冒険と挑戦に満ち満ちた数々のカオスなコントで圧倒!『マンボウやしろの告別ショー2016「サイコロ出鱈目」』レポート
7月17日(日)、東京・ルミネtheよしもとにて『マンボウやしろの告別ショー2016「サイコロ出鱈目」』が開催されました。
ピン芸人となり、"マンボウやしろ"と名乗り始めた2012年以降、毎年恒例となっている『マンボウやしろの告別ショー』。今年は同劇場にて2日間行なわれ、16日(土)にはガールズユニット「生ハムと焼うどん」が出演しました。今回は、17日の様子をレポートします。
颯爽と登場したマンボウやしろは、「今日、ぶっちゃけRYO-Zさん観に来たよーという方!(客席を見渡して)あんまり出ないかもしれません)と宣言。「サイコロを振ったあとで、扉の後ろで待機している人達が出て来るんですけど、昨日観に来た俳優の山崎(樹範)さんが『やらせだろ?』と。そんなことはないです! 当たらなかったら一切やらないっていう、えげつないライブですし、それでいいと(承諾いただいて)出ていただいていますので、その辺をお楽しみに! あと、練習(稽古)したのに、選ばれなかった人達はやらないんだなという目でも観ていただきたいです」と丁寧にレクチャーします。
漫談後、コンビ「カリカ」時代からの名前を振り返りながら、「僕とは一体、誰なんだろうか」と自問自答するマンボウやしろ。さらに、芸人の仕事や私生活を振り返りながら「弥勒菩薩になりたい」と悟りを開き、タイトルにもなっている"出鱈目"の根源を説明。「神様が導いた流れのほうが正しい」と言われたマンボウやしろに、「心を澄ますのです!」「見えてくるだろう、6人の神が!」という言葉がかけられると、後方の6つの扉から、ギンナナ・金成、犬の心・押見、ロバート・秋山、ピース・又吉、しずる・池田、そして本日のゲストであるRIP SLYME・RYO-Zさんが登場。それぞれを紹介し、マンボウやしろはサイコロを振り始めました。
1回目の出目「1」の扉から出て来たのは、しずる・池田。マンボウやしろと2人で学者に扮して、体の細胞から宇宙を想起する壮大なコントを繰り広げます。
2回目の出目「2」の扉から出て来たのは、ロバート・秋山。サンパチマイクの前で即席サイコロ漫才コンビ「アダムとイブ」としてマンボウやしろとともに漫才を繰り広げるのですが、自分自身を出すのが照れくさいのか、急に物語上の人物になりきってしまう秋山。芸人人生で今回が2度目の漫才だそうで、「『M-1グランプリ』に出たことがあるんですけど、あまりにもウケなくてダメだなと。これがイヤなんです、サンパチが!」と言いながら、「もっとわかりやすいものをくれ! 照明をくれ! 衣装をくれ!」と悶えます。
このコントだけは当たらないようにと「久々にしっかり神様にお願いした」そうですが、願いも空しく......。その後もマイクを怖がるキャラを演じながら、なんとか漫才を終えました。
続いて、3回目の出目「6」の扉から出て来たのは、ピース・又吉。子供を対象としたイベントを舞台に、リズムネタを披露するシャークお兄さん(又吉)と準レギュラーのマンボウくん(マンボウやしろ)。そのやりとりから生まれた些細な歪みにより、最後はラップバトルを展開します。
マジック披露後に振った4回目の出目「5」の扉から出て来たのは、女装姿のギンナナ・金成。ラーメン屋を経営している父子家庭を舞台としたコントでは、アイドルになりたいと言い出す娘と反対する父とのやりとりを。弟役のツクロークンに「私、この喜一には気持ちが入らない!」と言い出す金成に対して、マンボウやしろが「昨日はリアルな小学生だったからな」と呟くと笑いが起こります。
最後は、出演者全員でダンス。その中には、目が出なかった押見とRYO-Zさんの姿も。
RYO-Zさんは「難しい学者のコントさえ出なければ......と思っていて、出なかったときはよかったと思ったけど、段々焦りに変わっていった」と本音を吐露しながら、「人前で女装は42年間で初めて。こんなにスースーするもんかなと思った」と初スカートの感想を語ります。
「こちとら2日とも出てない!」と嘆く押見。「僕はただのダンサーですよ。せっかく練習したのに......とは思いますけど、俺はいい。ゲストの方が出られなかったのがね」と、RYO-Zさんを気遣いました。
"運"に任せて相方を決めた前半のコントに対して、後半は決まった相手とのかなりむちゃくちゃなコントが披露されます。
「職務質問」では金成とともにその名の通り警官と通りかかりの男とのやりとりを、押見とは祈願をモチーフとした「金具汚物棍棒」を。コント「ウェニングプランナー」では、敏腕プランナー扮した秋山と某ドキュメンタリー番組に感化されて弟子入りを志願する女(マンボウやしろ)との暑苦しい掛け合いが。ウェディングプランナーという仕事に取り憑かれた女、自分を変えたいと渇望する女......ある意味、ストイックな2人の女が存在する空間は不条理に満ちています。
コント「本当の僕は」では、縛り付けた又吉に不満をぶつけるマンボウやしろ。
「後輩の仕事を応援できないんですか?」という又吉の率直な疑問に、すぐさま「できない!」と潔く返すマンボウやしろ。この後、スポーツ番組への生出演を控えている又吉を現場へ行かすまいとします。「本当に生放送へ遅れてしまいます」と告げる又吉は、「台詞のように言ってるけど、今日のほうがヤバいぞ!」と言われて思わず「いちばん怖いのは綾部なんだよ!」と吐露。最後は開き直って、「僕が番組に間に合わない場合、怒られるのはあなたなんですよ!」と切り込んで、なんとかこの場を切り抜けます。
池田とのコント「チャンネルを上げて」では、先ほどの「ウェディングプランナー」に登場したマンボウやしろ扮する女が登場。唯一1対1のコントではなかったことへの不満を口する池田は「芸人辞めるんですか?」と直撃。「そもそも、芸人なんかやってない」と答えたマンボウやしろは、かつてしずるを初めて認識したときのエピソードを語り始めます。
「東京シュール5(註:カリカ、犬の心、POISON GIRL BAND、しずる、ライス、かたつむりによるユニット。カリカ解散後はマンボウやしろとして参加)はどうなるんですか?」との問いかけには「もう終わりだよ」と返答。池田は「東京シュール5もらっていいですか?」と投げかけるのでした。
コント「戻れない2人」は、ゲストのRYO-Zさんと中身が入れ替わってしまっているマンボウやしろ。無茶を試みる彼を必死で止めるRYO-Zさん......それぞれを演じ切る2人です。
この時点で終演時間はとっくに過ぎていたのですが、元に戻ったマンボウやしろが「ずっとこのままやってもいいかなと。自由に帰ってもらってもいいと思ってます」と発すると、客席からは拍手が。
「なんか1本やります?」との提案にいっそう大きな拍手が起こると、「昨日、観に来たけど、昨日の時点で長かった!」と笑うRYO-Zさんは「これからさらに? よろしいんですか?」と客席へ。ウェルカムムードが漂うなか、又吉がやったシャークお兄さんのコントをセレクトし、2人で披露します。
コント中のフリースタイルラップバトルでは、本職のRYO-Zさんに「マイク握れなくしてやるぜ!」と息巻いていたマンボウやしろですが、途中で「恥ずかしいぜ! どうして俺は本職と勝負してるんだい?」と自意識に目覚めた様子。「全然、言葉が出ねぇ! 俺は歳なのか!?」と負けを認めたのでした。
最後は解放宣言。「残念なお知らせです! 22時半です!」と告げると、どよめく客席。「この場の台本を書いていない」と言いながら、解放を呼びかけます。
エンディングでは「長くなって申し訳ございません。一言、言い訳を許されるのあれば楽しかったです」と最後まで観てくださったお客さまへ感謝しました。
翌日18日(月)、自身のメールマガジン『死ぬまで生きます』とレギュラー出演中の『Skyrocket Company 』(TOKYO FM)にて、自身の芸人引退を発表したマンボウやしろ。『ブラマヨとゆかいな仲間たち アツアツっ!』(テレビ朝日系)への出演をきっかけに、2012年、東京・シアターモリエールにて開催したイベントにて「2016年、サイコロを振って1が出なかったら芸人を辞める」と宣言していたのですが、誕生日である7月19日(火)の前日、39歳最後の日にサイコロを振らずして脚本家になるという決意を固めました。
今後は本名である家城啓之という名で、脚本家というネクストステージへ旅立ちます。
現在出演しているレギュラー番組には"マンボウやしろ"として変わらず出演し続けますが、カリカ時代、そしてピン芸人になってからも"お笑い芸人"という枠にとらわれることなく、新しい表現の可能性を模索しながら、次々と世に出してきた家城ならば、今後も脚本家として面白くて刺激的なお話を作り続けてくれるに違いありません!
来年2017年4月には、脚本家として『魔王コント』を開催予定。こちらはカリカ時代に行なわれた公演ですが、家城曰く「最強にクレイジーに進化した」ものになるとのこと。さらなる飛躍が期待される"脚本家・家城啓之"を、今後もチェックしてください!
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