映画『デメキン』12月2日(土)公開記念! 原作者・バッドボーイズ佐田正樹×野性爆弾・くっきー対談
バッドボーイズ・佐田正樹の不良時代を描いた自伝的小説・コミック『デメキン』がついに映画化されることに! いじめられっ子だった佐田が福岡・伝説の総長になるという実話をもとにした青春グラフィティである本作の公開を記念して、原作者の佐田正樹と、ラーメン店の客役で出演したくっきーのお2人に映画についてのお話を伺いました。
ーー『デメキン』の映画化が決まったときはどんな気持ちでしたか?
佐田 嬉しいの一言でした。そういえば、漫画化されたときも師匠(=くっきーのこと)と対談しましたね。3巻のときだったかな。
くっきー ゴリゴリの武勇伝語りましたわ。
佐田 (笑)。
ーー完成した映画はご覧になりましたか?
くっきー 僕まだ観てないんですよ。
佐田 いや、おかしいでしょ。出演者なのに、今(DVDを)もらいましたからね。
くっきー ほんまは観たかったんですけどね、なかなか......。
佐田 予告動画しか観てないですもんね、師匠は。
くっきー 予告動画に僕出てるんですよ。
ーー見ました(笑)!
くっきー でも、予告動画に入ってる分が本編に入ってる分と同じぐらいちゃいます?
佐田 もうちょいあるよ(笑)。試写で、あそこめちゃめちゃウケてましたよ。
くっきー あ、マジで? 嬉しい~。
佐田 監督も「くっきーさんのところがあったから、このシーンが締まりますねぇ」って言ってましたよ。
くっきー いや、やりやすい環境を作っていただいて、ホンマに。(佐田に)脚本先生の......。
佐田 脚本先生て(笑)。原作者ですね。
くっきー 原作の先生と、監督とみなさんのおかげです。
ーーお互い、「師匠」「先生」って呼びあうんですね(笑)。
くっきー そうですね。でも、師匠の方が偉いですわ。
ーーそうなんですか(笑)!?
佐田 でも、その師匠が(僕のことを)「先生」って言うてますからね(笑)。
くっきー そうね(笑)。不思議な......。
佐田 (爆笑)。いや、でも師匠のシーンはすごかったですよ。台本には(出演するところは)なかったんですけど、僕はどうしても出てほしかったんです。それで、「出てください!」ってお願いして。監督にも「(くっきーを)出したい」って言って。そしたら、じゃあラーメン屋のシーンに出てもらいましょうかってなって。で、「師匠どうします?」って聞いたら、「オレはアドリブがいい」って言うから、監督にも「アドリブ一発でいいですか?」ってお願いして、もう、ワンカットしか撮ってないです。全部アドリブで。
ーーよく他の方が笑わなかったですね。
佐田 いや、笑ってました。めちゃくちゃ笑ってました。笑ってたから、そこがカットに次ぐカットで短くなっちゃったんですよ。ほんとはもっと長かったんですけど、健太郎と山田くんが「ムリです(笑)!」って笑ってもうてるから。
ーーそうだったんですね(笑)。佐田さんは、映画を観た感想はいかがでしたか?
佐田 僕は監督と編集の時から観ていて「ここいらん」「ここいる」とか、編集にもかかわって、完成の前に全部観ちゃってたんで......。でも、音も入って、完成した状態で改めて観たときは「あ、こうなるんだ~」と思って感動しましたね。
ーー撮影現場にも行かれてたんですよね。
佐田 そうですね。スケジュールが空いてる限りは行ってました。
ーー現場にいると、やっぱり当時のことを思い出したりしましたか?
佐田 ありましたね。連合集会みたいなのがあるんですけど、集会に行くときがちょうど夕方から夜に景色が変わる時間帯で。「幻影」って書いてある特攻服で現場に向かってるみんなのバイクの後ろ姿を見たときに「うわ~っ、こんなんやったな~!」って思ったり。その風景が当時の感じとめちゃくちゃリンクして、懐かしいなぁって。
ーー主演が健太郎さんと聞いたときはどう思われましたか?
佐田 「すごくいい男やな」と思いましたね。
くっきー カッコよかったね。
ーー映画を観ていて、健太郎さんの話し方が佐田さんに似てるなって思ったんですけど......。
佐田 それは僕を研究してくれたみたいですね。僕の動画を見てくれたり、僕が普段しゃべってるところとか、歩き方とかを勉強しましたって言われて「ええっ!?」って。
くっきー 休憩中も博多弁でしゃべってましたよ。(役に)入り込んでたんちゃいます?
佐田 ......しゃべってましたっけ(笑)?
くっきー いや、知らんけど。
佐田 適当に話作るの、やめてもらえます(笑)?
ーー(笑)。くっきーさんの出演シーンは印象的ですが、撮影現場のエピソードはありますか?
くっきー う~ん、みんな演技に長けた役者さんやから、こっちも感情移入すごいできたというか、気がついたら自然と動いてたというか、自然と芝居して自然とボケてるっていう、そういう現場は初めてですよね。今までも台本を入れて自分のもんにして、噛み砕いて噛み砕いて芝居にしてたんですけど、それをすごい自然に......
佐田 誰が言うてんねん(笑)!
くっきー(爆笑)。
佐田 すっげぇ何回も映画に出た人みたいに......。そんなに出てないでしょ?
くっきー 初めてのムービーです。
佐田 何回かは出てませんでしたっけ? でもありがたいことに、「剃り込み入れた方がいい?」って言って、現場で剃り込み入れてくれたりして。
くっきー ヤンキー映画なので、出てくる人全員ヤンキーがいいんじゃないかと思って。オレがいっちゃんケンカ強そうでしたけどね。
佐田 このラーメン屋のシーン、店長は坂田さんという方がやってくださってるんですけど、もともとは(博多)華丸さんにお願いしようと思ってたんですよ。ちょうど華丸さんが博多で舞台をやられている時とスケジュールがかぶってしまってお願いできなかったんですけど、華丸さんがもし店長役をやってくれてたらあそこのシーンどうなってたかなぁ......って思いました。
くっきー ほんまやね。また変わってたかもね。
佐田 華丸さんと師匠のあのシーンでのアドリブの絡みを見てみたかったな、っていうのはちょっとありましたね。
くっきー もう、漫才になったんちゃいます?
佐田 (爆笑)。師匠、あんま漫才やってないじゃないですか。コントばっかやってますやん。
ーーどっちかというとコントになってたような気が......。
くっきー そうですね。
佐田 華丸さん、映画観て「唯一、オレが言わしてもらいたい映画の感想は、『オレがラーメン屋の店長やったら、あげな太い麺ば出さんばい』って。
くっきー (爆笑)。
佐田 「あそこの麺の太さ、坂田さんはこだわらんかったとや?」って。いやいや......(笑)。でも師匠がアドリブで「麺ぶっといのぉ!」ってツッコんでくれてよかったですよね。「博多やろ? これ、麺ぶっといなぁ!」って。
くっきー 博多を代表してちょっとやっちゃいましたね。
佐田 (出身は)滋賀やん! ゴリゴリ滋賀やん!
くっきー 姉妹都市やから......。
佐田 全然姉妹都市ちゃうわ(笑)。
ーー映画には清人さん(役の俳優)も登場しますが、何かおっしゃってましたか?
佐田 清人はもう、早くに家族で観てくれたみたいで、「僕はいっぱい出てましたけど、ギャラは振り込まれるんでしょうか?」っていうLINEがきましたけど、既読スルーしました。
くっきー 返したれよ。「ギャラは振り込まれません」って。
佐田 (笑)。奥さんにもこの間たまたま会ったときに「映画面白かったです~。清ちゃんも「ギャラ振り込まれんのが楽しみや」って言ってました~。いくらぐらいもらえるんですかねぇ?」って言われたから、それも直接無視しました。直無視です(笑)。
ーー清人さん役の方、独特な髪型でしたね。
佐田 あ、あれは当時本当に清人があんな髪型だったんですよ。清人役の子はオーディションで選んだんですけど、清人のしゃべり方とか真似してくれてたみたいです。
ーー健太郎さんが「佐田さんに当時の話を聞くと、すごく楽しそうに話してくれた」っておっしゃってたましたけど、当時を振り返ると「楽しかった思い出」という感じなんですか?
佐田 そうですね。健太郎くんにはお弁当食べながら当時のいろんなエピソードを話しました。
ーーくっきーさんは健太郎さんと何か話したりしましたか?
くっきー そうですね、「芝居ってどういうもんですか?」っていろいろ聞かれましたけどね。
佐田 ウソつけ(笑)!
くっきー 「芝居は台本でするな」と。「自分の脳みそで自分の言葉に噛み砕いて、自分の言葉でしゃべれ」って言いましたけど。
佐田 誰が言うてんねん(笑)! いいんですよ、取材でウソ言わなくても。
ーーちなみに、くっきーさんの高校時代はやっぱり佐田さんみたいな感じだったんですか?
くっきー 僕は暴走族じゃなかったんで、全然全然。僕のケンカの武勇伝とかしゃべったらケタケタ笑ってたんで。
佐田 (爆笑)。
くっきー 「あ、オレってやっぱりシャバい人生送ってたんやな」って。
ーーたとえばどんな武勇伝があるんですか?
くっきー 先輩がベンチで寝転んでて、僕とメンチの切り合いになって。僕友達いっぱいおったから意気揚々とケンカを売りに行ったんですけど、そいつをどついた瞬間に急に動いたもんやから貧血になって倒れちゃったりとか。で、気がついたら馬乗りになられてて。
佐田 (爆笑)。
くっきー 先輩にボッコボコにされたっていう武勇伝です。
佐田 でも目悪かったんですよね、師匠。
くっきー メガネやったんです。
佐田 昔の写真見るとめっちゃ面白くて。リーゼントなのにめっちゃ分厚いメガネかけてるもんね。
くっきー 見えへんかってん。高校時代、コンタクト入れられへんかってん、怖くて。目に何かを入れるっていうのが怖かったから、目薬から徐々に慣れていって、高2ぐらいからやっとコンタクトが入れられるようになりました。
佐田 (爆笑)。
ーー高校時代、佐田さんの「デメキン」みたいな、ちょっとイヤなあだ名とかはありましたか?
くっきー 当時からみんなに「くうちゃん」って呼ばれてたかなぁ。ひとりだけ「クソニイオ」って呼ぶツレいましたけど。
佐田 クソニイオ?
くっきー ジャイアント馬場とアントニオ猪木を足して、馬場やからクソで、"クソニイオ"。
佐田 へぇ~。「やめろや!」って言わなかったんですか?
くっきー うん。ええやつやったから。言われてイヤなあだ名とかはなかったなぁ。
佐田 周りにヘンなあだ名のやつとかいませんでした?
くっきー 「ブッシュ」っていうやつがいたなぁ。沼地に住んどってん、そいつ。噂ですけど、子どもが11人いて1人売ったっていう(笑)。
ーーいろんな人がいますねぇ。
くっきー でもこんなカッコいい人生歩みたかったですね。
ーーパンクブーブーの黒瀬さんは佐田さんが小学生の頃からお知り合いだそうですが、黒瀬さんはなにかおっしゃってましたか?
佐田 映画化って聞いて「なんでオレは出てこんとや?」って言うてました。「オレの役は誰がやるとや?」って聞かれたんですけど、学生時代はそんなに絡んでないんですよ。小学生の時に1回土下座させられたぐらいで。
くっきー (佐田が)小学生ってことは、向こうは中学生?
佐田 そう。むっちゃダサないですか?
くっきー ダサい。小学生にキレたってことやろ?
佐田 そうそう。黒瀬さんの弟がオレにケンカに負けたからって兄ちゃんにチクって、「おまえか、オレの弟をボコボコにしたの。土下座しろ」って。でも僕が暴走族の頃は黒瀬さん働いてたんじゃないですかね、3つ上なんで。僕らが現役の頃、バイクで走ってるのは何回か見たって言ってましたけど。
くっきー OBとしてたまに顔出すとかもないん?
佐田 そういう先輩もいましたけど、黒瀬さんはそういうタイプではなかったですね。
くっきー OBに来られるのってイヤなもん?
佐田 ヤですよ。僕自分のバイクやったから。先輩に「乗せて」って言われて、自分でふかす分にはいいんですけど、先輩がむっちゃクラッチを「パーーーン!!」とかやるから、クラッチも壊れるじゃないですか。ホント殺したろかと思って。
くっきー ちょっと今「パーーーン!!」の音がデカすぎたな。急に「パーーーン!!」言うから、耳つんざいたわ。
佐田 すんませんすんません。あ、でもそういえば、僕の実家が塗装屋やったんですけど、小学6年生ぐらいのときに、僕んちから黒瀬さんがシンナーを盗んで、謝りにきたのは覚えてますね。
くっきー (爆笑)。
ーーちなみに、くっきーさんは高校生の頃、バイクに乗ってたんですか?
くっきー 乗ってましたね。
佐田 どんなバイクですか?
くっきー UDミニっていう......。
佐田 はい?
くっきー UDミニっていう、スズキの50ccです。
佐田 (爆笑)。原チャ?
くっきー 原チャ乗ってました。MAX30(km)がええとこちゃいます?
ーー走りに行ったりはしなかったんですか?
くっきー 滋賀やったんで、琵琶湖のほとりとかはよう行きましたよ。カスタムして。
佐田 原チャリをカスタムすんなよ(笑)。
ーー映画の中で特に好きなシーンはありますか?
佐田 僕(=健太郎)が総長になって、むやみやたらにケンカできないってなって考えてるときに、厚成(山田裕貴)は単純で自分の感情のままに動くやつやから、ひとりで殴り込みに行って。それを「勝手なことするな」って怒ったら、昔の尊敬する先輩(真木)の「ケンカは誰かを守るときにするもんだ」って言葉を引き合いに出されて「今がそんときやろうが!」って厚成が言った一言はもうグサッときましたね。そこは観ていて「いいねぇ、山田裕貴!」って。
くっきー ただのヤンキー映画じゃなくて、人間ドラマやねんな。
佐田 (笑)。
くっきー 結局、ケンカシーンが観たいわけじゃなくて、人間ドラマが観たいねん。
ーー最後に一言ずつメッセージをお願いします。
佐田 ケンカのシーンが多いんですけど、それを怖いと思わず、ケンカするには理由があってしてきたんで、その理由がなんなのかというのをぜひ映画館で観ていただいて、怖いもんじゃないんだよ、怖い人種じゃないんだよ、っていうことを女子にもわかってもらいたいですね。
くっきー そうスね、まぁ、家こもってパソコンパチャパチャ叩いて人の悪口言うてるだけの人生なんかおもんないし、そんなやつは一回この映画観て、外へ出る喜び知って、仲間ってどんな大事なもんか知ってくれたら外に出れるし。まぁでも強制じゃないから、ケンカせえって言ってるわけじゃないし、いろんな青春があんねんで?っていうところに気づいてほしいです。
佐田 観てないよね? この映画(笑)。観てもないのに......。
くっきー (真面目な顔で)映画を観て、おのおのが青春をつかんでくれたらいいですね。
『デメキン』(幻冬舎文庫 600円+税)
【バッドボーイズ】【佐田正樹】【野性爆弾】【くっきー】
映画『デメキン』
12月2日(土)東京・シネマート新宿ほか全国ロードショー
監督:山口義高
原作:佐田正樹(バッドボーイズ)
脚本:足立紳
出演:健太郎、山田裕貴、栁俊太郎、今田美桜、髙橋里恩、田中偉登、福山翔大、三村和敬、藤木修、岩永ジョーイ、神永圭佑、成田瑛基、笠松将、黒石高大、くっきー(野性爆弾) 、ケン(水玉れっぷう隊) 、坂田聡 ほか
『デメキン』(文庫版)発売中!
(幻冬舎文庫 600円+税)
●強くなったその先に、どんな答えがあるのか、知りたかった――。
真っ暗で見えない。でも、突っ走るしかない!
「デメキン」と呼ばれ泣いてばかりいた少年は、強くなりたい一心で不良の道へ。
いつだって喧嘩上等、暴走族の総長にまで上り詰める。
その影で、失恋地獄、信じていた先生の裏切り、
本当の喧嘩を教えてくれた先輩の死、
鑑別所で見た母の涙--。
どん底で見つけた言葉は「笑わな。笑わせな」。
自由を渇望し、暗闇で足掻き続けた、アウトロー青春物語。
※巻末には映画監督・山口義高による文庫解説と、漫画家・ゆうはじめによる特別イラストを収録! さらに帯には、主演の健太郎からのメッセージつき!