インドネシアで人気のミュージシャン加藤ひろあきが母校・東京外語大で講演!
インドネシアで人気を誇るミュージシャンで、タレントの加藤ひろあきが11月24日(土)、自身の母校である東京・府中の東京外国語大学でトーク&ミニライブを行いました。2008年に東京外国語大学のインドネシア語専攻を卒業した加藤は、ミュージシャン・俳優・MC・翻訳家・通訳など、インドネシア・ジャカルタの芸能界で「日本人」として活躍多岐にわたって活躍中。今回のイベントは、同大学で開催中の「第96回外語祭」に合わせて実施されており、会場には大勢のお客さまが来場しました。
会場にやってきた加藤は「学生時代に授業を受けていた教室で、マイクをとってお話をする日が来るとは感無量でございます」としみじみした様子。「この教室の思い出は『26言語リレー講義』。東京外語大では26の言語の専攻があって。そこからひとつ選んで選択するわけですが、それ以外の言語にも触れてみたいという人のために『26言語リレー講義』というものがあった。それがこの会場でした」と懐かしそうな顔を見せました。
まずは加藤の簡単な略歴を紹介。2013年にインドネシアで話題を集めたお笑い芸人COWCOWの「あたりまえ体操」のインドネシア語翻訳を手掛ける一方で、インドネシアのベストセラー小説「Laskar Pelangi」を上智大学の福武慎太郎氏と共同で翻訳。「虹の少年たち」(サンマーク出版)として出版しました。そして2014年からは活動の拠点をジャカルタに移し、ミュージシャン活動の傍ら、旅番組のレポーター、クイズ番組の司会など、精力的に活動してきました。
この日の講演は「東京外国語大学で学んだこと」「外国の芸能界から見た日本」というテーマで実施。インドネシアのバラエティー番組に出演する際に求められる日本人像として「お辞儀」「はい! という返事」「片言のインドネシア語、もしくは日本語」といったものがある、と切り出した加藤は、「もともと僕はインドネシア語が流ちょうなんですよ。ネイティブに近い発音ができるタイプなんです。でもインドネシアのテレビに出るときは、日本人らしいインドネシア語、日本人らしい英語が求められる。それから何かを言ったら「お辞儀して」「"はい"と言って」ということが求められる。イメージとして求められることはけっこう簡単なことなんだなと思いました。クールジャパンで日本のいいものを出していこうということがありますが、時に難しく考えすぎたり、現地のニーズに応えられなかったり、イメージがずれてしまうようなことが頻繁に起こります。そういうのは考えすぎということから生まれることだと思います」。
また、「外国から見て、日本という国で第一に言われるのは、非常にすばらしい旅行先であるということ」と語る加藤は、「四季もあるし、場所によって見える景色もかなり変わる。テレビを作る人はそれを意識しています。観光客もものすごい勢いで増えていますし、日本にインドネシアの人に来てもらいたいと思っているんです」と解説。さらにインドネシアで人気の日本のコンテンツとして「(NHK朝の連続テレビ小説)『おしん』は強いですね。今でも再放送をやっています。それから『風雲たけし城』もすごい人気です。それから五輪真弓さんの『心の友』という楽曲もそう。アルバムの楽曲などで、あまり知られていない楽曲なのに、他国では僕らの知らないうちに流行っている曲というのがあるんですよね。それから『侍、芸者、舞子さん』というのはよく知られていますが、アイドル、お笑いも頑張っています」。
日本のコンテンツはインドネシアでも人気を集めていますが、ここ数年はK-POPや韓流ドラマなど、韓国のエンタメが人気急上昇中。加藤も「やはり韓国は、国家規模で文化の支援をしているので、非常に強いんですよ。エンタメなどのソフト面で知ってもらってから、国に来てもらおうという戦略がハッキリしています」とその勢いを感じることも多い様子です。そこで「エンタメに限らず、日本のことを好いてくれる新しいファンを創出しないといけないと思うんです。インドネシアの人も、全員が日本の事が好きというわけではなく、興味がない人だっています。そうした人にどうやって日本に興味を持ってもらうのか。そういった取り組みは必要です」と提言する加藤。さらに「教育・留学」「日本語パートナーズ」といった取り組みを通じて、日本に触れてもらうことの重要性も力説します。
さらに「芸能やエンタメは、違った国のさまざまな価値観や寛容性を育み、そこから(両国の)ハードルを低くすることができるんじゃないかと思っている」と続けた加藤は、「僕はアジアの娯楽を紹介することで摩擦をなくしていきたいなと思っているんです。だからインドネシアの小説やポップスを訳して、親しみやすい形で提供したいと思っているんです」とコメント。そして「そんなことはあって欲しくないなと思いますが、もし両国の関係性が悪化するようなことがあるならば、それを食い止めるアイコンになりたいなと思っているんです。加藤は憎めないヤツだから、日本のことも嫌いになれないと。そう思ってもらえるように活動していかないといけないなと思う今日この頃です」と決意を語る加藤でした。
そしてその後は会場からの質問コーナー。そしてギターの弾き語りで生ライブを披露しました。まずはファーストアルバム「Hiroaki Kato」に収録された「涙そうそう」。「この曲のメッセージはインドネシアの人にも届くんじゃないかと思いました。今年の沖縄国際映画祭で、(作詞・歌唱の)夏川りみさんと、(作曲の)BEGINさんと歌わせていただいた思い出があります」と語った加藤は、インドネシア語と日本語の両バージョンを交互にミックスさせながら歌を披露しました。
続いて加藤が披露したのは「Laskar Pelangi」。これは上智大学の福武慎太郎氏と共同で翻訳した書籍「Laskar Pelangi(虹の少年たち)」の映画化作品の主題歌です。「これはインドネシアの実話に基づいた話。貧困層の子どもたち10人が廃校寸前の学校に集まるところからこの映画のストーリーは始まります。学校に来ることが当たり前じゃなかった子どもたちが学校に来て。学校に来ることで"明日""来週""来月""未来""夢"という言葉を覚えます。校長先生は子どもたちに、夢はあきらめてもいいけど、夢を持つことはあきらめるなと伝えます。経済的な理由で夢をあきらめなければいけない子もいました。しかしその子たちは夢を持つことはあきらめなかった。そしてその10人の子どもたちのうちのひとりが夢をかなえて、ソルボンヌ大学に入学して。そして故郷であるその島に帰ってきます。その人の名前はアンドレア・ヒラタという小説を書いた作者本人です。夢をあきらめなかった子どもたちの話です」。加藤はそう背景を説明します。
そして最後に披露したのは加藤のオリジナル曲「テリマカシ」です。「"テリマ"は"受け取る"、"カシ"は"愛情"という意味で。愛情の交換が"ありがとう"という素敵な意味になります。ぜひ覚えて帰ってください」という加藤。会場のお客さんも加藤と一緒に「テリマカシ」と合唱するなど、大盛り上がりのうちにこの日のイベントは幕を下ろしました。