6月17日(月)、東京・ルミネtheよしもとにて『エクセレント!!~言葉が無くても届くもの~』が開催されました。
こちらは、マンボウやしろ脚本・演出による作品。ライスが主演を務め、2012年4月18日(水)から23日(月)までに東京・神保町花月にて「マンボウやしろ襲名記念公演」として『エクセレント!!』は初演されました。オリジナルキャストはライスほか、グランジ・五明&下條、かたつむり・林、カゲヤマ、ランパンプス、工藤史子、伊藤真奈美(THEフォービーズ)。当初、チケットの売れ行きはまずまずといったところでしたが、口コミで日に日に来場者が増え、千秋楽は当日券も早々に完売。拍手喝采のなか、幕を閉じました。
その後、今年1月19日(土)、20日(日)の2日間、『エクセレント!!~言葉が無くても届くもの~』とタイトルを改め神保町花月にて再演。今年4月2日(火)に仙台、3日(水)に福岡と地方公演も敢行したのち、このたび、オリジナルキャストにてルミネにてラスト公演を行うことになったのです。
舞台となるのは、あるオモチャ工場。次男のスグル(ライス・関町)は、3年前の4月1日に突然、学校を自主退学。当時付き合っていた彼女のナミ(工藤)を振り、それ以来、ニート生活をおくっています。いつも一緒にいるのは、亀のかめじろうと常につきまとっている名前の知らない男の子。スグルが「お前の名前は?」と訊ねても、彼は「俺は~~~俺だ!」と答えるだけです。
両親(父:五明/母・伊藤)には横柄な態度を取り続け、常に自分を想ってくれるナミには「付き合おうか?」と心にもないことを言ってのけるスグル。ナミに好意を持つ金持ちの息子・マダラ(下條)に難癖をつけられ、力任せに殴られても一切抵抗はしません。工場で指揮を執る父が発する、仕事終了の合図「エクセレント!!」。かつては大好きだったその言葉にさえ、嫌悪を感じているのです。
かろうじて存在はしているけれど、感情の全てを閉ざしてしまったスグル。なぜスグルがそうなってしまったのか? それは、敬愛していた兄・セイヤの死が関係していたのです――。
初演当時、やしろとライスが取材を受けたニュース記事によると、2010年にこの物語はできていたとのこと。やしろは2011年9月にコンビ「カリカ」を解散以降、失った悲しみとそれを凌駕するほどの大きな愛や先祖からまだ見ぬ子孫への絆などをテーマにした公演を数々行なっていた印象が強く残っています。
本公演も然り。
兄の死を受け止められず、ひとり苦しむスグルを責めるわけでも怒るわけでもなく、ただただ静かに守り続ける両親、ナミ、工場で働く人々……。20歳の誕生日当日、自暴自棄になるスグルにも、それぞれはそっと寄り添うのです。日だまりのように温かくも揺るがない大きな大きな愛情が、今作にも満ちあふれていました。
されど、芸人によるお芝居。もちろん笑いも忘れていません。マダラ扮するグランジ・下條の愛国心たっぷりの演説(?)、かたつむり・林によるランパンプス&カゲヤマへのムチャぶり、両親が従業員、そしてナミとゲーム「ワニワニパニック」を使用した会話など、笑いどころは満載。劇中、客席からは幾度となく大きな笑い声が起こっていました。
物語の終盤、スグルと接する人々が発するのは「エクセレント」という6文字のみ。どんな言葉も「エクセレント、エクセレント」というふうに紡いでいくのです。今作の副題は「言葉が無くても届くもの」。愛情や思いやりは、本来、言葉がなくても通じ合えるものなのかもしれません。「エクセレント」としか発しなくても、彼らの話したいことはダイレクトに伝わってきました。
心を閉ざしていたスグルも、彼らの「エクセレント」という言葉、そしてかつてビリビリに破ってしまった兄・セイヤからの手紙を読み、自分自身を取り戻します。
スグルと周囲の人々の心が触れ合ったとき、彼らのオモチャづくりはまるでオーケストラのように素晴らしい音色を奏でるのでした。
一礼する出演者陣に向けて客席から響く、大きくて力強くて温かい拍手……。止まない賞賛の拍手を下條がぶった切るようなポーズでひとまず止め、主演のライスが出演者を紹介。そして、脚本・演出を務めたマンボウやしろを呼び込みました。
マンボウポーズで挨拶したやしろは「ファッションショー終了後のデザイナーみたいで恥ずかしい」と照れつつ、「スタッフさんに最後だから出ていいですよと言われてもどうしようかなと悩んでいたけど、後ろで観てたら、どこまでが台詞なのか説明しないとと思ってきた。(下條のアドリブ芝居での)演説もそうだけど、(かたつむり・林とカゲヤマ・田畑のやりとりで生まれた)“地球はなんで青いの?”“泣いてるから”なんて書いてない。俺の手から(脚本が)離れすぎてる!」と出て来た理由をまくしたてます。
ラストシーンは通常、田所バージョンと関町バージョンのどちらかが行なわれるのですが、「千秋楽などの特別な日は両方やっているということで、今日も両方やりました」とも説明。言葉はなくとも、音楽に合わせてスグルの感情を表す2人の演技に、感極まるシーンです。
「今日はビックリしたことがあった」と切り出したのは、田所。序盤に関町とトランプでポーカーをするシーンがあるのですが、配られたカードを見ると、スペードの8、9、10、11、12の“ストレートフラッシュ”が揃ってたそうです。「新しいトランプじゃないし、リハでもちゃんと切ってるのに。動揺して台詞が飛びそうになりましたよ」と笑います。「ゲームに関して何かある舞台なのかなと思った」と感慨深げな相方に反して、関町の手元にあった5枚は「2のワンペアのみ」だったそうです。
締めを任された関町が「今日の公演で、2000人以上の方がこの舞台を観てくれたみたいです」と告げると、お客さんからはまたもや大きな拍手が。「今回で最後ですが、またどこかでお会いできたら。そのときはまた足を運んでください」ときれいに締められる流れだったのに、なぜか吹き出してしまうやしろ。結局、カゲヤマ・益田の一発ギャグで、本公演は幕を閉じました。
幕が締まっても鳴り止まない拍手――。素晴らしい物語と演じた出演者陣を讃えるように、暗闇の中でいつまでも鳴り響いていました。