人気CMのあのセリフも考案! CM業界でも活躍中のグランジ・五明が出版記念トークショー開催
5月12日(土)下北沢の本屋B&Bにて、芸人で初めてTCC新人賞を受賞したグランジ・五明拓弥の著書『全米は、泣かない。』刊行を記念したトークイベント『五明拓弥×箭内道彦×遠山大輔 「箭内さんに聞いた、刺さる言葉のつくり方』を開催しました。
『全米は、泣かない。』は、優れた広告の制作者に贈られるTCC新人賞を受賞したグランジ・五明拓弥の初の著書。7人の名だたるコピーライター・CMプランナーとの対談に加え、お相手から出された課題への回答と、赤字添削・講評もそのまま掲載。「人の心を動かす言葉」はどうやったら作れるようになるのか? 一流のクリエイターになるためにがどんな訓練が必要なのか? アイディアが出てこない時、どうしているのか? SNSで世の中に広がりやすい言葉とは? など、広告業界のトップを走る人たちの思考法が詰まっています。
著者として書店で行うイベント。お笑いトリオとしてのグランジを知らないお客さんもいる会場に、「いつも(お笑いライブ)と全然違いますね、雰囲気が」と五明。遠山に、いつもより落ち着きがないことを指摘された五明は「お客さんが、こんなに来るとは思わなかった」と驚きと喜びの入り混じった心境を明かします。五明が「今日はツインMCだから、頼むよ!」と助けを求めると、遠山は「この本売れたって、俺には1円も入ってこないから」と言いながらも「ただ、めちゃめちゃ面白かった」と五明の著書をしっかりPRしました。
ここでゲストの箭内道彦さんが登場。遠山のコメントを受け、「僕は前書きしか読んでない」とつぶやくと会場から笑いが。「同業者の考えって知りたくないから」という箭内さんは、五明が渡した著書を「ラジオのリスナープレゼントにしちゃいました」と明かし、さらに爆笑が起こります。
まずは2人と箭内さんの関係について説明。遠山とは、ラジオ「SCHOOL OF LOCK!」を通じて交流。五明との関係は、日本雑誌広告賞の審査員として同席した時、「お笑い芸人の脳みそをCMにスライドさせるというか、元々CMを勉強した人じゃない人がやるって面白いと思って」と、初対面にも関わらず五明に連絡先を聞いたという箭内さん。それからは自分のチームの一員として五明とCMの仕事をしていることを明かします。全く知らなかった遠山は「そんなの初耳! グランジのスケジュールに「五明、広告打ち合わせ」「五明、クリエイティブ活動」って書いてあるのは、何なのかと思ってた」と驚いていました。
五明がクリエーターとして参加したCMは、松田龍平さんと遠藤憲一さんが出演する「ダイドーデミタスコーヒー」のシリーズCM。声優の竹達彩奈さんのセリフ「通れ!」は、撮影現場で「もっとグッとくるセリフ欲しいね」との箭内さんの言葉に応え五明が提案したセリフだと明かします。また、ジャルジャル・後藤が陶芸家役で出演したCMには、実は五明も出演していることを初告白。ところが、遠山含め会場の誰も気付いていなかったため、「ちょっと役者の顔になっちゃってるからね」とスカシて答える五明。そこで、みんなでCMの映像を見てみると...後藤を取材に来たカメラクルーとして出演する五明の姿が。あまりにも一瞬だったため、会場から笑いが起こりました。
ここからは箭内さんが広告業界を志すきっかけとなったことから、その後の半生についてのトークを。大学でグラフィックや映像デザインを学び、デザイナーとして博報堂に就職した箭内さん。元々デザインより言葉に興味があったことに加え、先輩の佐藤可士和さん、後輩の佐野研二郎さんら才能あふれる面々に圧倒され、7年目、33歳の時に自ら希望してCMプランナーに転向したのだといいます。「全て捨てるの、怖くなかったんですか」と問う遠山に、「32歳が本当のデビューの年だと思ってる」と箭内さん。CM業界にデビューした五明のことを例にあげながら、他の業界への転向は「転校生であることが大事。これまでやってきたものをリセットして全部捨てて、1年生になったら負け」という箭内さんに、五明も「30代だっていうのも大事ですね。これまで自分の経験してきたものが活かされますから」と共感していました。
また箭内さんが手がけてきた人気CMの知られざる裏話も告白。人気芸人54人が登場した資生堂unoのCMは、どうしても50タイプ作りたかったため「企画して撮影してオンエアされるまでに4人くらい捕まるかもしれないと思って54人にした(笑)」と暴露し、五明らも仰天。またオリエンタルラジオらが出演したunoCMの続編は、「お笑いブームはもう終わるのでは?」との声もある中、箭内さんが「人が生きていくためにお笑いや笑顔は必要なものだからブームは終わらない」とプレゼンし、企画が実現したそう。「人を怒らせるとか泣かせるとか簡単だけど、笑わせるのは難しい。お笑いやってる人は税金安くしてもいいくらい」と芸人にリスペクトを示してくれる箭内さんに、五明と遠山も大感激でした。
東京メトロシリーズなど、最近手がけたCMは「普通のものが好き」という箭内さん。「散々逆らい続けてきたから、逆らうことに飽きちゃった」という箭内さんの口から飛び出した「逆らうことに逆らうと素直になる」との名言に、五明は「肝に命じます」と感銘。若かりし頃は、CMプランナーとして7年遅れでのデビューを取り戻そうと「とにかく何にでも逆らってた」という箭内さんは、テレビ局の考査(オンエアできるかどうかを判断される)を通らないことが「爪痕を残せた」とうれしかったそう。そこで、逆らいまくっていた頃のCMをみんなで見てみることに。15秒のCMを5秒ごと3分割した中華まん、吉田拓郎さんが踊るカップ麺、小山田圭吾さんが女装して登場するお菓子などのCMは今見ても斬新で、会場は大爆笑でした。
また、遠山はこの場を借りて箭内さんへの感謝を。ラジオ「SCHOOL OF LOCK!」の二代目校長として番組を引き継いだ遠山は、プレッシャーで押しつぶされそうになり周りが敵にしか見えなかった時、ゲストの箭内さんの「二代目って大変だよね。どんなことでも引き継ぐことって大変だよ」という一言で気持ちが楽になったことを告白。箭内さん自身も「トップランナー」の司会を受け継いだ時、同じ思いをしたことを話してくれました。
箭内さんと仕事をする中でコミュニケーション能力の高さに驚いたという五明は、箭内さんに「コミュニケーションのコツ」について質問。「技術はそこそこでいい。とにかくジジ転がし、ババ転がしを身につけろ」という箭内さん。もちろん結果を出すことも必要ながら「相手に自分を好きになってもらう。一緒にいて欲しと思ってもらうことが大事」と、自らの経験を交えながら人とのいい関係性作りについて語ってくれました。
その他にも、お客さんからの質問に答えたり、他言禁止のCM裏話なども飛び出した2時間。笑えてためになるトークショーとなりました。
【グランジ】【五明拓弥】【遠山大輔】