映画『銃』オールナイト上映×トークイベント「狂気を偏愛する映画たち」開催
11月17日(土)に初日を迎える映画『銃』、その公開を記念したオールナイト上映×トークイベント「狂気を偏愛する映画たち」が10日(土)、テアトル新宿で行われました。
当日は『銃』に縁とゆかりのある3作品『GONIN』『トカレフ』『タクシードライバー』を一挙に上映。『銃』のメガホンを取った武正晴監督、『トカレフ』の阪本順治監督が登壇して作品の裏側とこだわりを語り、アクション女優である屋敷紘子さんがMCを務めました。
テアトル新宿は『トカレフ』が24年前に公開された劇場で「こうやって24年経って、もう一度フィルムで観てもらえるのは光栄です」と感慨深げな阪本監督ですが、「その年の興行成績ワースト2っていう本当に名誉な映画」と笑いを盛り込み、関西人らしいサービス精神も忘れません。
当時公開初日にテアトル新宿で『トカレフ』を観たという武監督は、「『銃』も『トカレフ』のように24年後、同じ劇場に監督とともに帰ってこられる幸せな映画になってくれないかなと思ってます」とフォロー。ともに井筒和幸監督の助監督を務めていた共通点を持つ2人、同時に助監督を務めたことこそないものの「まぁ、"井筒一門"みたいな」(阪本監督)と勝手知ったる間柄で、和やかにトークもスタートします。
この日最初に上映された『GONIN』は石井隆監督作で、武監督が「監督助手」としてクレジットされた作品。佐藤浩市さん、本木雅弘さん、根津甚八さん、竹中直人さん、椎名桔平さん、北野武さんといった豪華キャストが並ぶ本作を、武監督は「松竹の潤沢な予算で大掛かりに、修業時代としてはものすごくよい修業をさせてもらったことを覚えています」と懐かしみます。また、後に『銃』の監督となることを予見するように『GONIN』では鉄砲を担当し、クライマックスとなる銃撃戦の前に本木さんに鉄砲を手渡した、といった逸話も披露されました。
どちらも登場人物が銃を拾うことから物語が始まる『トカレフ』と『銃』ですが、「当時は暴対法の締めつけがすごくて、暴力団員がどんどん廃業していた時代。廃業するにあたって銃を河原とかコインロッカーとかどこかへ捨てなきゃいけなくて、そういうニュースが度々耳に入ってきたんです。そういうところからひらめきを得ました」と、阪本監督は『トカレフ』の着想を語ります。
両監督から当時は銃が売られていた、という生々しい発言もあり、阪本監督が『トカレフ』用に薬きょうが飛び散る銃を作ったら30万円掛かったのに、本物の銃は3万円で売られていたという苦笑いするしかないエピソードも明かされました。
やはりどちらも『トカレフ』『銃』というタイトルの作品を手掛けただけに銃へのこだわりは人一倍強いようで、銃話はさらにエスカレート。話はビジュアルだけでなく"音"にもおよび、『トカレフ』の銃声を武監督は「ものすごく生っぽい音というか、リアリズム」と褒め称えます。その上で自身も、「街に響く音を取っておきたい」思いがあったとのことで「かなりフィルムコミッションの人に怒られました」と苦笑交じりに語った銃声が、『銃』でも聴きどころの一つとなっています。
トークの終盤では武監督が「ちょうど僕が映画界でウロウロし始めた頃、助監督から新人で阪本さんが希望の星として『どついたるねん』という作品でパッと出てきて、しかも映画がめちゃくちゃ面白い。それで僕らは"頑張ればこういう風になれるのかな"と思ったのが『どついたるねん』という作品で、阪本さんという存在でした」と映画人として駆け出しの頃を振り返りつつ思いを吐露。
「いや、本当にこれがなかったら多分もう今やっていないでしょうね。こういう作品にちょっとでも追いつきたい、『タクシードライバー』みたいな世界に入っていきたいとか、そういうところでギリギリ踏ん張っていたところがあるので」と続け、思い入れ深い阪本監督との記念イベント開催にこちらも感慨深げな様子でした。
この後、残念ながらイベントには出席なりませんでしたが、『GONIN』の石井隆監督が寄せてくれたプレゼントをめぐり大じゃんけん大会を実施。
トークの最後で武監督は「これから観てもらう『GONIN』『トカレフ』『タクシードライバー』は、僕が『銃』という映画を作るにあたりエッセンスが体に染みているもの」と3作品の影響を強調。阪本監督も『トカレフ』の現像処理で色合いに細心の注意を払ったこと、『銃』が画面サイズにまでこだわり作られていることを語り、『トカレフ』の上映が真夜中になることから「もし寝たらDVDで見直してください(笑)」と再びサービス精神を発揮し、イベントを締めくくりました。
『銃』は11月17日よりテアトル新宿ほか全国ロードショー。