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2016年10月27日 (木)

映画『追憶』プレミア試写会にて、美輪明宏さん「平和は当たり前なことではない」と自らの戦争体験を語る

10月27日(木)、東京都写真美術館ホールにて映画『追憶』のプレミア試写会が開催され、美輪明宏さん、奥山和由プロデューサー、小栗謙一監督、升本喜年さんが登壇しました。
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升本さんの著書『「愛の手紙」〜ペリリュー島玉砕〜中川州男の生涯』(熊本日日新聞社刊)が原案となっている本作。米国防省、米海兵隊歴史部、米国立公文書館に保存されていた膨大な映像と、日本の自衛隊第8師団、NHKに残る貴重な資料によって、第二次大戦時にペリリュー島の真実が描き出されています。
日米双方からの膨大な資料映像が観られる作品はこれまで前例がなく、歴史的にも大変意味のある作品に。美輪さんの語りにも注目です。

奥山プロデューサーはまず「お忙しい中、映画をご覧いただいてありがとうございます。10年に1回くらい、衝動的に映画をつくろうと。つくりたいというより、つくらないといけないという思いに駆られて、今回もつくらせていただきました」と挨拶します。
製作のきっかけとなったのは、昨年4月、天皇・皇后両陛下がパラオ共和国ペリリュー島で戦没者を追悼されたこと。「青い海をバックに、拝礼なさっている白い後ろ姿に心を打たれました。そう言えば、『愛の手紙~』というペリリュー島の出来事を扱った本を読んだばかりだった。よし、映画をつくろうと思いました」と説明します。
すぐさま小栗監督へ連絡したそうですが、「映画を成立させるためには、どうしても美輪さんに語りを声をやっていただきたいと。ダイレクトに心へ届く声がなければ、映画にはできないと言われ、美輪さんにお願いしたところ、幸せなことにご了解いただくことができました」と続けました。
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美輪さんは「軍人の中には素晴らしい人もいましたが、どうしようもないサディストもたくさんいました」と自らの戦争体験を語りながら、「身を以て見聞きしたこと、自分の思いが声となってうまく作品に溶け込めるなら、お役に立つならということでお引き受けしました」と発言。「声を入れてもらうときに、美輪さんが(画を観ながら)かわいそうだねってしみじみ呟いていたのが印象的だった」という奥山プロデューサーに、美輪さんは戦時中の非道徳で暴力的且つ理不尽な出来事を滔々と語りながら「戦争をするということは、日本ではなくなるということだった」と言い切ります。
資料がほとんど残っていなかった日本側に比べて、アメリカ側は日時、場所、撮影者まで記入したフィルムがたくさん残っていたそう。「アメリカにはそれくらいの余裕さえあった。日本が負けることは火を見るより明らかだった」と、最初から戦力も財力も適わないとわかっていた戦いだったことを語る奥山プロデューサーに、美輪さんは「だって、アメリカは爆弾、バズーカーを持っているのに、日本は長刀と竹槍の訓練をしていたんですよ? 無茶苦茶ですよね。日本人が日本人を殺したのだと思ったとき、"かわいそうだね"という言葉が出ました」と切なる思いを。さらに右傾化している世界を危惧しながら、「お役人が根性論だけで、なんの知力もないような第二次世界大戦の頃に戻ってはいけない」と訴えかけました。
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収録の際、最新のスタジオで最新の技術を揃えて臨んだそうですが、戦闘シーンになると機器が激しい音を立ててストップしてしまったそう。「何度やってもそこで止まってしまって、どんなに調べても原因がわからなかった」と話す小栗監督に、美輪さんは「三島由紀夫さんがなくなったり、二・二六事件があったり、いろんな体験がございますから驚きもしません」と笑いながら語ります。
実際、不思議な体験をよくするそうで、最新機器を揃えた歯科では「わたくしが行きますと、機械が全部動かなくなるんです。テープレコーダーもわたくしの前に置くと止まったりして、あぁ、またかと思っていました」と微笑みました。
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本作を「今の方々へどう伝えていくのかがテーマだ」と語った奥山プロデューサー。美輪さんは「若い方は二極化しています。狂気に追い込まれる若い人もいる一方で、言葉遣いも丁寧で親孝行で、友達とも和気あいあいとできて他者へ尊敬の心を持っている正統派もいる。そういう方々を観ていると、日本もまだまだ捨てたもんじゃないと思えます。わたくしとしては、ペリリュー島で亡くなった方々、これからも見守って指導してください、と思っています」と話します。
小栗監督は「戦争映画はお年寄りが出て来るんですけれど、この映画を観ていただければわかるようにお年寄り=戦争ではなく、戦争は20代の人達が関わっていくもの。自分達の世代に関わることだと思って観ていただきたい」と呼びかけます。
升本さんが「映画を観ていただいた皆さんの熱い視線、熱い声に無情の喜びを感じ、光栄に思っております」と笑顔で感謝すると大きな拍手が。その言葉に、再び美輪さんは「今、この平和な状態がどれだけありがたいことか。当たり前ですけど、当たり前ではないことをお伝えいただけたら」と客席へ語りかけます。
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「小栗さん、美輪さんの言葉は映画より説得力がありますね。失敗した。映画の最後に、この言葉を付け加えればよかった」という奥山プロデューサーの言葉に、美輪さんが「それでは駄目。オカルト映画になりますから」と茶目っ気たっぷりに返すと、客席からは笑いが起こりました。
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映画『追憶』

製作:奥山和由
監督:小栗謙一
語り:美輪明宏
ピアノ:小林研一郎
原案:升本喜年(『「愛の手紙」〜ペリリュー島玉砕〜中川州男の生涯』熊本日日新聞社刊)
企画制作プロダクション:チームオクヤマ
制作:KATSU-do
後援:パラオ政府観光局
配給:太秦
製作:吉本興業
© 2015「追憶」製作委員会
公式サイト: www.tsuiokutegami.net

11月5日(土)より、東京都写真美術館ホールほか全国順次ロードショー!