西川きよし、ぼんちおさむ、月亭一門もお祝いに! なんばグランド花月にて「芸能生活50周年記念公演 月亭八方 落語誘笑会」が開催
10月26日(金)、月亭八方の独演会「落語誘笑会」がなんばグランド花月で開催されました。今年は八方の芸能生活50周年という節目の年とあって、「芸能生活50周年記念公演 月亭八方 落語誘笑会」と銘打ち名古屋・東京・徳島・兵庫、そして、なんばと5会場を回る記念ツアーを敢行。12月16日(日)には、タイ・バンコクでも公演を行うことが決定しています。
幕開けは、和太鼓奏者・木村優一さんによる演奏からです。力強いバチ捌きで劇場内に荘厳な空気が漂っていき、ぐっと場が引き締まっていきます。
約5分の演奏が終わり、「六甲おろし」が演奏されると、お茶子が講座の準備を整えていきます。そこへタテ縞の羽織姿の月亭八方が姿を現しました。席を埋めるたくさんのお客さんを前にした八方は、「感無量です。帰りたいぐらい」と嬉しいのか、怖じ気づいているのか分からないコメント。羽織っているのは「40年前ぐらいに『花王名人劇場』で30歳の頃に着た」という思い出深い品であることを紹介して、野球つながりから先頃行われたプロ野球ドラフト会議を話題に挙げます。そして「若い頃は、阪神タイガースの話をよくした」と話し、芸歴10年目の頃に立川談志師匠の独演会で前座を務めた際のエピソードを。そこでも阪神タイガースのネタを盛り込んだと言い、「これから先、落語家をやるためには阪神の話をやめるようにならなければ、1人前ならへんよ」と諭されたとし「はい、承知しましたと(談志さんに)言いながら、今もやってる」と己を貫き続けたことでお客さんの笑いを誘いました。また、今年3月に亡くなった月亭可朝師匠のお別れ会で可朝の大ヒット曲「嘆きのボイン」で見送った話、師匠から伝授された「飲む・打つ・買う」の教えや、「楽屋ニュース」成立のきっかけエピソードを語りながら、これまでの八方自身の経歴を陽気に振り返りました。
1席目は「親子酒」です。お酒が大好き父と息子を題材にした古典落語のひとつで、八方は酔っ払い親子を陽気に演じ分けます。酔っ払いならではの発言・所作が出る度に、お客さんからふっと笑い声が漏れます。
次は、松竹座での公演終わりでお祝いに駆けつけた、歌舞伎俳優・市川笑三郎さんの舞です。八方は飛び入り参加してくれることに感謝をして「まさか、私のために歌舞伎俳優の方がお祝いの舞をなんて想像も付きませんでした」としみじみしたかと思うと、「どれほどお礼をしたらいいのか」と出演料の心配を。聞きづらいので「舞台で聞こうと思います。そしたら『いやいやいや』とおっしゃるに違いありません」と正直すぎるコメントで客席を沸かせ、市川笑三郎さんを招き入れます。「50周年、誠におめでとうございます」と気品満ち溢れる佇まいの市川さん。早速、八方は「いくらぐらいお支払いすれば......」と出演料の交渉に移り、「ご心配なく」の言葉を市川さんから引き出し、思惑通りでホッと胸をなで下ろしていました。爆笑に包まれた後、市川さんがお祝いの舞を披露されました。さっと金の扇子を開き、趣深い舞で観客を魅了していました。
「一気に格式高い会に変わりましたね」と月亭八光が登場。改めて呼び込まれた八方も「品と言いますかね」と市川さんの舞に触発され「終わるまで、この品を保っていきたい」と気が引き締まった様子。そして冒頭で演奏してくださった木村優一さんを舞台上に呼び、オープニングを盛り上げてくださったことに感謝の気持ちを伝えます。
続いて、「月亭一門が13人になりました」と八光が月亭遊方、文都、方正ら一門を招き入れます。「八方」の名を使って祝辞代わりの「あいうえお作文」を行います。その様子を、八方はニヤニヤしながら見守っていました。
「感謝ニュースコーナー」に移ります。八方が50年の間に「感謝したい人」をゲストに迎え、思いを伝えます。1人目は、ぼんちおさむ。八方が大借金を抱えていた際、八方の奥さんが営むスナックでバイトしていたぼんちおさむが、そこで貯めたお金を貸してくれた経緯を披露。おさむ自身の生活も楽ではなかったろうにと気遣い、八方は心底感謝していることを告げます。おさむは「血は繋がっていないけど、大好きなお兄さんの役に立ちたいというのが本音」と、当時の思いを返します。去り際には「おさむちゃんで〜す」のギャグを発し、退席しました。
2人目は、西川きよし。親交の深い2人だけに思い出話に華が咲きます。愛人問題、離婚危機など西川きよしにまつわるエピソードが八方から次々と飛び出し、それは言われたくないといった苦笑いを浮かべながら西川は「こんな話し作ります?」と両手を広げて大げさだと客席に訴えます。それでも「こんな面白い芸人おるかな。東西通じて、こんな面白いのは月亭八方だけやな」と褒め称えていました。この他には、八方の結婚のきっかけを西川が作ったことや、八方が西川家のお墓に入るのを希望していることを語り合い、話が尽きない様子でした。
中入りのあとは、八方による「黒田節」です。鼠色の着物に、萌黄色の袴に身を包み、神妙な面持ちで舞います。
しっとりとした雰囲気になった所で、お祝いメッセージの上映が。藤山直美さんからは家族ぐるみの付き合いがあるならではのメッセージが寄せられ「100歳、200歳と現役で舞台にどうぞ立っていてください」、掛布雅之さんからは「笑顔が1番いい状況判断と決断ができる。そういう笑顔を提供できるお笑いのパワーはすごい」と述べ50年の節目を経ても引き続き、八方ファンの方々にお笑いパワーを届けて欲しいと応援のメッセージを送りました。
締めは、「胴乱の幸助」を口演。先の演目で舞った「黒田節」の解説をし、踊りの一節を取り上げて八方自身の腕・指の短さが振りの決め手に欠けるとしょんぼり。「向き不向きがあるな」と若い頃に習って以来、今回のために久しぶりに演ったと明かします。最近、浪曲を習っていることも枕にして、落語のネタに入っていきます。
趣味は「喧嘩の仲裁」という男・幸助が、浄瑠璃の稽古中で嫁いじめのシーンを練習しているのを実際の話と早とちりしてしまうというお話。登場人物が多く、八方"50年の技"でキャラクターが巧みに演じ分けられていきます。事を収めようと訳知り顔の幸助を演じる八方がトンチンカンなセリフを吐く度、お客さんは大笑い。合間には浄瑠璃で歌い上げる箇所もあり、浪曲を習得した八方の技量が光る場面ありと、終始、見せ場が続くネタです。
上演を終え、八方は見台の横に座り直し深々と一礼。「ありがとうございました」と素直に言葉を述べてから、「こんな男にこんな時間を(割いて)いただいて。『時は金なり』でございます。お金に換えると、すごいお金になると思います」と価値ある舞台だったと、自ら太鼓判を押します。
「50年やらしていただきまして、感謝、感謝でございます。最後に私の感謝の気持ちを、もう1人だけ、みなさん方の前でお伝えしたい」と八方。そのお相手は、これまでを支え続けてきてくれ奥様です。「奥や」と、パンパンと手を叩いて呼び掛けます。なかなか姿を見せず、八方が「奥や」と言う毎にお客さんも手を叩い登場を待ちます。「(落語の)『青菜』ですと、『はい、旦さん』と出てくるんですけど」と同じようにして妻を呼び出す男の話を持ち出して、奥様が来るのを待ちます。息子の八光に後押しされ、ようやく、目に涙を溜めながら奥様が八方の元へ。「一生、この仕事を変えないでいきたい」という気持ちで落語家を選んだ八方が、「売れようとか、儲けようとか言う気がさらさらなかった。ただ、『この仕事を一生続けられたらこれは成功やな』と思った時、続けられたのはやはり嫁が支えてくれていたから」と目標が叶った喜びと、改めて奥様に恩義を感じていることを知らせます。夫婦愛に満ち満ちたステージに向けて客席から大きな、大きな拍手が巻き起こり、感動的な締め括りとなりました。
この後は、タイ・バンコクでの開催も控えています。どのような演目が構成されるのか、こちらの会にもご注目ください!
「芸能生活50周年記念公演 月亭八方 落語誘笑会」
開催日時:12月16日(日) 開場13:30 開演14:00
会場:ヒルトン・スクンビット・バンコク 3Fグランドボールルーム
出演者:月亭八方、月亭八光
料金:1,500バーツ
※全席指定
※未就学児入場不可
※場内飲食不可
チケット販売:
11月3日(土)AM9:00〜
クラブタイランドカフェ(スクンビットソイ35 Tel.02-662-1191)
【月亭八方】