英語翻訳担当のチャド・マレーン「日本のお笑い文化はすごい」と感嘆!!『火花』190ヵ国配信記念 外国人上映イベント
6月9日(木)、都内にて『「火花」190ヵ国配信記念 外国人上映イベント』が開催され、チャド・マレーン、鈴木奈々さんが出演しました。
今月3日(金)より世界190ヵ国で全10話一挙にストリーミングされたNETFLIXオリジナルドラマ『火花』。何度もお伝えしている通り、昨年、第153回芥川賞を受賞したピース・又吉直樹による同名小説をドラマ化した作品で、林遣都さんと波岡一喜さんがダブル主演を務めて売れない若手お笑い芸人の青春ともいえるべき、10年を描いた感動作です。
5月28日、29日にはドイツ・フランクフルトで開催された映画祭『NIPPON CONNECTION』で上演されたのですが、現地の方々からは拍手喝采が起こったという今作。世界中で日本のお笑いである"漫才"、そして今どきの日本のカルチャーがどのように受け取られるのかに注目が集まっています。
そこで、60ヵ国75名の日本在住の外国人の方々を招いた上映会を開催し、本作の字幕担当者であるチャド、今どきの日本の若者を代表するタレントとして鈴木さんを招いて、より日本文化を知ってもらうためのイベントを開催したというわけです。
1話上映後に行われたトークイベントのMCを担当するのは、タケト。「『火花』どうでした?」との呼びかけに、客席からは「面白かったー!」との声が。チュニジア出身の男性は「なんて言うのかな? 人間って波があるんですよねぇ」と、フィリピン出身の女性は「先輩と後輩の関係性に愛情を感じた。すごかった!」と熱く語ります。
そんな中、チャドは「よしもとの戸田奈津子です!」と挨拶。「みんな、世界190ヵ国で同時ストリーミング開始っていうことは、英語じゃない字幕でも観られる訳やから。60ヵ国語くらい出てるやんな」と呼びかけると、タケトも「みなさん、故郷の方に『火花』を伝えてください」と呼びかけます。
今日のみなさんと一緒に1話を鑑賞した鈴木さんは「原作は読んでいないんですけど、感動しました。漫才の世界って凄く大変なんだなと思ったし、(登場人物の姿を観て)私、頑張ってないなって。もっと仕事がんばろうと思ったし、すごく心に響きました」と拳を握りました。
ここから『火花』で描かれているシーンを観ながら、日本の若者文化をレクチャーすることに。まず、主人公・徳永(林さん)と相方・山下(好井まさお/井下好井)の第1話冒頭の漫才シーンを鑑賞します。
「15歳で初めて日本にやって来て、日本語は漫才の番組で憶えたんですけど、日本にこんな(漫才という)世界があるとは知らなくて。"こんな世界があるんや!"と感銘を受けて、NSCに入りました」と、芸人を目指した経緯を語るチャド。客席の方々でも3~4人しか知らないほどで、漫才というお笑い文化は知られていない存在のようです。
「日本はお笑い文化がすごい」と切り出したチャドは、「オーストラリアではコンビで活躍する人がおったとしても、どちらもボケ。ツッコミがおらへんから、ふわっとして終わることが多い。けど、(日本は)ツッコミがいるから、どこまでも(ボケの発想が)飛んでいける。そこにロマンを感じたし、こっちのほうが断然面白いなと思ったんです」とコメント。その言葉に、タケトが「じゃあ、全部のボケにツッコんでいく日本人って真面目だなとか思いませんでした?」と質問をぶつけると、客席から「思います!」との声が多数。「欧米のお笑いは、お客さんが心の中でツッコんでいく。けど、(日本の笑いは)ツッコミがいることで(笑い自体に)リズムが出るし、変なところまでボケを広げていける。だから、漫才ってすごい」と力説するチャドは「そう思いませんか?」と客席へ呼びかけ。チャドの熱量に押されてか、「思います!」という力強い言葉が返って来ます。
タケトから「翻訳は大変だったんじゃないですか?」と訊かれたチャドは、「英語はツッコミにあんまり向いてない。活字だと、雰囲気も出ぇへんし、声のトーンが出しにくいし、尺も決まってるから困りました」と返答。客席からの「翻訳、面白かったー!」との声と賞賛に拍手に笑顔を見せながら、たとえば"おっさん"という独特の表現は「吹き替えだったらしたいっていう訳し方もあったけど、old fart(年を取ったオナラ)にした」と説明しました。
バラエティー番組で、多くの芸人と共演している鈴木さん。「私たち女性タレントは、芸人さんにいつも助けられている。もしツッコミの方がいなかったら、私たちは成立しないんだなって感じます。だから、叩かれるのも嬉しい」と感謝を。チャドの「(叩くという)ツッコミに愛情があるから嬉しいんですよね?」との言葉に、「そう! いっぱい色々とツッコんでほしい」と同調しつつ、「初めてテレビに出たのは『踊る!さんま御殿』。あの時、さんまさんがめっちゃツッコんでくれたから、今の私がいるんだなと思います」としみじみしました。
若手芸人による営業のシーンも、外国の方にとっては珍しいものだとか。タケトに「芸人になってから、変な営業あった?」と訊かれたチャドは「めっちゃあります」と即答して、「山道を、40キロくらいある荷物を背負って小石を置きながら頂上を目指して、てっぺんでネタをするっていうのがあったんですけど、みんなヘロヘロでした」と振り返ります。
「5年前、スキー場でネタをやるっていう営業があったけど、斜面の途中にステージがあるから、みんな(スキーを)滑っていて誰も見てない」(タケト)「そんなんばっかり。それこそ、ピースと一緒に、昭島で......」(チャド)「想像つかないと思いますけどね。おもちゃの電車が通っていて、トンネルを抜けたところに芸人がいて、ネタをやるっていう営業があったんです。僕が出演したときは、カップル、カップル、家族、犬が乗ってた」(タケト)と、ちょっぴり不思議な営業エピソードを語ると、客席からは笑いが起こります。
先輩が後輩に必ずおごるという文化も、最初はビックリしたというチャド。「オーストラリア人は上下関係が嫌いで、人のお世話をするのもお世話になるのも嫌い。だから割り勘か、"今回は俺が払うから次はお前な"ってなる」と説明しつつ、「実際に(後輩へおごることを)やってみると、この上下関係の良さはわかってくる」とコメント。そんな文化がある国はほとんどないそうですが、「後輩へ厳しく言うためには自分自身を高めないといけなくなるし、(おごると)後輩がかわいくなってくる」と自らのこれまでの体験を語りながら、「最後の10話目、ずっと泣きながら翻訳してました。だから、最後まで観て欲しい」と呼びかけます。
最後は、チャドがお酒を飲み歩く日本の文化について説明。「シドニーは法律で禁止されているので、夜12時以降はお店がやってない。なぜなら、暴れるから。日本は治安がいいからできることだし、(暮らすまでは)リーズナブルでいいものを食べられるような国だとは思ってなかった。『火花』を通して、普通の日本の人達が生きている感じが伝わるのがいいですよね」と発言。
「夢を観て、何かを目指したことがある者であれば、誰もが泣けるし、明日からがんばろうって思える作品。世界中の人達に伝えてください」と語りかけました。
【チャド・マレーン】【タケト】
NETFLIXオリジナルドラマ『火花』
原作:又吉直樹著『火花』(文藝春秋 刊)
総監督:廣木隆一
監督:白石和彌、沖田修一、久万真路、毛利安孝
出演:林遣都、波岡一喜、門脇麦、好井まさお(井下好井)、村田秀亮(とろサーモン)ほか
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