霊感が強すぎて、色んな霊が見えすぎて困るという「霊感芸人」がいる。ファンレターの多くが、ファンのふりをした心霊相談だという好井まさお。そして吉本芸人のなかで抜群の霊能力を持つと言われるシークエンスはやともだ。
日々恐怖体験をしている彼らだが、実は「幽霊よりも怖い人間」がいたという。例えば好井が7年前に出会ったのは「ピョンピョン挨拶男」。
黄色いパーカーを着た、見たこともない若い男が、「おはようございます!」と元気に挨拶してきたという。異常にキョロキョロし、落ち着きがなくピョンピョンと飛び跳ねている。
場所は友達の芸人が住む、大正時代に建てられたような古めかしいアパート。玄関には入居者の名前が書かれた木札がずらりと並び、不気味な雰囲気だ。
近くに吉本の養成所があったため、新人芸人だと思った好井は芸人の習性として反射的に「ああ、おはよう」と返した。
翌朝、なにげなくテレビのニュース番組を見て凍りつく好井。そこにはそのアパートがある商店街が映っており、テロップには「白昼堂々通り魔出現」の文字。
「黄色いパーカー着た男がガンガン人刺してた」と証言する街の人たち。「挨拶を返さなかったから刺したと意味不明な事を言っている」とアナウンサーが伝える。
そう、その通り魔こそ「黄色いパーカーの男」であり、あの場で「おはよう」と挨拶を返していなかったら好井も確実に刺されていたのだ。
芸人の習慣で、知らない人でも「挨拶をされたらキチンと挨拶を返す」という行動をとった好井。
「芸人でよかった」と心底思えた事件だったそうである。
▲当時を思い出しながら語る好井まさお。お笑いコンビ「井下好井」の霊感があるほうで、怪談芸人としても有名。ドラマ版「火花」で主人公の相方も演じている。
さて、このような「人間が怖い話」を好井の他に、ジミー大西、霊感抜群のシークエンスはやとも、元NMB48の高野祐衣に聞いてみた。
この4人には共通点がある。
年間約100人の自殺者が発見される『富士の樹海』の恐るべき謎に迫った衝撃の映画、『fuji_jukai.mov(フジジュカイ ドット エムオーブイ)』の試写会に参加したメンバーなのだ。
本日9月30日(金)にTOHOシネマズ新宿で公開されるこの映画を、わざわざ深夜の樹海で行われた試写会で見た4人は悲鳴をあげたという。
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→ 映画『fuji_jukai.mov(フジジュカイ ドット エムオーブイ)』公式サイト(リンクします)
映画の主人公は3人の女子高生。
自殺願望がある1人と、その自殺をみてみたいという2人だ。3人がスマートフォンで撮った記録映像に加え、実際に樹海に関わる人々の証言を交えて映像化した、ドキュメントホラーともいえる衝撃的な作品だ。
映画に出演した一人、小野俊之氏は書籍「完全樹海マニュアル」の著者で樹海に精通している。
小野は「樹海で見つかる死体は、おそらく自殺によるものだけではない」と語る。『富士の樹海』には大きな謎が隠されているのだ。
映画『fuji_jukai.mov(フジジュカイ ドット エムオーブイ)』も単なるホラーではなく、富士の樹海の恐るべき謎と、そこで暴かれる「人間の怖さ」が描かれている。
今回の4人にはこの映画を見てもらった上で、「怖かった人間体験」を聞いた。
■ 元NMB48高野祐衣の場合
好井に続き、今度は元NMB48のアイドル、現在は東京でソロ活動中の高野祐衣による告白だ。
その恐怖はLINEでやってきた。
ある日、高野は友人とみんなで遊んでいた。呼び忘れて、そこにいなかったA子という女性の話だ。普段から何を考えているのかよくわからない人だったというA子。
A子が高野の事を嫌っているという噂は、以前から耳に入ってきた。A子の親友B子が、最近高野と仲が良いことが気に食わないらしい。影からじっと高野を見つめるA子の視線が怖かったという。
そしてB子と一緒にみんなで遊びにでかけた日のことだ。
そこにはいないA子からLINEが届いた。
そこには「みんな死ねばいいのにw」と書かれていた。
思わず「えっ?えっ?」と混乱していると、電話が高野にかかってきた。
A子である。
怖くて電話に出られない。
しかし無視していても怖い。少し心を落ち着かせ、渋々電話をかけ直す。
すると意外なことにA子は
「今のはなんでもないから気にしないで」と言う。
少しホッとする高野。しかし...
不気味な雰囲気を感じ、その後A子と話すことはなかったという。
「人間って怖いな......」と高野は心底思ったそうだ。
ネットが発達してコミュニケーションは便利になったが、その反面、悪意も瞬時に届くようになった。そんなネットの恐怖は、先ほど紹介した映画『fuji_jukai.mov』でも描かれている。
人が死ぬ瞬間が見たいという2人の女子高生・ヒナタとみーたんは、自殺志願者のアミをスマホで撮影し、ネットで生中継を行うという残酷さを見せる。
昔のイジメと違い、ネットによってその残酷さは力を増している。自殺する人間よりも、自殺させる人間の方が恐ろしいのかもしれない。映画では、さらに恐ろしい人間の闇が描かれている。
■ 「シークエンスはやとも」の場合
吉本芸人のなかで、霊能力に関しては絶大な信頼を置かれている男である。冒頭に登場した好井まさおにも、「自分が霊を見た場合、はやともに聞いて答え合わせをします」と言わしめるほどの、パーフェクト霊感を持っているという。
そんなシークエンスはやともが「人間って怖いな」と思ったエピソード。
それは大学時代の話だ。
大学4年生の時、知らない女の子と同棲生活をする夢を見る。奇妙なことに毎日同じ夢を見るようになってしまう。
最初は「ただいま」「おかえり」くらいだったのが、2日目になると「仕事どうだった?」「こうだったよー」と会話が伸びていった。4日目になると帰宅からお風呂に入るところまでといった風に、その子と過ごす夢の時間が徐々に長くなっていく。
ただ、その夢の中ではまるで操り人形のように、誰かに芝居をやらされているような感じで自由に動けずストレスがたまる。さらに実体験のようなリアルさがあり、起きたときには実際にその夢の時間を過ごしたかのような疲労があったという。女の子から変な要求をされる事も多かったようだ。
そのような夢が1ヶ月ほど続いたせいで昼、夜ぶっ続けで起きて活動しているような状態となりノイローゼのようになっていくはやとも。
そんな時、大学の友人女性から「前からはやともと友達になりたいって子がいるんだけど、紹介していいかな?」と言われる。気持ちを切り替えるのに丁度いいと、もちろん喜んでOKした。
女の子を紹介してもらい、
「あ、初めまして、僕はやともと言います」と挨拶すると、
その子はクスクスと笑い始め、
「初めてじゃないですよね?」と言って首のアザを示し、虚ろな目をしていたという。
その様子に恐怖を感じたはやともは、バイトを理由に急いでその場から逃げ出したが、その夜も変わらず続く同棲の夢。
あまりに参って、紹介した友達に「実はこういうことがあって......」と相談すると、なんとその子の前カレからも、夢に出てくるという相談を受けていたと言う。その時は冗談だと思って相手にしなかったら、段々悪化して不登校になり、最終的には自宅で自殺未遂をおこすまでになってしまったそうだ。
「生きてる人間ってここまでできるんだ」と恐怖を感じたはやとも。
夢と現実、両方から責められたらたまったものではない。
ちなみに映画『fuji_jukai.mov』でも、首にアザをもつ女性が登場する。
自殺に失敗した人たちが身を寄せて暮らす「生まれ変わりの村」の住人だ。樹海で迷った3人の女子高生はこの村の住人に助けられるが、村の秘密を知り恐怖する。
▲「生まれ変わりの村」の住人
■「ジミー大西」の場合
最後はジミー大西の登場だ。元祖天然ボケとしても有名だが、天才的な絵の才能を岡本太郎に見抜かれ、画家としても人気になった。現在は画業をこなしながらタレント活動にも力を入れる。
ジミー大西が「人間って恐ろしいな」と感じた体験。
それは自分自身が自殺を考えた時のことだ。
今から30年前、1000万を超える借金を背負ったジミー。もっとも借金といっても他人に騙されて背負ったようなものでなく、自分自身の遊びやギャンブルでつくったもので自業自得だ。
ただそれだけに誰も責められず逃げ場がない。
増えていく借金に将来の見通しがたたず、ホテルの部屋の「浴衣の帯」が「首をくくれー!くくれー!」と叫んでいるように見えてきたという。幻聴だとわかっていても、徐々にその声に逆らう気力もなくなっていくジミー。
とうとうドアノブに帯をかけ、首を吊ったジミー。
するとドアノブがボキっと折れて首吊りは失敗、自殺よりもドアノブを壊したことで、ホテルの人にめちゃめちゃ怒られたという。
ジミー大西が怖いのは人間である自分だ。
「人間は追い詰められると何をするかわからない、自ら命を断つという選択肢も簡単に選んでしまう」と語る。
幸いにも吉本興業の関連会社がお金を貸してくれて、そのあとは自殺を考えることは無かったという。
「自殺しようとする人間は、誰かが手を差し伸べないとどうしようもない。しっかりと利息は取られましたけどね」と神妙な顔で語る。自らが「自殺」を経験したジミーの心からの本音だという。
映画『fuji_jukai.mov』でも数多くの自殺者が登場するが、もし誰かが手を差し伸べていれば、その数も減ったのもかもしれない。そしてジミー大西の話のように、この映画のラストには予想しなかった展開が待っている。
▲映画の中で女子高生たちが見つけた自殺者。
さて、4人の「人間が怖い話」はいかがだっただろうか。
意外にも「芸能界」の話でなく、実際の友人知人だったり、通りすがりの人だったり、自分自身の話だったりと、「本当に怖い人間は隣にいる」ということを浮き彫りにする結果となった。
そう、今回参考にした映画『fuji_jukai.mov』のように。
▲スマホで撮影された生々しい映像が、日常と隣り合わせる恐怖を描く。
富士の樹海で偶然発見された1台のスマートフォン。そこに残されていた3人の女子高生の奇妙な動画から始まるこの映画は、日常の延長上にある。「富士の樹海」で発見される年間100人の自殺者は、いつあなたと関係してもおかしくないのだ。
『fuji_jukai.mov』樹海試写会ツアーの参加者の感想も次の通りだ。
「怖いと思っていたけど、悲しい。重い......」
「急に襲い掛かってくるお化けとかが怖いんじゃなくて、因果応報になるような世の中が怖い」
「最後が衝撃的すぎた」
などなど、ホラーにありがちな「心霊現象が怖い!」でなく、ホラーではあるが「人間」の恐ろしさを存分に描き出している作品であることが伝わってくる。
「本当に怖いのは人間」
そんな思いを心底味わえる映画『fuji_jukai.mov』は、本日9月30日(金)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国で公開される。ぜひ見てラストに驚いてほしい。
(記事執筆:大住有 イラスト:みちたか 企画・編集:劇団Webライター)