テーマは「人工知能 VS. 伝統芸能」!? 恒例「88桂文珍独演会」今年も8月8日に開催決定
桂文珍が毎年8月8日に開催している吉例「88桂文珍独演会」が、今年もなんばグランド花月にて開催されます。34回目となる今回は、能楽師の茂山宗彦さん・逸平さん兄弟が特別ゲストとして出演。「人工知能は伝統芸能に勝てるのか」という意味深なサブタイトルも注目を集めるなか、7月6日(水)に記者会見が行われ、文珍自ら詳しい内容や演目、意気込みなどを語りました。
「何を着て来ようか、スーツでは謝罪会見のように見えるし...と思いまして」と、背中に艶やかな鯉が踊る衣装で登場した文珍。襟にあしらわれたラインを示し、「ソフトバンクと鯉、調子のいいものにあやかろうと決めました。阪神の低迷は思った通りでございます」と、さっそく笑いを誘います。
まずは特別ゲストの茂山さん兄弟について、「なんばグランド花月で初めての狂言の舞台。狂言は、笑いのベーシックなルーツとも言える。私も勉強させていただきたい」と紹介。一度、東京での独演会にゲスト出演してもらったことがあるそうで、「落語を好きな客層と非常に合う。一緒にやれるお仲間かな、と思った」ことが、今回のオファーのきっかけにもなったようです。また、開口一番は桂文五郎が務めることも発表されました。
演目は、文珍の"別キャラ"桂珍幻彩で「定年の夜」、そして「へっつい幽霊」「船弁慶」の三席。「『船弁慶』は、師匠である五代目桂文枝がよくやっていたネタ。その火を消してはいけないと思い選びました。『へっつい幽霊』は、幽霊と博打をするという面白い噺です」と文珍。新作「定年の夜」は、今年春、定年を迎えたのであろう花束を持った男性を街で見かけたことから思いついたとのことで、こちらにサブタイトルにある「人工知能」が絡んでくるようです。
文珍は、「今は人口知能がどんどん進化し、学んでいく時代。2045年には、人工知能が人類を上回るという話もある。落語をはじめとする笑いの世界の人間が人工知能に負けて、なんばグランド花月の出番を取られる、なんてことが起こるかも...」と話し、「『人工知能に使われる人間』とは、まさに『人工知能池地獄』。苦しむ側にまわるのか、それとも...といったことを考えました」。定年になったお父さんが花束を持って帰宅するも、家族はスマホをいじったままで反応薄。そんな設定から、やがてスマホの中に体ごと入り込み、メディアの海に行き着いて...というあらすじも明らかに。さらに「芥川龍之介の『蜘蛛の糸』のような世界」も描かれるネタで、「非常に実験的な作品」と説明しました。
ちなみに今回のテーマについて取材すべく「ソフトバンクへ行って、ロボットのPepperと面談した」ことも告白。人工知能の"いま"を体感した感想は、「まだ大丈夫(笑)」。一方で、Pepperはなんと文珍の前で小噺も披露したとか。「(Pepperは)よくできてるけど、息が悪いんです。『息が悪いがな』と言うたら、『息してません』と返されました」と笑わせていました。
質疑応答では、演目について質問が。「『へっつい幽霊』を今、口演するのは何故か」という問いには、「亡くなった(笑福亭)松喬がよくやっていたから、遠慮してたんです」と回答。「彼には彼のやり方があるし、東京では(桂)三木助師匠もよくやっていた」というこのネタを、今回は「ちょっともたもたしているところを整理して、コンパクトにした」文珍スタイルで。「"へっつい"というのがわかりにくい時代なので、そういうのをまくらに振りつつ、スッと入っていこうかな」と構想を語ります。
「船弁慶」については、「やっていると、どうしても親父(五代目桂文枝)が出てくる。それはなかなか抜けません」としみじみ。「でも(文枝は)トーンが高いから、疲れると松鶴師匠に変えたり(笑)。いろんなことできて面白いネタ。上方落語の財産ですから、やらせていただく以上は、正面から向き合いたい」と話していました。
また、サブタイトルは「定年の夜」だけでなく、独演会全体のテーマでもあるそう。文珍は「落語などの生の話芸は、お客さまとの呼吸をはかりながら合わせていくもの。そういうことが、人工知能にはできないと思う。彼らのできないことを追求していくことが、生き残る道では」と持論を展開し、自身の「デジタル観」についてきかれると「スマホはものすごい便利な反面、いらんつながりもできてしまう。火やカミソリと同じく使い方次第」とクールに答えていました。
【桂文珍】
吉例 第三十四回 88桂文珍独演会
日時:8月8日(月) 18:30開場 19:00開演
会場:なんばグランド花月
文珍演題 「定年の夜」(桂珍幻彩)
「へっつい幽霊」
「船弁慶」
特別ゲスト 狂言 茂山宗彦 茂山逸平
開口一番 桂文五郎
料金:前売・当日とも4500円(全席指定/未就学児のご入場はご遠慮願います)
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