笑いあり涙ありの物語で観客を魅了!プリマ旦那・野村が主宰する劇団コケコッコー旗揚げ公演「おかえり」
1月19日(金)・20日(土)の2日間にわたり、よしもと漫才劇場にて劇団コケコッコー旗揚げ公演「おかえり」が上演されました。プリマ旦那・野村が立ち上げた同劇団の、記念すべき第一作となるこの公演。脚本・演出・出演を務める野村を中心に、いなかのくるま・ちろるや堀川絵美、吉本新喜劇の吉岡友見や鮫島幸恵などバラエティ豊かな面々が集結。いつもの漫才劇場とはひと味違う本格芝居に挑戦し、笑って泣けるハートフルコメディで観客を魅了しました。ここでは、19日(金)に行われた初日の模様をレポートします。
薄暗い場内に、ふわり漂うコーヒーの香り。舞台となるのは、どうやらとある街の喫茶店のよう。野村からの諸注意のアナウンスを経て、観客はいつしかに芝居の世界へと導かれていきます。
喫茶店の名前は岡本珈琲。と、そこへ買い物袋を持った仁(野村)が帰ってきました。ミックスジュースの作り方を、独り言のごとくブツブツとしゃべり続けています。店内に入るとふと思い立ち、携帯をダイヤル。すると、テーブルの上にあるもうひとつの携帯が鳴り始めました。
それを聞きつけて階段を下りてきたまひる(ちろる)は、乱暴に携帯を取り、音を消してしまいます。まひるが去りひとりになると、テーブルの上の携帯を自分の服のなかに入れ、再びダイヤルする仁。留守電からは、「もしもし、朝子です。昼でも夜でも朝子です」と元気な声が返ってきますが...。
続いて、岡本珈琲には次々とお客さんがやってきます。「ドンドンうるさい」と苦情を言ってくる隣の中華料理店店主・趙(近藤貴嗣)を皮切りに、太丸(たまる)なのに仁から「ふとまる」と呼ばれてしまうタクシー運転手・恵(堀川)、店内で夫婦げんかを繰り広げる修(ファイトクラブ・伊丹)と真理(樋口みどりこ/つぼみ)、ギャンブル好きの借金大王らしい功(マユリカ・中谷)...濃すぎるキャラクターをのびのび演じる出演者たち。登場するたび、客席から拍手と笑いが起こります。
その間も、独り言のようにしゃべり続けている仁。どうやらそのフレーズは、どれも「朝子」という人物の口癖らしく...? 「映画好き」の設定が生きるセリフの数々も、遊び心にあふれています。
まひるもまたひとり、「朝子」の携帯に電話をかけていますが、もちろん返ってくるのは聞きなれた留守電のメッセージ。発信音の後、何か言おうとするも、言葉が出ません。何らかの大きなショックを受け、しゃべれなくなっているようです。
功が使用中のトイレにまひるが入ってしまうというアクシデントで、ここまでの出演者が大集合! こちらも友だちらしい、警官の正義(キタノの大冒険)も駆けつけ、彼らが昔なじみの仲間であることがわかってきました。
中華料理店の趙まで加わっての大騒ぎが終わり、ひとりまたひとりと岡本珈琲から帰っていく人々。残された仁の前に朝子(吉岡友見)が現れると、仁は「なんで」と質問攻めに。最後の質問「なんで病院、行かなかったの」で、朝子が既に亡き人となっていることがわかるのでした。
一方、死んでしまった朝子は、天使のデクシア(辻凪子)&アリステラ(佐藤あみ)から死後の世界について説明を受けています。
口が悪くキュートなふたりに、その上司・ケントロン(大西ユースケ)が加わってのドタバタ劇で笑わせるうち、献身的に生きた朝子は、天に召される前、やり残したことができると発覚。「みんなの様子をここで見ていたい」...朝子は岡本珈琲に降り立ち、自分がいなくなった後の家族、そして仲間たちを見守ることにしました。
ついつい生きていた頃と同様、世話を焼いたり話しかけたりしてしまう朝子ですが、やはりその姿は誰にも見えないよう。やがて修、正義、功の3人が、仁の妻でありまひるの母である千加子を探そうと画策していることが判明。好きな人ができて家族を捨てたという千加子。「ぜったいにダメ」と焦る朝子に、ケントロンは「別の人の体を借りる」力をしばし授けてくれました。
まひるの体を借りて、仁と話すことができた朝子。一方、功のSNSでの呼びかけを見つけた千加子は、弟の孝介(ラニーノーズ・洲崎)とともに岡本珈琲へとやって来て...。功と孝介が「同じにおいがする」となぜか意気投合するなど、この場面でも、シリアスななかに笑いがちりばめられます。
ついに仁と再会する千加子。そこで、千加子が姿を消した本当の理由と、彼女の嘘にとことん付き合った朝子の、知られざるやりとりが明かされることに!
千加子の帰還を知り、仲間たちも岡本珈琲に集まってきました。心に秘めてきた千加子への思いをぶつける恵と真理。堀川らの熱演が、観客の心をゆさぶります。
そんなとき、まひるの体を借りていた朝子が店へと帰ってきましたが、残された時間はそこで終わり。朝子の魂は、ケントロンにいざなわれ、空へと上っていきます。ただひとり、その気配を感じた仁は、手を伸ばして朝子を見送るのでした。
朝子の魂が去った後、気を失っていたまひるが目覚め、千加子と対面。押し込めていた感情を一気に爆発させるちろるの演技、父・仁と母・千加子の切ないやりとりが大きな感動を呼び、客席からはすすり泣く声が聞こえていました。
時は流れ、今日もいつも通り仲間たちが集まる岡本珈琲。千加子は戻り、弟の孝介もスタッフとして店へ。朝子の一件で降格されたふたりの天使は、功と趙に、日々、小さなラッキーをさずけているようです。意外なふたりがカップルになっていたりと、変化もいろいろ。和気あいあいとにぎやかな店内、そして仁は「おかえり」と書かれた看板に明かりを灯し、物語は幕を下ろしました。
終演後のカーテンコールでは、キャストたちが一堂に。感動さめやらぬ客席に向かって、野村は「皆さんの貴重な時間をいただいたので、一緒にステキな時間を過ごしたいなという気持ちで出演者14人、そしてスタッフの皆さん、たくさんの力を借りて、この作品を作らせていただきました」と挨拶。大きな拍手に包まれました。
本作を経て、次はどんな物語を見せてくれるのか。劇団コケコッコーの今後に、どうぞご期待ください!
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