劇団そとばこまちが『のぶなが』で魅せた笑いと涙、ダンスと殺陣による唯一無比のエンターテインメント時代劇!
10月2日(月)より始まった『大阪文化芸術フェス2017』。今年度から大阪文化フェスティバル実行委員会が10月の1カ月間を文化芸術フェス月間とし、大阪府一円で伝統芸能、演劇、レビューショー、音楽イベント、お笑いイベントなどを開催します。
ABCホール(大阪市福島区)では、劇団そとばこまちによる『大阪文化芸術フェス2017版「のぶなが」』が10月7日(土)・8日(日)の2日間にわたって上演。2013年に同じくABCホールで初演して以来、再々演を迎えた今回。「織田信長は本能寺の変で死んでいなかった!?」という大胆な解釈で、信長の妻である濃姫とその家臣たち、そして虎視眈々と天下統一を狙う戦国武将や忍びの者たちが繰り広げる戦乱の世を舞台に、愛情や友情、憎悪や裏切りなど、様々な感情を混ぜ込みながら織田軍の家臣の一人、明美光秀が本能寺の変を起こすまでを描いています。
織田信長を演じたのは、自身も「武将様」のキャラを持つお笑いコンビ、ミサイルマンの岩部彰。その妻、濃姫を南園みちなと福本愛菜(吉本新喜劇)がダブルキャストで演じたほか、明智光秀を田中尚樹が、羽柴秀吉を福山俊朗さん(は・ひ・ふのか/syubiro theater)、雑賀孫市を石原正一さん(石原正一ショー)らが演じるなど、劇団メンバーと関西を代表する役者陣が集結しました。
開演前にはくぼたゆういちさん、石原正一さん、樋口みどりこ(つぼみ)の3名からなる「御用だボーイズ」が『のぶなが』の概要や諸注意などを告げました。そして丹羽長秀を演じる川内信弥さん(劇団レトルト内閣)が水先案内人となり、観客を『のぶなが』ワールドへいざない、華々しい幕開けを果たしました。オープニングを飾るダンスも劇団そとばこまちの見どころの一つ。客席通路も用いて早速、一体感を醸成しました。
実は、天正四年五月の「天王寺砦の戦い」で受けた雑賀孫市の凶弾が原因で命を落とした信長。そのことを敵陣に悟られまいと画策する、濃姫と家臣、そして信長の妹・お犬と乱丸(樋口みどりこ)ら率いる忍術使いたち。そんな場面から物語は始まりました。
運命を受け入れ、「信長」として果敢に立ち向かう濃姫の気高さと健気さを体全体で演じる南園。彼女を見守る明智、羽柴、丹波、柴田という四人の家臣たち。中でも一人だけハイテンションの柴田勝家を演じた行澤孝さん(劇団赤鬼)は体を張って笑いを起こしつつ、空気がぐっと引き締まる場面では重みのある存在感で魅了しました。幼馴染である濃姫に淡い思いを寄せていた明智は、最後には「裏切り」という形で濃姫を守ります。そんな明智を時にかっこよく、時にお茶目に演じる田中。劇中もいじられ役として笑いを誘っていました。忍術使いの乱丸を演じた樋口は、劇団そとばこまちの前回公演『りょうま』でも評判の高かった殺陣を今作でも颯爽と披露。舞台や客席通路を所せましと走り回り、汗だく熱演しました。そして主役である信長役の岩部は、冒頭で命を落としてしまうという設定。以降は濃姫の回想シーンで登場し、途中では洋装に着替えて「南蛮由来」というダンスを踊るシーンもありました。全体的に言葉少ない信長ですが、その分、目の動きやちょっとした仕草で濃姫にかける愛情を表現していました。
劇団そとばこまちの舞台は、作・演出の坂田大地による歴史上の出来事を大胆なアレンジで展開する物語が特徴的で、ダンスや殺陣などのアクロバットな場面も大迫力で繰り広げます。『のぶなが』でも出演者総出によるダンスに、敵意や友情など様々な感情が込めた殺陣を勇壮に繰り広げました。
燃えさかる本能寺もダンスで表現、赤い衣装で激しく踊るダンサーの中心に真っ白な着物でたたずむ岩部の姿はとても凛々しく、動と静、赤と白というコントラストの美しさに目を奪われました。また、ほんのわずかの間に訪れた平穏な日々に喜びを表す町民や、旅一座の女芸人たちによる演舞など、その時代に生きる人々の心情をダンスで生き生きと描写しました。一方殺陣のシーンではそれぞれがむき出しにした敵意で刀を突きつけます。誰もがみな、命に代えてでも守りたい気持ちを背負って相手に向かっていく様を迫真の演技で見せました。
手に汗握る展開が続いたかと思えば、女旅芸人の一座が安土の城下町へやってきた場面では、町民のお夏(和泉)が「特別なお客様が来ているんです」と意味ありげに客人を舞台に呼び込み場面も。登場したのはよしもと漫才劇場を拠点に活動しているお笑いコンビ、見取り図。見取り図の二人はいつもの舞台衣装でなぞかけを取り入れた漫才で沸かせました。続く酒宴の場面でも舞台に溶け込み、酒を酌み交わす二人。「未来から来た」という設定で馴染んでいました。
ダンスと殺陣、そして笑いと涙のエンターテインメント時代劇をノンストップで展開した劇団そとばこまち。芸人とのコラボレーションも巧みに取り入れ、彼らにしか出せない色でABCホールを「のぶなが色」に染めました。
『大阪文化芸術フェス2017』は今後も様々な舞台を上演します。大阪を代表するたくさんの文化芸術を楽しめる、この絶好の機会をお見逃しなく。