ソーシャルビジネスをお茶の間に! ユヌス・よしもとソーシャルアクション概要発表会見
3月28日(水)、東京・日本外国特派員協会(FCCJ)にて、「ユヌス・よしもとソーシャルアクション概要発表会見」が開催され、ムハマド・ユヌス氏、ユヌス・よしもとソーシャルアクション株式会社 代表取締役社長・小林ゆか、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授・中村伊知哉氏、「ビリギャル」著者 / 坪田塾塾長・坪田信貴氏、吉本興業株式会社取締役 / エリアプロジェクト統括担当・泉正隆、福島県住みます芸人・ぺんぎんナッツ、ゆりやんレトリィバァが登壇しました。
バングラデシュの経済学者で2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏と、ユヌス氏が提唱する「ユヌス・ソーシャルビジネス」の実践と普及に向けて提携することで合意した吉本興業。2018年2月1日には、100%子会社の「ユヌス・よしもとソーシャルアクション株式会社(yySA)」を立ち上げ、 具体的な事業の準備を進めています。
その事業概要の発表の場となった本会見。まずはユヌス・よしもとソーシャルアクション株式会社 代表取締役社長・小林ゆかより挨拶が行われました。
よしもとでは、2011年より全国47都道府県に芸人が移住する「住みます芸人」の活躍により、地域活性化に力を入れてきたことや、2015年にはアジア6カ国でも芸人が活動していることなどを説明した上で、このような住みます芸人たちが現場で向き合った地元の課題を、スタートアップ企業の方々の、全く違う視点や新しいアプローチとマッチングすることが課題解決への道となるのではないか、という思いで具体的な向き合いの場作りを始めることにしたと話す小林。
また、ムハマド・ユヌス氏とともに「ソーシャルビジネスをお茶の間に届けたい」と考え、ソーシャルビジネスを大衆化し、近所のおじさんおばさんにも浸透するようにしたいと明かします。さらに、よしもとが得意とするエンターテインメント=「笑い」の力があれば、その概念や手法を日本やアジア、世界の人々の生活文化に定着させることができるはずだとし、エンターテインメントの力を使って社会問題を解決したいと今後の展望を語ります。
続いて行われたムハマド・ユヌス氏の挨拶では、先ほど行われた「ユヌス家族会議」がとてもよく、感動したと話した上で、ソーシャル・ビジネスについて、「さまざまな課題があると思いますが、いわゆるプロの知識ではなくて、地域の人たちと一緒に考えて実践していくことは重要なこと」だと話し、「そういった観点からも、47都道府県の住みます芸人という地域活性化のシステムはすばらしい」と評価します。その上で「ともにみんなが力をあわせ、楽しく、そして的確に問題に取り組むことで、資本主義のシステムを乗り越え、全く新しい手法を使って社会をよりよいものにしていきたいと思います」と意気込みを述べていました。
さらに、「ユヌス家族会議」の紹介と、それを受けて今後の取り組み・展開を紹介することに。
吉本興業株式会社取締役 / エリアプロジェクト統括担当・泉正隆は、「住みます芸人」について「東京にはメディアが集中しているため、芸人も東京に集中しています。地方に若者が少ないという状況を少しでも改善するために、地元を元気にしたいと思っている地方出身の芸人を募り、1組ずつ47都道府県に置くことにしました」と、「住みます芸人」をスタートさせた経緯を説明。「現在は全国に121人の住みます芸人がおり、800のプロジェクトを立ち上げ、映画を83本製作し、ふるさと劇団を58団体旗揚げしました」と、これまでの実績を明かした上で「今回、yySAを始めるにあたり、住みます芸人から地域の課題を挙げてもらったところ、350もの課題が挙がってきました。今後は地域の方と一緒になって、地域に貢献しながら地域の課題解決をしていきたいと思います」と今後の意気込みを語ります。
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授・中村伊知哉氏は、先ほど行われたユヌス会議について、全国の住みます芸人が課題を発見し、報告したものの中から、3点の課題について、芸人3組がコメディでその問題をプレゼンテーションし、スタートアップ企業からさまざまなアイデアが出たと、そのアイデアの具体例を挙げながら説明し、「社会問題を面白くすくい取って、みんなで解決法を考える、そのキックオフミーティングでした」と記者に報告します。
「ビリギャル」著者 / 坪田塾塾長・坪田信貴氏は、スタートアップ企業の代表者として、今回の事業について、「ユヌス氏、よしもと、地方の人々、スタートアップ企業がみんなで社会問題を解決しようというものだと思っています」と話します。また、「ソーシャル・ビジネスは社会問題を扱うため、なにかと重くなりがち。でも"明るく楽しく"やっていくのが大事だと思う」と話す坪田氏。さらに「芸人のコミュニケーション能力の高さをビジネスに使うと成功しやすい」とも話し、具体的なビジネスモデルを例に挙げ、みんなが楽しく社会問題を解決できる可能性を提示していました。
続いてはぺんぎんナッツ&ゆりやんレトリィバァ。福島県の住みます芸人・ぺんぎんナッツは「高齢化、少子化、高齢者の孤独の問題、商店街後継者問題」と、問題が山積している福島の現状を報告し、「みなさんの知恵を借りながら、その地域に住んでいる芸人として、今後も一生懸命問題に取り組んでいきたいと思います」と改めて意気込みを見せます。
一方のゆりやんは「上戸彩です」と自己紹介したりと会場中を笑いに誘いますが、以前、奈良県の住みます芸人だったことに触れ「私も地域の後継者不足を実感したことがあります」と神妙な顔で話します。しかし次の瞬間、「どうやったら人手不足が解消できるか、もしかしたらわかるかもしれません......」と言い出し、やにわに床に何かの計算式を書き出す(フリをする)ゆりやん。しばらくしてから「......まったくわかりません(笑)!」と言い、またもや会場を笑いに誘っていました。
最後にユヌス氏が、「芸人は非常にパワーを持っています。芸人のパワーを生かして、問題を解決していくことが大切ですし、住みます芸人は地域の物事を変えることができると思います。日本の社会問題は、日本だけの問題ではありません。こういった活動は他の国にもヒントになるのではないかと思います」とコメントしていました。
続いて行われた質疑応答では、「政治の世界にも芸人が必要なのでは?」という質問に対し、ユヌス氏が「ソーシャル・ビジネスは純粋に社会を変えるために立ち上げているもの」と話した上で、「資本主義のシステムは単なる機械。しかも今では富裕層が資本を吸い上げるというひどいシステムになってしまっている」とし、「必要な人に富がいき渡るシステムに機械を修理する必要がある」と話します。
「具体的な成功事例を教えてください」という質問には「立ち上げたばかりなので、まだ成功事例はない」としながらも、「学校生活ではうまくいかなかった人たちが個性を発揮して、地方からスターになる仕組みをずっと作ってきた会社がよしもと。そういった意味では、ソーシャルビジネス的なことを昔からやってきたとも言えると思います」と話す坪田氏。さらに、「だからこそソーシャルビジネスにシフトし、それにエンターテイメントとメディアの力を乗せてビジネスとして成功するのはそんなに難しいことではないのかなと思う」と見解を述べていました。
「バングラデシュでのソーシャル・ビジネスに、日本でのソーシャル・ビジネスをやる上でのヒントはありますか?」という質問には、ユヌス氏が「バングラデシュでやっているソーシャル・ビジネスの考え方を日本でも実現することは可能です」と、具体例を挙げながら回答していました。
これまでの取り組みをパワーアップさせ、"楽しみながら"継続させる仕組みを作っていくユヌス・よしもとソーシャルアクション株式会社の今後の活動にご注目ください!
【ぺんぎんナッツ】【ゆりやんレトリィバァ】