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2019年1月17日 (木)

「『市民映画というものがあることを知ってほしい』この世界の片隅に上映会&トークショー」

1月16日(水)、沖縄県の大宜味村立旧塩屋小学校(大宜味ユーティリティーセンター)で、「この世界の片隅に」上映会&トークショーが行われました。
これは文化庁が主催するメディア芸術の祭典「文化庁メディア芸術祭 やんばる展」のプログラムの一環で行われたものです。

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第二次世界大戦中の広島を舞台に、人々の暮らしを繊細に描いた「この世界の片隅に」は、2016年の公開から未だに上映が続いているほどのロングラン作品で、トークショーには主人公すず役を務めた女優のんさんと、プロデューサーの真木太郎さんが登壇しました。

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映画の制作中の感想を聞かれ、のんさんは「方言が大変だった。広島弁、と一口に言っても、少し古い言葉を使っていることや、兵庫県出身なので(場所が近いから)文字にすると同じになる単語もあるけれど、アクセントが違っていたりするので、普段から広島弁を使うようにして慣らした」と語り、「10代でお嫁入り、という当時の生き方を、すずさんだったらどう感じるのかを考えて演じた」と答えながらも、「声優は難しい。演じる事だけに集中すると周りとちぐはぐになるし、リアルを追求しようとするとのっぺりして嘘っぽく聞こえてしまう。どう話せばすずさんを成立させられるのか考えながら演技したので、とても勉強になりました」と振り返りました。

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謙遜するのんさんに対し、真木さんは「のんちゃんの演技が素晴らしいので、すずさんが実在してもおかしくないほどの存在感があるように仕上がった」とべた褒め。その後、「今生きていれば93歳になっているすずさん。当時は恋愛結婚なんて少なくて、『あそこに嫁に行きなさい』と言われるのが普通だった。そして嫁ぎ先では労働力になるのが当たり前で、その当たり前の普通の生活が描きたかった。戦争のせいで普通の生活が苦しくなってくるのだけど、ご飯を炊いたり、洗い物をしたり、普通の生活をおくらなきゃいけない。『当時はこうだったんだ』という思いと、『さほど今と変わらないじゃないか』という思いどちらも感じてほしい」と語りました。また、「この映画はクラウドファンディングという単語が日本に浸透する前に、クラウドファンディングを使って作った映画。3000人以上の方に応援してもらって、できた映画は地味な仕上がりだったが、映画館で見てくれた方々がSNSで広めてくれ、多くのお客様に見ていただけることになった。業界の人たちがエンタメを作ろうとしたのではなく、『こういう映画があったほうがいい』『この映画は見たほうがいい』と発信したのがみんな一般の人なので、こんな『市民映画』というものがあるんだということを知ってほしい」と、映画について熱く語りました。

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映画を経験した後、変わったことについて聞かれたのんさんは「ごはんが美味しくなりました」とはにかんで答え、「この映画に携わるまで、自分の一番好きな食べ物はポテチだったんですけど、映画ですずさんを演じてからは『すずさんみたいに作ってみよう』とごはんを作るようになったので、ポテチ1位がゆらいできました」と素直な感想を話し、会場にあたたかい雰囲気を生んでいました。


また、沖縄は地上戦を経験したということもあり、描かれているのが第二次世界大戦中だということをどう感じるかと聞かれ、のんさんは「今までは漠然と『戦争のあった時代は怖い』と思っていて、自分から見ることはなかったけれど、すずさんの目から見ると、普段の生活を通して戦争が見えてくるので共感できる。戦争は自分が思っていたより遠い次代ではなかったことがわかった。外に追いやっていた恐怖が、ちゃんと自分の胸におちてくるような感じがした」と延べ、司会を務めた琉球放送の狩俣倫太郎アナウンサーは「のんさんがそうやって今の人たちに向けて(戦時中を)翻訳してくれたから、若い人に見てほしいですね」と応えていました。真木さんは「これを戦争映画ととらえるか、当時の日常ととらえるか、なんです。日常がどれだけ大切なのかを思い起こすことで、これ(日常)が侵されるのを許してはならない、と思うことにつながる」と話し、平和な時代に忘れがちな日常の大切さを説きました。

また、真木さんは原作には描かれているけれども時間の関係で本作に入れることができなかったエピソードを、約30分ほど追加した『この世界のさらにいくつもの片隅に』の製作中であることを話し、「ディレクターズカットとは違う、キャラクターそれぞれの生き方に焦点を当てて描いていくもので、今年中には公開予定です」と述べ、会場を期待で沸かせました。

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最後に観客の皆さんに一言を求められ、のんさんは「(この映画は)生きる、という事に涙が溢れてくる作品。『生きていく』ということ自体がこんなに力強いものなんだと感じてほしい。また、すずさん達と『元気に生きていこう』という気持ちになってくれると嬉しい。じっくり映画をご覧ください」と話し、真木さんは「それぞれのお客さんが『この映画は自分のものだ』と思える映画もあるんだ、ということを知ってくれると嬉しい」と述べ、トークショーを締めくくりました。


トークショーの後、フォトセッションが行われ、観客にも撮影の時間が設けられたため、のんさんと真木さんは観客から声をかけられたほうに振り向くなどファンサービス。大きな拍手に見送られて会場を退席しました。その後映画の上映が行われ、老若男女多くの方で埋まった客席からは真剣なまなざしがスクリーンに向けられていました。

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「文化庁メディア文化祭 やんばる展」と、同時開催の「やんばるアートフェスティバル2018-2019」は1月20日(日)まで、大宜味村立旧塩屋小学校をはじめ、やんばる(沖縄本島北部地域)の各地で開催されています。