趣向の異なる3つのネタで魅せた『吉例 第三十五回 88 桂文珍独演会』
8月8日(火)、なんばグランド花月で『吉例 第三十五回 88 桂文珍独演会』が行われました。文字通り、今年で35年を迎えた長寿の会、近年では前座を文珍扮する桂珍幻彩(かつらちんげんさい)が務めており、今回も新作落語『ねむれナイト』を披露。マクラでは時事ネタをふんだんに織り交ぜ、早くも爆笑を起こしました。また、「今年で35年を迎えられたのも、皆様のおかげです。50年は続けてやりたいですね」と意気込みも。ネタでも珍幻彩流のブラックジョークでわかせます。早くも会場は興奮の渦に巻き込まれました。
続いて文珍の四番目の弟子である桂文五郎が登場。骨折以来久々の高座となりました。「骨は折りましたが、噺の腰だけは折らんようにがんばります」と気合を入れ、『二人癖』を口演しました。
そして文珍、ゆっくりと舞台に現れて一礼。まずはキャリアが「88独演会」と同じ、弟子の楽珍のエピソードで笑いを誘いました。ネタは『くっしゃみ講釈』。講釈師に一泡吹かせようと奮闘する男の言動や講釈師とのやり取り、クライマックスでくしゃみを連発する場面など面白おかしく、ギャグ満載でお届け。ネタ中、講談を披露する場面ではぐっと引き込み、会場からは自然と拍手が沸き起こりました。
ゲストのケーシー高峰さんはおなじみの白衣姿でご登場、体にまつわる艶ネタを披露されました。次から次へと繰り出されるダジャレに会場は爆笑でした。
中入り後は文珍のトリネタ、『鹿政談』です。袴に着替えて舞台へ。「ケーシー高峰さんの後は何を言えばいいのか...(笑)」と思い出し笑いを抑えきれない様子。「84歳になられても、あんなネタをされるなんて」と最大の賛辞を送りました。噺の舞台は奈良、犬と間違えて鹿を殺してしまったまじめな男の奉行所での一幕を描いた古典落語ですが、セリフには昨今、世の中を沸かしているワードを挟み込むなどして現代と古典の世界とを自在に行き来する文珍。笑わせる一方でまじめな男の実直さ、お奉行様の人間の厚みなどもしっかりと聞かせました。
すべての高座を終えた文珍、「今日は全く毛色の違う噺を3つ、やらせていただきました。35年、たくさんお運びくださり、温かい拍手と笑いをくださってありがとうございました。できる限り、50年を迎えられるように、どうか皆様もお体にお気をつけてお過ごしください」とご挨拶し、2017年の『吉例 第三十五回 88 桂文珍独演会』を無事に終えました。
【桂文珍】