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2016年5月28日 (土)

『シンシアリー・ユアーズ ― 親愛なるあなたの 大宮エリーより』開催~大宮エリー インタビュー

本日5月28日(土)より青森県「十和田現代美術館」にて、脚本家、CM ディレクター、映画監督、エッセイスト、コピーライター、ラジオパーソナリティなど多彩な活動で才能を発揮する大宮エリーが、"画家"として美術館での初個展『シンシアリー・ユアーズ ― 親愛なるあなたの 大宮エリーより』〈2016年9月25日(日)まで〉を開催。
2012 年に行ったライブペインティングをきっかけに絵画制作に本格的に取り組み、2015 年には絵画による個展を開催し、初の画集を出版。伸びやかで、天性のバイブレーションみなぎる作品は、物語性を感じさせ、見る者の感情に訴えかけると高い評価が。本展では、代表的な絵画作品、ドローイングを展示するとともに、ハープとギターのディオユニットTico moonとのライブペインティングなどイベントも開催。また、十和田市内の商店街とのコラボにより「大宮エリーの商店街美術館」も同時開催します。その見どころを、ご本人にうかがいました。
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――大宮さんは、脚本に映像に演出にと様々なことをされていますが、絵を描くきっかけとなったのは?
2012年にPARCO MUSEUMさんから、「いろんなことをされていますが、アートはまだなのでPARCOとやりませんか」と展覧会のお話をいただきまして。コミュニケーションに悩んでいる人が多いということと、震災があって心の問題がクローズアップされている時期でもあったので、自分の気持ちを外に出すためにはどうしたらいいかという展覧会(「思いを伝えるということ」展/2012年 PARCO MUSEUMほか)をやりました。具体的には、"心の箱"という白い箱をいっぱい作って、手を突っ込むとチクッとしたりザラザラしたり、でも後ろに回ると透明になっていて中身はタワシや茶碗で...というもの。心に触れるということ。それが怖いわけですよ。見えないから。でも、見えちゃえば割とシンプルなんですよね。"立ちはだかるドア"は、ドアがいっぱいあって、散らばったカギの中から直感で一個だけ選んで鍵穴に差してもらう。「人生には乗り越えられないんじゃないかっていうドアが立ちはだかるけど、みんな必ずドアが開くカギを持たされて生まれてくる。だけど大人になるとその在りかが分からなくなっているだけですよ」という詩を書いて。カギを差すとドアが開くという仕掛けなんですけど、開いた時に人生の前に進んでいく感覚を取り戻してもらうというものですね。こうした8つのインスタレーションを作って全国を回った時に、「小山登美夫ギャラリー」の小山さんから、岡山県・直島の美術館会長の福武總一郎さんがアーティストを支援する賞を受賞されたパーティーに、インスタレーションを借りたいというお話をいただいて。その時、主催者の方から、ライブペインティングもできないかと言われて、唐突でしたが「できない」って言っちゃたら困るのかなと思って「じゃあやってみます」と。それが絵を描くことになったきっかけですね。

――それまで絵を描いた経験や、絵についての知識などはあったのですか?
ないです。そこで「聞いてませんよ」と言う人もいるかもしれないけど、「うまくその場が収まるのであれば」と思って。いざ会場に行ってみたら安藤忠雄さんや杉本博司さんなど有名なアーティストの方がいらっしゃって。ちょっと正気では描けなかったんで、ワインを飲んで絵を描いたんですけど、そうしたら会場がワーッと沸いて。"福武さんおめでとうございます"という気持ちで描いたら、福武さんが「いい絵だから欲しい」と言ってくださったんですね。気持ちが伝わったんだなと思うと、すごくうれしかったですね。そこで、ギャラリーの方が絵からお話をいただいて、絵の個展が始まりました。

――福武さんにお祝いの気持ちが伝わったように、大宮さんの絵は感情を揺さぶる作品だと思いますが、絵を描く時に心がけていることは?
絵を見た方に元気になってもらったり、ハッピーな気持ちになってもらいたいですね。たまたま仕事でパワースポットに行くことが多くて。ペレという火山の女神がいると言われるハワイ島に行った時に、そこの酋長さんに「あなたはペレに呼ばれて来たんだから、マグマが噴き出して海に落ちるポイントに行って花を投げ入れなさい」と言われたんですよ。夜中、道なき道を星を頼りに2時間かけて歩いて行って、真っ赤なマグマを、大地が生まれていく瞬間を見た時に、「地球というもの、宇宙というものに自分たちは愛されている。これはその色なんだ」と感動して。次の日に帰国してすぐに絵を描くことになったんですが、そのテーマが"愛"だったんですよ。これを描くために自分は酋長さんに会って、マグマを見たんだ、全てのことが導かれてるんだなと。みんながあのマグマを見ることはできないけど、私は絵としてそれを伝えるという役割があるのかなと思って描いたのが「A DIRECTION」です。文章も注釈もなかったのに、絵を見に来た方から「圧倒的な愛みたいなものを感じる」「熱い感じがする」「エネルギーをもらえる気がする」と言われて、やっぱり伝わるものなんだなと。絵を見せたいというよりも、自分が圧倒的なものを見て救われたり癒されたりしたもの、そのエネルギーを転写して、みんなとシェアするために絵を描いてるという感じですかね。

――「A DIRECTION」をはじめ、「燃えたぎる火山」「赤い女の子」など、大宮さんの作品は赤が印象的なものが多いですが
赤いシリーズは、全部ハワイ島の後に描いたものですね。青い海を描いたものは、沖縄・久高島に行った時に、たまたま神様の儀式があって参加することになって、かみんちゅさんがお祈りして手でこねたモチを食べたら40℃くらいの熱が出たんですね。次の日に、大阪の中之島デザインミュージアムでの個展で絵を描かなくちゃいけなかったんですけど、ふらふらになりながら絵を描いたら熱が下がったんですよ。久高島で見た海のサンゴがきれいで、サンゴを守りたいという気持ちと、見た人が海の中をたゆたうような気持ちになってくれたらいいなと思って、三線の音楽をかけながら描いたんですけど。そうしたら、個展に来てくれたお客さんが、その絵の前でバタバタと寝転がって寝始めちゃって。文章を書く仕事をずっとしてきましたが、絵には言葉にならない何かが伝わる気がしますね。絵じゃないと伝わらない波動みたいなものがあるのかな。

――絵は、これまでやってこられた文章、映像とは、また違ったものが表現できる方法であると。
ライブペインティングに関しては、いろんな地方のロックフェスで、30分くらいの尺でミュージシャンの方とコラボして絵を描くんですけど、その時に映像を撮ってきた構成力は生きてるなと思いますね。みんなの気持ちを描いていくんですけど、例えば「希望の海」は、音楽を聞いていて海が見えてきたから海を描くと、みんなの心にも海が浮かんでいるから「私もそう思ってた」という空気が広がるんですね。その後、不安な音楽になったので曇天を描く、最後は希望あふれる音楽になったから希望の虹を描く、するととみんなが泣くんですね。そういう展開っていうのは、映像をやってきたからというのはありますね。

――今回の展覧会では、Tico moonとのコラボでライブペインティングをされますが、どんなものになりそうですか?
Tico moonさんとは渋谷ヒカリエでの展覧会でもライブペインティングをやりまして、湖畔の絵と、赤いバラの絵を描いてるんですが、すごく相性が良くて。天国からの音みたいなハープとギターなんですよ。今回は初めての美術館という空間で、十和田という土地で、どういうものが描けるのか楽しみですね。

――今回、十和田での開催というのは、意味があるのですか?
たまたまですね。美術館で展覧会をやりたいとは思っていたんですが、昨年2月の展覧会に「十和田現代美術館」の副館長さんが来てくださって、絵を見て推薦してくださって。5月から9月という長い期間の個展も初めですし、今回は商店街とのコラボ企画も依頼されたので「大宮エリーの商店街美術館」も開催します。1つは、シャッター商店街の空き店舗に絵を描いて美術館にするんですが、現地入りして、十和田の空気を吸って絵を描くということをやろうと思っていて。2つ目は、商店街のシャッターに絵を描くんですが、東京からミュージシャンと呼んで、現地の子どもたちとライブペインティングをしようと思っています。それから、アーケードを虹色に変えて、アートで商店街を明るくしていく。お客さんに、美術館だけでなく商店街に来てもらって、土地のものを食べて、地元ならではのお店に行って回遊してもらう。そういうひとつ試みもありますね。

――今回の展覧会のタイトル『シンシアリー・ユアーズ』は、手紙の結びのことばでもありますが、このタイトルに込めた思い、展覧会のコンセプトは?
見に来てくれた人に、「今日は青空が本当に気持ちいいな」とか「道端に咲いている花がすごくきれいだった」とか、届けたい思いみたいなものがあって。朝早く起きちゃったから近くのパンケーキ屋さんに入ったらすごく美味しくて癒されて、その気持ちを込めたいと思ってパンケーキの絵を描いたんですね。それを見た人が「清々しい朝なんて1年に1、2回しかないけど、その1、2回しかない朝を、この絵を見ると思い出す」と言ってくれたんですよ。私が届けたかった「朝」という手紙を読んでくれた気がしたんですね。そういう絵を展示したいと思って、このタイトルにしました。どの絵も、dearからはじまり、sincerely yoursで終わります。みなさんにとっての一枚があるといいなと心から思っています。

『シンシアリー・ユアーズ ― 親愛なるあなたの 大宮エリーより』

【開催】2016年5月28日(土)~9月25日(日)
【会場】青森県 十和田市現代美術館