「変態」は褒め言葉! R-18文学賞
(c)新潮社
4月26日(水)、第16回「女による女のためのR-18文学賞」(主催:新潮社、協賛:吉本興業)の贈呈式が東京都内で行われました。
「R-18文学賞」は、応募できるのは女性だけ、選考に関わるのも選考委員の三浦しをんさん、辻村深月さんをはじめ女性ばかりというユニークな文学賞。今年は白尾悠(しらおはるか)さんの「アクロス・ザ・ユニバース」が、大賞・読者賞のダブル受賞となりました。
白尾さんは一昨年も三次選考まで、昨年も最終選考まで残ったばかりでなく、今年は受賞作以外にもう1作応募していて、新潮社の社内選考では2作のどちらを残すかで議論もあった...というほどの筆力の持ち主ですが、小説を書き始めたのはご本人によると「中年期に差し掛かってから」とのこと。
受賞作は、同じ山梨の高校に通いながらも接点がなかった対照的な二人の女子生徒が偶然一緒に東京に行くことになり、そこで起こる事件をきっかけに心を通い合せてゆく...という物語。選考委員による選評では、三浦さんが「笑いと創作物への愛にあふれていて心を打たれた。主人公二人を応援せざるを得ない」、辻村さんが「読んでいて"推したい!"と思った。選考会では本作について、三浦さんと大いに盛り上がった」と絶賛していました。
R-18文学賞にはもう一つ、特別賞として友近による「友近賞」が3年前から設けられています。今回、選ばれたのは伊藤万記(まき)さんの「月と林檎」。女子生徒と美術の先生との、ちょっと危ない関係を描いた作品です。
友近は「普段から、映像化したらどうなるか...ということを考えながら読んでいるが、この作品ははっきり情景が頭に入ってきた。先生と生徒の、緊張感のあるエロチックな関係がよかった」と、感想を語りました。
この作品、大賞は逃したものの、二人の選考委員にとっても気になる作品だったようで、三浦さんは「よくある先生と生徒ものかと思ったら、先生の変態ぶりが予想を上回った。変態なのに素敵な話で、読み心地もスリリング」、辻村さんも「先生に胸をときめかせて読んだ。作者にかすかな嫉妬すら感じる」と、いずれも独特の言い回しでエールを送っていました。
伊藤さんは別名義で昨年「太宰治賞」を受賞するなど既に2度の受賞歴があり、実力は折り紙付き。「変態」という"褒め言葉"を受けての受賞挨拶に「この道に突き進んでいきたい」と力強く決意を語りました。
そんな受賞作は、2作とも選考委員による選評と共に、発売中の「小説新潮」5月号に掲載されています。
是非ご一読ください!