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2018年10月26日 (金)

メッセンジャー・黒田による初のエッセイ集『黒田目線』が発売!

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10月26日(金)に『黒田目線』をリリースするメッセンジャー・黒田有。本書は、「毎日新聞」大阪版に2014年12月から2018年3月まで約3年半にわたって掲載された人気連載「黒田めせんじゃ~!!」に、新たに加筆修正や書き下ろしを加えた、自身初著書となるエッセイ集です。エッセイのテーマは、初恋、大阪への愛着、芸人の矜恃、独身男の本音――など。笑いのウラに著者の文筆家としての意外な顔を覗かせる内容となっています。また、オビには、小説家の湊かなえさんより、「貧乏だったあの頃に、家族で飲んだインスタントコーヒーのほろ苦さを思い出しました」との一文をいただいています。本作について、黒田にインタビューしました。

--実際、本が出来上がってみて今の率直なご感想は?

子供のころから結構本が好きだったというか、家が貧乏やったんで本しか読むものがなくて。昔から本はずっと読んでいて。自分がまさか出すという考えはなかったんですけど...まあまあ出せたことは素直にうれしいですね。

--子供の頃はどういう本を読まれていたんですか?

次男が本好きで、その影響もあって星新一さんとか、赤川次郎さんとか、ブームやった人を結構読んだりしていましたね。

--ちなみに今、読んでいるものはありますか?

浅田次郎さんの本ですね。『黒田目線』の担当編集者の方が浅田次郎さんを担当されていたみたいで。僕、その前から浅田次郎さんの本を読んでいたんですよ。それもあって読ませてもらっていますね。

--2014年の4月から3年半、連載が始まりましたが、最初にオファーをいただいたときはどんな気持ちでしたか?

ええんかな?と思いましたね。だいぶん昔やったら『ぴあ』で連載持たせてもらったこともあって。僕、『TARU』というお店を紹介する本でずっと連載をしていたんです。その記事をちょうど編集者が見たみたいで、「書きはんねやったら頼んでもらわれへんかな」ってお話が来たとき、毎日新聞というと大手で日本四大新聞ですから、僕が書いていいんですかって話になったんですけど、文字数も決まっていますと。月に1回だけなので、型にはまらず、夕刊紙は読者はご老人の方が多いらしいので、難しい話はほかでするから、社会的なこととかより黒田さんが思っている日常のことを書いてもらったらという話だったので、一度やらせてもらおうかなと。あとがきにも書いているんですけど、すぐ終わると思っていたんですよ。よく続いて半年くらいかなって。そしたら結構書かせてもらって。月1回といえども3年半になると結構なボリュームですね。

--208ページありますね。

連載を全部集めてプラスアルファでちょっと書いてくれと言われて。連載の時は原稿用紙2枚半で収めてくという指示でした。ほなら、もう少し書きたいと思っても、文字数決められると結構難しくて。今回、本を書くにあたっては文字数も関係なく書いてくれって、連載で書いたものに足したりとか、また新たに書き下ろしました。年齢的にも、本を出せた時期が今ぐらいでちょうどよかったですね。

--始めたのは44歳のときですよね。

はい。その間に母親が亡くなったり、もろもろのことがありましたので。まあまあ売れる売れへんというよりかは、書かせていただいた時期がちょうどよかったですね。

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--原稿用紙2枚半は難しいですね。

難しいですね。文字数が多かったらカットしなあかんし、足らなくてもあかんし。でも、その作業を先にやらせていただいたので、勉強にはなったかなと思います。今までの連載は100字くらいオーバーしてもええっていう感じで書かせてもらっていたんですけど、毎日新聞社はきっちりしていて難しかったけど、いろいろプラスになりましたね。

--元原稿は多少、文字数がオーバーしても、編集の方が調整されることが多いんじゃないかと思ったのですが、そうではなかったんですね。

はい。これは完全に自分で書きました。書くプロではないので、文章はつたないかもしれませんが、ストレートには書かせてもらいました。あんまりええかっこして書かんとことって思って。

--参考にされた作家さんはいらっしゃるんですか?

僕、実は武田鉄矢さんの『母に捧げるバラード』という本をずっと持っているんです。たぶん、小学校の6年生のころに読んで。ちょうど『3年B組金八先生』ブームの時に出しはったんやと思うんですけど、包み隠さず書いてはったんです。性的なものとか。それが面白いなと思っていて。描写の仕方とかがすごく斬新やったんです。こういう書き方って面白いなって、小学生の僕でも感化されました。それをまねたというわけではないですが、基本的には、変にええかっこしたりとか、あんまり考えんとこって思いました。

――編集の方と二人三脚だったんですか?

全くです。「原稿待ってますんでとりあえず書いてください」っていうぐらいで。

――赤入れが大幅に入ったというわけではなく?

表記の統一はありましたが、「ここはちょっととがりすぎているからどうでしょう」とかいう程度のものはありました。

――連載が始まった後に、2013年に『ポストへ』という舞台の脚本に始まり、『既読アリ』『つな』など長編のお芝居を手がけられるようになりましたが、舞台の作風に連載の影響はあったのでしょうか?

変わってきたというのもありますし、昔の作品は自分で見ても説教くさいんですよね。かっこつけてる気ぃないんやけど、かっこつけてるところがあったので。もっとフラットなものにしようかなと思って...。

――連載を始めて、脚本にも変化があったのかなと思ったのですが...。

それまでは役者に気を遣っていたんですよね。出ていただいているからという思いがあって。セリフの分量とか、目立たせ方とか、それを考えていたんですけど、この前に『ボランチェア』という作品をやったのですが、自分の思った通りに書いた方がよかったということに気づきました。それは、連載をやっていたからと思うんです。それをやっていたから今があると思います。

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――「頭の中の整理をしようと思いました」ということでしたが、実際に整理されましたか?

よしもとに21歳の時に入ったんですけど、20代、30代と闇雲に動いていたような気がするんですよね。でも40になったら老いがほんまに来るんですよ。老眼が来たりとか。まさか自分が老眼になるとは思わへんし、異様に朝早く目が覚めるだとか、6時間以上寝られないとか、体が全く変わってきたんですよ。食べるものも変わってくるし。そのことに対してあれ?って思うけど、認めたくないんですよね、あんまり。頭では分かっているんですけど、認めたくない。多分、僕らぐらいの年齢はそこにがーっと葛藤するんですよね。で、老けだすと一気に老ける。気をつけなあかんけど、どこを気を付けてええのかわからない。これが60歳ぐらいになったらもっと違う考えになっていると思うんです。40代で何かしらの道のりを作っていかないと、たぶん自分の考えていた線路とは違うところに線路ができちゃっているなというのがありました。

――エッセイの中で特に読んでほしいエピソードはありますか?

40年以上生きていたら、いろんな思い出があるのですが、「この1冊に全部詰まってますねん」というものではなく、より鮮明に思い出したものを書き出しているんです。僕の脳の中に残っている1冊ずつの本を出していく感じですかね。他人の脳をのぞき込むような本になっていると思うので、それを楽しんでもらったらいいかなと思います。何がハマるかは読む人の状況によって違うと思うのですが、何となくみんなが通ってきた道、僕らと同じ昭和生まれの人が読んだとき、私にこういうことあった、俺にもこんなんがあったと感じてもらうことが大事だと思いますね。僕がそういうことを先に見せているだけであって。まあまあ、紆余曲折あった人生なので...。

――タイトルが連載の『黒田めせんじゃ~!!』から『黒田目線』になったのは?

編集の方からこれで行きましょうと。その辺はお任せしました。表紙のイラストも見せていただいて、「抽象的な方で」ということになりました。もっと俺に寄せてもらおうとしていたんですが、自分の顔に寄せなくてもいいですよと。このイラストは僕の顔というより、年を取っている人にも見えるし、小学生にも見えるし、30代にも見えるじゃないですか。ぼやっとした感じなんですけど、僕は気に入っています。誰の顔なのかぼやけてますが、そっちの方がいいかなと思ってます。

――子供の頃に似ているというのは?

そう見ようと思ったら似てますが、似てないと言えば似てないですね。エッセイも小学生の頃から現代までを書いていて、時空が飛んでいるんですね。表紙を今の俺の顔にしたら今の俺のままになってしまうから、思い出話に変わるのが嫌だなと思って。

――書いていて急に思い出したこともありましたか?

小学校の時にいじめられっ子の女の子がいて、その子のことは全く忘れていたんです。でも、あるニュースを見てふと思い出して、そのことを書いたり...。僕がふとしたことから神奈川県まで一人で行ったんです。とっさに着いた嘘で行かなあかんくなって、お金をためて行った初めての一人旅でした。そういうことは結構長い文章で書いています。

――オビの推薦文も注目ですね。

湊かなえさんが書いてくださって。湊先生って、絶対にオビの推薦文を書かれないんですけど、一度だけ僕の番組にゲストで出てくださって、関西の方なので気に入ってくださって、「黒田さんが書くんやったら」と初めて書いてくださったんです。そうやって湊先生がオビを書いてくださっているので、売らなあかんなっていう気持ちはあるんですけど、押して売るものでもないから...。

――SNSを使おうというお考えは?

ないですね。1回ツイッターをやっていたんですけど、性に合わんなって。考えが分かってしまうと面白くないなと思ったんですよね。苦手なんですよ。SNSって見知らぬ人とつながっておきたいというものですけど、僕はどっちかというと逆で、そんなにつながりたくない。仲間は増えるかもしれないけど、その分悩みも増えますし。だから、汚い手ですけど、後輩で人気ある子に宣伝してって言ってます(笑)。

――このエッセイが一冊の本になって、また新たに何か挑戦したいなという思いは芽生えましたか?

1回、文芸春秋さんの『オール讀物』で小説を書かせてもらったんです。お世辞やと思いますが、編集長にお褒めの言葉をいただいたんです。で、うれしくてこれはもしかしたら...?と思ったんですけど、発売と同時に又吉が賞を獲ったんです(笑)。それが悔しくて、もう一度小説を書きたいなという思いはありますね。

――それはどういう小説だったんですか?

いろんなジャンルの作家さんをピックアップして、「昭和のエロス」という題名でそれぞれ書いてくださいという特集だったんです。その中で、一人の編集者さんが、俺が脚本を書いていることを知っているから「書いてみませんか」と誘ってくれて。一人称で描いたんです。その小説の元になった女の子の話も『黒田目線』に載っています。小説ではその子がこうなったら面白いなという想像を書かせてもらいました。

――黒田さんは舞台の作品でも昭和の話が多いように思うのですが...。

近代史が好きなんです。明治維新以降の話が好きで。幕末はちょっと勉強しましたけど、戦国時代は武将の名前を言えるくらいであんまり...。どっちの目線で見るかによって政意が変わってくるじゃないですか。でも現代史って間違いなく資料が残っているので。大正時代、昭和初期、戦後の高度成長期とか、そのぐらいの時期の本もたくさん持ってます。1回、テレビで特番をやらせてくれって言うたんですけどね(笑)。

――ちなみに、近代史の中でもどのあたりがお好きですか?

大正時代と戦後直後から昭和を駆け抜けるぐらいですかね。『つな』という舞台も戦後のGHQを相手に売春をやっている人の話でした。その辺の話はずっと見ていますね。

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――では、『黒田目線』を楽しみにしている方に一言お願いします。

本も売れない時代ですし、牛丼が1杯450円くらいの時代に買っていただくのは申し訳ない気がしますが、僕らと同世代の方には、ちょっとタイムスリップしてもらえたらなと思います。

――本当に、本が売れない時代とのことですが、活字離れも著しいとも言われていますが、本そのものに対してはどうお考えですか?

僕は芸人をやって28年になるんですけど、よく後輩に「トークがうまくなるにはどうしたらいいですか」とか「トークライブを一人でやった方がいいんですかね」と言われるんですけど、本を読んでいたらトークもうまくなるんです。本を読んでいたら、相手が何をしゃべるかわかります。「この人、しゃべるの下手やな」と思ったら、必ず本を読んでいません。それはええ大学を出ていようが、高卒であろうが一緒です。会話のクエスチョンにちゃんと答えられる人は、クエスチョンの前にこういうことを聞きそうやなと予想してアンサーを頭の中で考えているから。だから会話がスムースに運ぶんですけど、本を読んでへん人間はそのクエスチョンを頭の中でいったん置き換えるから反応が遅いんですよね。遅いから焦って何を言っているのか分からなくなる。僕は、本離れは、ほんまに日本の国を滅ぼすのと違うかなぐらいに思っています。この人と会話が成り立たへんと思って聞いてみたら、本を読んだことがないと言う人がほとんどです。「お前、本読んでへんやろ」って聞いたら、必ず読んでない。こいつアホちゃうかと思ったら、大体読んでない(笑)。本はコミュニケーションのツールとしても絶対に必要だと思います。本さえ読んでいたら、それが一人称であろうが、二人称であろうが、想像力がつきます。何のジャンルでもいいので活字に慣れていたら会話も成り立つと思います。