりで変えて、演者を笑わせたいなって思ってます。アドリブって本来お客さんを笑わせるものなので、本当はいけないことだと思うんですけど、今回、僕がキャストの中で一番芸歴が上なので、そこの部分をちょっと楽しもうかなと思っています。
押見:自由度は高いからね。
ヒラノ:普段、山田さんはクールだったりクレバーな役が多いから、あんまり遊べないですもんね。こういう役、珍しいですよね。
山田:そう。神保町花月のお芝居にはもう20何本出てるんですけど、多分こんなにふざけた役は初めてじゃないかと思います。
押見:ふざけた役だよねぇ。確かにこのふたりって、見た目とか声のトーンとかからして、話を進める柱のキャラクターにしやすいんですよ。だから、今回みたいなのは珍しい。コンビではボケだっけ?
山田:ツッコミです。
押見:あ、そうか。でも意外とこういうのもやらせたら楽しそうだなって。ネタでツッコミの人でも、普段は天然だったりすることってあるじゃないですか。ツッコミの人って基本的にはちゃんとしてそうに見えるけど、そういう"ちゃんとした人"がヘンだったりするほうが面白いと思うんですよ。
――そんな演出家・押見さんは、おふたりにとってどんな存在となっていますか?
山田:ボケなし、ヨイショもなしで率直に言うと、出演依頼のメールが来たときに「演出 犬の心押見」って書いてあった時点で「出る」という返事をしました。僕、最初に神保町花月のお芝居に出演したときの作品で、押見さんと共演したんですよ。『ナツテール』っていう......。
押見:ああ!
山田:キャストが犬の心さん、シューレスジョーさん、ピクニックさん......。そこに芸歴3ヶ月ぐらいの僕がポンと入れられて。そのとき、押見さんからいろいろ教わったりお話してもらったりして、それ以来ずっと尊敬しています。
押見:いやぁ、恥ずかしいっすね......。芸人の演者は、芸人の演出家で助かるって思う人が多いと思うんですよ。ゴリゴリの演劇畑の人のすごさっていうのもあるけど、稽古の気楽さは芸人演出家ならではだと思う。本番がいいか悪いかは別としてね。
ヒラノ:僕も、今回「演出 犬の心押見」を見て、即返信しました。押見さんには去年の11月に初めて演出つけてもらったんですけど、そのときも最初の本読みと本番の雰囲気ががらっと変わって、すごいなと思いました。台本を読んだ段階で「ここ絶対、真剣なシーンだからマジメにやらなきゃ」と思っていたところを、笑いの箇所にしちゃったりするんですよ。でも、それで話がブレたりしないっていう演出の仕方で。それまでは、シリアスなところはシリアスに、面白いところは面白く、っていうのが普通だと思っていたので、「こんなことできるんだ!?」って新鮮な感動がありました。なので、押見さんの演出なら絶対出たいなと。まぁまぁ、神保町からの依頼を僕が断ることはないんですけどね。
山田:俺が感じ悪いやつみたいじゃん。
ヒラノ:ハハハッ! ほんと神保町花月にはお世話になっているので。で、去年は押見さん演出の作品のあとに、家城(啓之)さん演出の作品で、演者として押見さんと共演もしていて。
押見:そうだね。今、名前が出たから言うけど、僕は家城さんが演出された作品に出たときに、今ヒラノが言ったのとまったく同じことを思ったの。捕らわれの身だった僕が、脱出するチャンスをもらってみんなで走って逃げるっていうシーンを、緊迫感ある音楽の中でやるんだけど、家城さんが「これ、押見足遅いやつってことにしようか」って。で、脱走しているときにどんどんみんなから遅れて最終的にはジョギングぐらいになるっていうのをやったんだよね。そうしたら、確かに笑いになるけど緊迫感も削がれず面白いシーンになった。それで「こういうことやっていいんだ」ってわかったんだよ。それから、僕が演出させてもらうときは、そういうことをやっちゃいます。シリアスなシーンほどちょっと崩したら笑いになりますし。マジメに見てるのに急にヘンなことになるから、お客さんとしては「これ笑っていいのかな」となるかもしれないですけど、「笑っていいんだよ」と言いたいです。
――台本を読んだだけだと、密室劇だから緊張感を持って見てしまいそうな感じがしましたが......。
押見:絶対ないです。緊張する空気を作らせません。笑って見ていただければと思います。
――では、タイトルにちなんでお三方が「解放されたい」と思うものは?
押見:稽古ですね。早く本番始まってくんねーかなと思ってます。本番が楽しいからやってるだけで、ネタとかでも打ち合わせはそんなに楽しいもんじゃないですよ。本番を楽しむために苦労しているっていうだけですね。
山田:僕はバイトですかね。今日もバイト終わってからここに来ているので。バイトから解放されてお笑いだけで生きていきたいですね。
ヒラノ:僕はほんとにないかもしれない。バイトも楽しんじゃってるし......。居酒屋のバイトなんですけど。
押見:ホール出てるの?
ヒラノ:ホールもキッチンも。
山田:居酒屋のバイトで楽しいと思ってるやつなんて、この世にいるの?
ヒラノ:いないですかね......? 周りが同期の芸人ばっかりなんで、ずっと楽屋にいるみたいな感じなんですよ。
押見:すげーな。じゃあぬるま湯から解放されないと。
ヒラノ:その通りですね。
押見:新しいことをしたいとかは?
ヒラノ:あ、車の免許持ってないんですよ。27にもなって。なので無免許から解放されたい。
押見:俺、41で免許ないけど。
山田:えっ、新潟出身ですよね?
押見:高校卒業してすぐ、こっち来たんで。......恥ずかしいね。パスポートもないから、身分を証明するものがなくて困ってるんだよ。(山田に)免許ある?
山田:持ってます。僕、群馬の田舎なので、車ないと生活が厳しかったんです。
ヒラノ:じゃあ、いつか押見さんと一緒に免許取りにいきます。
――では、最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。
山田:6人出ずっぱりで、人数は少ないんですけど、その人数の少なさを感じさせないような笑いの量になっていると思います。笑いたいと思っているお客さんには満足していただける公演になっていますので、ぜひお待ちしています。
ヒラノ:神保町花月の公演の良さって、笑えて、若手の芸人が頑張ってて最後ちょっとほっこりするというところだと思うんですけど、それが全部詰まっている作品です。そして押見さんがいかに天才であるかということがありありと舞台上に出ている公演になっていると思います。
押見:若手の劇場なので、お客さんが入らない公演もありますけど、毎回面白いは面白いんです。今回も面白いことは間違いないと思いますので、ぜひ足を運んで、笑ってください。
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