風間杜夫、山内圭哉らの熱演が光る! 舞台「セールスマンの死」公開舞台稽古レポート
11月2日(金)、KAAT神奈川芸術劇場にて、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「セールスマンの死」の公開舞台稽古が行われました。
かつて敏腕サラリーマンだった主人公ウィリー・ローマンの死に至る最後の2日間を描いた「セールスマンの死」は、1949年にニューヨーク劇評家賞、ピューリッツァ賞を受賞し、テネシー・ウィリアムズとともにアメリカ現代演劇の旗手と呼ばれるアーサー・ミラーの地位を確立した彼の代表作。
今回、このアメリカ現代演劇の金字塔ともいえる作品の演出を手がけるのは、劇作家・演出家として意欲的な活動を続け、日本の演劇界の次代を担う長塚圭史さん。出演者に風間杜夫さん、片平なぎささん、山内圭哉、菅原永二さんなど個性豊かな実力派キャストが集結し、現代の日本やその家族にも通じうる、競争社会の問題や親子の断絶、家庭崩壊、若者の挫折感など、第二次世界大戦後に顕著になったアメリカ社会の影の部分を鋭くえぐった本作を、発表から半世紀以上経った今、現代を生きる観客に問いかけます。
主人公ウィリー・ローマン(風間杜夫)は、かつては敏腕サラリーマンだったものの、60歳を過ぎた今ではかつてのような精彩を欠き、二世の社長にはお荷物扱いされています。しかし本人は過去の栄光が忘れられず、今の自分の待遇には不満を持つ日々。
そんな、毎日グチや小言が絶えないウィリーを尊敬し、献身的に支えるのが、妻・リンダ(片平なぎさ)。2人の息子を育て上げ、家族のために働いてきた夫を心から思っている優しく寛大な妻を細やかに演じます。
名作ドラマ『スチュワーデス物語』以来35年ぶりの共演ということも話題になっている風間さんと片平さんですが、35年ぶりの共演とは思えないほど、長年連れ添った夫婦感を自然に表現する2人。あくまでも優しく、慈愛に満ちた眼差しで夫を支えるリンダに対し、夫のウィリーは、仕事や息子たちへのへの不満もあいまって、そんなリンダにまで当たり散らす気難しさや傲慢さを見せますが、どこかチャーミングで憎めない一面ものぞかせます。
夫婦の長男であるビフ(山内圭哉)は、30歳を過ぎても定職に就かず、ブラブラする日々を過ごしています。しばらく遠方の農場で働いていましたが、それも長くは続かず、今は再び実家に戻り、何もしない日々を送るビフ。そんなビフは過去のある出来事を境に父親とうまくいっていないのですが、ウィリーはプライドが高いがゆえに、その後も息子に自分の理想を押し付け続け、そのせいで息子が苦しんでいることには気づきもしません。
実年齢(47歳)と年齢差がある30代の男性を演じるだけでなく、過去のシーンでは10代の高校生役まで演じる山内は、見た目もこれまでのイメージとは全く違う髪型や衣装で、ハンサムな青年・ビフを好演。しかしその見た目からは想像もつかないような深い苦悩も繊細に表現します。
ビフの弟・ハッピー(菅原永二)は、軽薄で女好きな反面、実はいつまでも身を固められないでいる自分に後ろめたさを感じているという一面も見せる男。ときには兄を慰め励まし、またあるときには非難するといった、兄弟ならではの本音のぶつかり合いを好演します。
過去の栄光や現在の自身の境遇への不満、また年齢に合わない負担の重い仕事によるストレスや過労から、徐々に肉体と精神の両方を蝕まれていくウィリー。リンダに励まされて社長に直談判し、仕事内容の改善を要求したり、息子の再就職に希望を見出し、一度は元気を取り戻したかに見えますが、それも長くは続きません。
グチや不満は多いものの、心の奥底にある本当の苦悩は誰にも見せず、ひとりで背負いこむウィリーを気遣い、悲しむリンダ。息子たちもそれぞれの苦悩を抱えながら、行く先にはどんな未来が待っているのかーー。
ウィリーの上司・ハワード(伊達暁)やビフの友人・バーナード(加藤啓)、バーナードの父でウィリーの友人・チャーリー(大谷亮介)、ウィリーの兄・ベン(村田雄浩)など、他にもさまざまな人物が登場しますが、基本は家族4人が感情をぶつけ合う、濃厚な物語である本作。
あるありふれた、理想を抱く愛すべき男の生涯と彼の家族の心象が見事に描かれ、生きるとは、家族とは、幸せとは何か、じっくり考えさせられる本作は、3時間があっという間に感じられてしまうほどの濃密さを持った作品です。
KAAT神奈川芸術劇場での公演は11月18日まで、その後愛知公演、兵庫公演と地方公演も予定されている「サラリーマンの死」。まだご覧になっていない方はぜひ足をお運びください!
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「セールスマンの死」
【作】アーサー・ミラー
【翻訳】徐 賀世子
【演出】長塚圭史
【出演】風間杜夫 片平なぎさ 山内圭哉 菅原永二
伊達暁 加藤啓 ちすん 加治将樹
菊池明明 川添野愛 青谷優衣
大谷亮介 村田雄浩
期間:2018年11月3日(土)~2018年11月18日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
チケット:S席 8,500円 A席 6,000円
※各公演とも開演1時間前より5Fホール当日券売り場にて販売
公式HP http://www.kaat.jp/d/DeathOfaSalesman
<愛知公演>
2018年11月29日(木)・30日(金)
東海市芸術劇場 大ホール (愛知県東海市)
■お問合せ メ~テレ事業 052-331-9966(祝日を除く月-金10:00~18:00)
<兵庫公演>
2018年12月8日(土)17時・9日(日)12時
兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール(兵庫県西宮市)
■お問合せ 芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255