今宵限りの落語スタイルで開催 「シェイクスピアも笑い出す 夏の夜の桂文枝落語会」
没後400年のシェイクスピアーイヤーにちなみ、兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホールで開催中のオペラ喜劇『夏の夜の夢』。この舞台装置をすっかりそのまま使用した企画で、「シェイクスピアも笑い出す 夏の夜の桂文枝落語会」が7月27日(水)に開催されました。オペラと落語の世界観が融合した、一夜限りのスペシャルなイベントです。
開演時間となり場内の灯りが落ちると、どん帳にシェイクスピアの顔がバーンと映し出されお客さんはビックリ。彼に「ナニワのシェイクスピア」として紹介され、幕の間からするりと現れたのは、タキシード姿の桂文枝です。
「いつもは噺家が下手や上手から出てきますが、今日はいろんなところから出てきますよ。合間に立ち上がってウロウロしたり。今日のは、体力をつけて健康でないとできない」と、見当のつかない落語会を予感させ、集まった人々のワクワク感を盛り上げます。
幕が上がり、登場したのは"サンディー"こと桂三度。なんと宙を舞いアクロバティックに高座へ向かいます! が、「話が違〜う」と叫び、客先から笑いを引き出し通り過ぎて行ってしまいました。「舞い降りるのに失敗」したため、ステージを歩き再び高座へ。
「雰囲気には慣れましたか?」と、客席に問い掛ける三度自身に戸惑いの色が隠せません。奥深い森を背景に、岩を形どったような高座なのです。「ファンタジーな空気なので色のお話を」とはじめたのが「虹」。七色を擬人化し、大阪らしいオチがつく創作落語でした。
そして舞台がクルリと転換、「『ザ・ベストテン』のような登場の仕方ですけども」と現れたのは、春風亭小朝です。
「文枝師匠からセットを活かして欲しいとご依頼をいただいたんですが、後ろベッドですよ。大きなベッドが出ている落語はないんですが、間男の噺ならないこともない」と一笑い呼ぶと、舞台背景にある「月、森」に加え「7月」にちなんで「池田屋」を口演。幕末の新撰組による襲撃事件をまるで見てきたかのようなリアルさで語ります。合間に自分の経験談や「今ならこうではいかない」と例え話も織り交ぜ、シリアスとコミカルのバランスを絶妙に効かせた構成で会場を大いに沸かせました。
中入り後、三度と同じセットを目にしたからか、少し客席がザワつく中で高座に上がったのは、柳亭小痴楽。
前日に桂歌丸師匠の「芸歴65周年記念落語会」に参加した小痴楽は、歌丸師匠がせり上がりで登場したのを引き合いに出しながら「大御所ってのは、普通にやらないんですね」と、感嘆した様子で披露したのは「湯屋番」。道楽者の若旦那が銭湯の番台さんに留守を頼まれた間、女客に惚れられた設定で妄想を炸裂させるというもの。科を作りくねくねと若旦那に迫る女性、妄想に耽りすぎて両手で顔を覆い大興奮する若旦那。コミカルに熱演する小痴楽の姿に、お客さんは肩を揺らし愉快そうに聞き入っていました。
いよいよ大トリ、桂文枝の出番です。改めてステージ上を見回して、「(小朝師匠に先にどのセットにするか選んでもらってから、)残ったのが、これ。この森にはレアなポケモンがいそうですね。後でちょっと調べてみましょか」と、社会現象ネタをさらりと盛り込んで爆笑を巻き起こします。「この頃、夜になったらiPhone持ちながらウロウロしてる人多いですね。夜の公園なんか近づかなかったのに。あれ、怖いんです。液晶画面が反射されて、顔が青白くなってね」と恐怖エピソードを語り、「栴檀の森の怪」に入ります。青紫色の照明に切り変わり、辺りはおどろおどろしい雰囲気に。
村を代表して牛の購入を任された若者が使い込みをしてしまい、親っさんに泣きつきお金の工面を頼みます。親っさんは、昼でも暗い"栴檀の森"を抜け隣村の金貸を訪ねる展開に。ぐっとライトダウンした舞台の上を、文枝は提灯をぶら下げてそろりそろり。オペラの空間に落語の世界観が溶け込んでいきます。より情景が目に浮かぶ、今宵限りの落語スタイルです。
文枝からの「シェイクスピアさんも喜んでいただけましたでしょうか?」の問い掛けに、客席はシェイクスピアに代わって大拍手で応えていました。ジャンルを超えて結びついたこの落語会に、きっと、シェイクスピアも大拍手をしているに違いありません。落語の可能性が、またひとつ広がった夜でした。
今後も、ひと味違った落語会が予定されています。ぜひチェックしてみてください。
《第二回 寿々喜会》
日時:7月30日(土) 開場18:00 開演18:30
会場:天満天神繁昌亭
料金:前売¥3500 当日¥4000
出演者:桂歌之助、林家小染、桂花団治、桂塩鯛、桂梅団治、桂文枝
※チケット発売中
チケットよしもと:0570-550-100【Yコード 503711】(PC・携帯共通)
チケットぴあ:0570-02-9999【Pコード 597-700】
チケットよしもと予約問合せダイアル
TEL:0570−550−100(受付は24時間、お問合せは10時~19時)
《桂文枝「字幕」落語会 》
日時:8月21日(日) 開場11:30 開演11:30
出演者:桂文枝 他
会場:新世界朝日劇場
料金:前売¥3500 当日¥4000
チケットよしもと:0570-550-100【Yコード:999140】(PC・携帯共通)
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