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2018年9月20日 (木)

シソンヌ・じろう「思いつくか思いつかないかは、写真次第だった」! 初の短編小説集『サムガールズ あの子が故郷に帰るとき』刊行記念インタビュー

シソンヌ・じろうが執筆した短編小説集『サムガールズ あの子が故郷に帰るとき』(ヨシモトブックス刊)が現在、好評発売中です!

本著は、じろうが写真家・志鎌康平さんが国内外で撮り下ろした女性たちのポートレートをもとに、出会ったこともない彼女たちのバックストーリーを妄想だけで描き出した自身初の短編小説集。元々、ローカル・ウェブマガジン『雛形』にて連載されていたものに加筆・修正をくわえ、さらに女優・西田尚美さんを主人公とした書き下ろし作もおさめられた1冊です。

今回、著者であるシソンヌ・じろうへインタビュー。軽い気持ちで引き受けたという連載から、短編小説を書き上げることで感じたこと、またコントとの違い、自身の描く女性たちについて語ってもらいました。
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――『雛形』での連載からスタートした本著ですが、ヨシモトブックスの編集担当に伺ったところ、じろうさんは最初、軽い気持ちで引き受けられたそうで。

「そうですね(笑)。基本、なんでも軽い気持ちで引き受けちゃうんですけど、元々書くのが好きで。でも、こういうものを書きたいっていう願望は一切ないので、依頼が来たらやろうという気持ちでいたんです。そんな中で、ヨシモトブックスの方がずっと面白いことを一緒にやりたい、僕に何か書いてほしいと長い間言ってくれてたので、何かしらでかたちにしたいと思っていて。この企画のアイデアをいただいたとき、あんまりやってる人がいなさそうなものでしたし、それなりにカロリーのある感じがするなと思って引き受けたんですけど......、想像以上にカロリーが高い作業でした」

――具体的に、どういうところでそう感じたんですか。

「毎月、女性の写真と名前、移住歴、年齢が送られてくるんですけど、写真次第でアイデアが出てこないことも......。思いつくか思いつかないかは、写真次第のところがあったんですよね。例えば、『ギターに出会って変わった私の人生』の人、『私のばあば、私はばあば』の人、『冬子と元・冬子』の人とかは服装や背景などでいろいろとアイデアが浮かびやすかった。あと、3000字で書いてほしいと言われてたんですけど、ネットに載せるものだから別に守らなくてもいいだろうと思って、連載当初は書けるだけ書いてたんです。けど、途中で長く書くことに疲れてしまって。だったら、制限の中でまとめたほうが書きやすいなと思い、後半は3000字でまとめるようにしていました」
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――読ませていただいて、最初は誰かの日記を読んでいるような感覚を持ったんです。けど、最後のほうは小説的な感じもあったので、書き進めるにつれて書くことへの意識が変わっていったのかなと感じました。

「最初はお笑いに寄せすぎてましたね。こういうボケをしたいから、そこにつなげるために流れをつくってる感覚があったんですけど、後半はそこまでボケてない。多少はボケてるんでしょうけど、前半に比べるとお笑いっぽさはなくなってきてるなと思います」

――意識してそうしたんですか? それとも、無意識に変わっていったんですか?

「わぁ、どっちだろう?......こういうふうに書こうとはあんまり考えてなくて、なんとなくそうなっていったんだと思います。僕、いろいろとよくわかってないんですよ。ヨシモトブックスの編集担当が連載中、『今回すごくいいです』とか感想を言ってくれてたんですけど、ほかの回と違う良さがどこにあるのかわからなかったんですよね(苦笑)。今、新聞社で働いている青森にいる同級生がめちゃくちゃサブカルが好きで。僕にお笑いを教えてくれたヤツなんですけど、そいつと昨日、電話で話したら『お前は小説とはどういうものかを知らないのが、逆にいいんだ』っていうことをすげぇ説明してくれたんです。本来の小説はこうなんだけど、お前の書き方はこうだとかいろいろと言われて、あぁ、そうなのかなと納得しました」

――元々、小説などの本はよく読まれるんですか?

「全然読まないんですよ。本当に本を読まない。......買うんですけどね。一昨年の直木賞を獲った『蜜蜂と遠雷』ってあるじゃないですか。あれも読んどくかと思って買ったんですけど、結局一文字も......ふはははは! 読書人になりたいっていう欲求は、学生時代からずっと持ってるんです。けど、読んでも途中でやめるし、がんばって読んでも結局なんにも憶えてないんで、このまま本を読みたいなぁと思いながら読まずに死んでいくんだろうなと思います。結局、パチンコとゲームしかやってないですから」

――(笑)でも、書くのはお好きなんですもんね?

「はい、好きです。だから、今回もやり甲斐はすごくありました。しんどいながらも、自分のちからになっているんだろうなっていうのは感じながら書いてましたね」

――先ほど、写真からダイレクトにインスピレーションを受けていたと話されてましたけど、アイデアが浮かんでからはどんなふうに話を広げていっていたんですか。

「どうだったなぁ? 書きながら思いついたことをどんどん書いていくので、こういう流れにしようと思って書いたものは1つもないんです。僕、ネタも書きながらその先を決めていくんです。だから、ドラマの脚本のお話をいただいてもプロットが書けなくて......。『卒業バカメンタリー』をやらせてもらったときはスタッフのみなさんが一緒にプロットをつくってくださって。全体を決めてたら書き始めるとこんなに楽なんだ!と驚きました。けど、それは1人だとできないんですよねぇ」

――どんな感じで書き出すんですか?

「適当に書いてから、あとで直します。読み直して書き直す作業がすごく多いから、容量が悪いですよね。ただ、中にはパーっと書けた人もいました。(西田)尚美さんとか(『ヨウコさんへ』)は1日で書き上げたんですけど、個人的に好きなお話です。あと、『ラッキー集め』を好きだっていう人、すげぇ多くて。地元の友達もこれがいちばんよかったって言ってましたね。この話にくじ屋さんが出てくるのは、僕の同級生の家がそうだったからなんです。僕の地元はくじの卸問屋さんが多くて、大晦日になると母親がそこででっかいくじを買ってきて子供たちに引かせる。そういうくじ文化があるところだったんですよ。でも、なんでこの人の話にくじを出したのかな?......あぁ、うしろの感じがくじ屋をやってるように見えたからだった気がしますね」

――個人的にも『ラッキー集め』はすごくいいお話だなと思いました。あと、読んでいて思ったのは、恋愛要素があんまりなかったなということなんですけど。

「あぁ、確かに! 恋愛要素はほとんどなかったですけど、そこも意識したわけではないですね」
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――じろうさんといえば、コント中の女装のイメージが強いですが、女性を描くことについて何かしら思うことはありますか。

「うーん、どう考えてるんだろう? その部分に関しても、じぶんがどういうつもりでいるのか、あんまりわかってないかもしれないです。ただ、いろんなことをやるより、1つのことを突き詰めてやるほうが好きだから、暴走気味の女の人が多く出てくるのかなとは思いますけど......」

――実際、川嶋佳子を始めとしたご自身がコントで演じるような女性、この本の中に出てくるような女性たちが近くにいたら?

「イヤですよ! 危ないじゃないですか!(笑)」

――え! 行動力があって、自分の意思を貫いているステキな女性たちだなと思いますけどね(笑)。では、小説とコント、書き方の違いはありますか?

「別のことをやっている感じはなかったですね。けど、この本に関してはト書きを丁寧に書いているような感覚はありました。2年くらい前、ある出版社の方が僕に本を書いてほしいと言ってくれて、1年間、アイデア出しに付き合ってくれたことがあったんです。会社の会議室を抑えてくれて何かが生まれるのをずっと待ってくれてたんですけどなかなかできなくて、僕が『すみません、やめさせてください』ってお願いして......。結局、その方とは本をつくれなかったんですけど、その方から短い小説を途中まで書いて読んでもらっていて、『こういう表現は、じろうさんらしくて面白い』とか『小説はこういう表現を出すといい』とか、書くためのヒントを教えてもらったんです。だから、今回はそのときアドバイスしてもらったところは気をつけて、状況をあまり簡単にはわからせないような書き方は意識しました。あと、お笑いをやっている分、小説を書くのとは違った表現の仕方、面白いことを表現する言葉のストックはいっぱいあるはずなので、そういうところは多少こだわって表現しています。そうだ、語呂の良さにもこだわりましたね。言葉のリズムっていうか、心地いい日本語ってあるじゃないですか。だから、一文字足したり抜いたりを音読しながら、何度も書き直しました」

――今後、また小説を執筆したいという気持ちはありますか?

「小説は......たぶん無理じゃないかなぁ(笑)。長い小説を書くよりは、ドラマとか映画の脚本のほうが会話劇な分、向いてるような気はします。と言っても、脚本にもいろんなルールがあるみたいなので、学びながらですけど今後も挑戦していければと。ずっと同じことをするのではなく、違うことにどんどん挑戦していって、それが結局お笑いにつながっていくようにしていきたいなと思います」

――では、最後によしもとニュースセンターを読んでくださっているみなさんへ、本著に関するメッセージをいただけますか。

「(しばし考えて)......僕、そこまで本を出しましたっていうのを言ってないんです。本当に面白ければ放っておいても話題になると思っていて。話題にならないということは、自分がまだまだだということなんですよね。なので、読んでみたいなと思ったら、読んでいただけたら嬉しいです」
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【シソンヌ】【じろう】

『サムガールズ あの子が故郷に帰るとき』

著書:じろう(シソンヌ)
価格:1350円
ヨシモトブックス刊