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2018年12月28日 (金)

「ウケないなぁ、おい」奥田瑛二さんがギャグを言う?! 映画「洗骨」舞台挨拶

12月17日(月)、沖縄・那覇市のシネマQで照屋年之(ガレッジセール・ゴリ)監督の長編2作目「洗骨」の公開記念プレミア試写会が行われました。

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「洗骨」は、沖縄の離島、粟国島を舞台に、亡き人を風葬し、肉がなくなり骨だけになった頃に対面し、骨を洗い、あの世に送り出すという独特の風習に焦点を当て、"親から子への生命のリレー"、"家族の再生"を描いた作品です。これまでにモスクワ、上海、ハワイなどの国際映画祭で高い評価を受け、8月に開催された北米最大の日本映画際「第12回JAPANCUTS」で28本の作品の中から見事観客賞を受賞しており、今回満を持しての試写会となりました。

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試写会の前に行われた舞台挨拶では、照屋監督、出演した奥田瑛二さん、筒井道隆さん、水崎綾女さん、山城智二さん、古謝美佐子さんが登壇しました。照屋監督が「沖縄の皆さんに喜んでもらえる作品ができたと思う。1日でも早く見てほしかったので、今日という日が来たことを嬉しく思います」と真面目な挨拶をしたかと思うと、山城さんに「実は山城さん出てないんですよ」とギャグをとばし、水崎さんが「そうそう。この人、出演者のふりして勝手に舞台挨拶に入ってきたんですよ」と相槌を打ったり、古謝さんに「美佐子さんは砂かけババアの役で出てもらっています」と声をかけるなど、客席に笑いを生み出し、ゴリらしい面ものぞかせていました。

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その雰囲気を引き継いでか、マイクを渡されて最初の一言に「沖縄の皆さんに喜んでもらえる作品ができたと思う」と、照屋監督と全く同じ言葉をしゃべる奥田さん。しかし周り全員、真面目に受け止めたほうがいいのか突っ込んだほうがいいのか判断できず、結局奥田さんが「ウケないなぁ、おい」と言ってやっとその場を締めくくることに。照屋監督の挨拶の中に出てきた「今までに見たことがない奥田さんを見ることができると思います」とはこういうことだったのか?!と含みを持たせます。

映画が始まると、島の美しい風景に目を奪われます。舞台である粟国島に住み、妻が亡くなった現実を受け入れられず酒びたりの生活を送る父親役の奥田瑛二さん、東京の大企業に勤めるも家庭がうまくいかずに悩む息子役の筒井道隆さん、名古屋で美容師をしており、シングルマザーになる決心をしている娘役の水崎綾女さん。バラバラになってしまったかのような3人の人生は、「洗骨」という行事を通して歩み寄っていきます。
ともすれば重くなりがちなテーマを、真剣に描きながらも所々に笑いを散りばめた作品に、客席からは涙だけでなく笑い声も度々上がり、来場者の満足した様子が伺えました。

上映後の挨拶で照屋監督は「ほらねー、いい映画だって言ったでしょう?」と笑いから入り、「登場人物はみんな完全ではない人間。でも完全じゃないから、周りの人と手を取り合うことによって生きていける。これは人間世界の縮図だと思うので、作品を見た人が明日からもう一歩強く進んで生きていけるような気持ちになってくれたら嬉しい」と話し、劇終時に客席から自然と拍手が沸き上がったことに「みんな喜んで観てくれたんだと思う。それだけで満足です」と笑顔で語りました。

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主演の奥田さんは「まるでワンダーランドにいるような現場だった。全身全霊傾けて参加させてもらった。監督の言うことを夢中にやって、作品の世界観や現場の空気に一体化した自分がスクリーンに映っていたらこれほど嬉しいことはない」と、これまでの奥田さんとは全く違う新境地を開いたことに会心の笑みを見せ、筒井さんは「沖縄にそういう(洗骨という)風習があったことを多くの人に見てもらって、命の大切さを伝えてほしい」と挨拶。水崎さんは2日前に済州島映画祭に出たときの事を少し話し、涙ぐみながら「一度観て良かった作品は良作、何度観ても良かったと思える作品が名作だと思っているので、この作品を何度も見てもらって『良かった』と思ってほしい」と話しました。

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山城さんは「僕、出てました?」と前半の舞台挨拶を受けての一言。客席から大きな拍手が上がり、照屋監督からも「そういえば出てたねぇ」との言葉をもらい、安心して挨拶に入ります。「(奥田さんたちが)撮影に入る瞬間までとても自然な状態なのに、撮影に入った瞬間から間違いなく役それぞれぞれの人間性が表現されている様子を最前列で見ることができ、とても贅沢な時間をいただけたと思っている。自分も劇団を持っているので、ここで得たものを沖縄に還元していきたい」と今後の抱負を語りました。

ところが挨拶の締めをするはずの古謝さんは「私も山城さんの言ったとおりに思っているわけさ~」とマイペースな一言。「3人ともすごい役者さんさーねー、ただ1人民謡歌手がこんな所(舞台挨拶の場)に立ってていいのかと思うさー」に対して、照屋監督は客席に向かい「とても演技がナチュラルだったでしょ?でもこの人(古謝さん)、(映画は)やらないって断り続けてたんですよ」と暴露。今までに3度もオファーを行い、「じゃーセリフなかったら出るさ」と言った古謝さんをうまく丸め込んで今回の出演が決まったそう。結局古謝さんは劇中でセリフを言うことになり、照屋監督が「セリフがなかったら女優じゃないさ」と声をかけると「私女優じゃないのに」ときっぱり断言し、照屋監督を黙らせていました。その後古謝さんは劇終で使われた「童神」を生歌で披露し、観客から大きな拍手を浴びていました。

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最後に照屋監督は、自身の1作目の長編にも出演し、沖縄新喜劇などでも一緒に仕事をしてきた福田加奈子さんの名前を上げ、「本来ここにいるはずだった福田さんが先月亡くなられました。付き合いが長かった分、動揺を隠せません。この作品が遺作となってしまったのですが、作品の中で人は生き続けるので、故人を忘れないよう、みんなの心の中でいつまでも生き続けさせてほしい」と述べました。そして奥田さんが「沖縄を先行して全国を回りますので、『この映画を観てほしい!』とみなさんに発信してほしい」と期待をこめて舞台挨拶を締めくくりました。

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「洗骨」は2019年1月18日(金)から沖縄県内で先行公開、2月9日(土)から丸の内TOEIをはじめ全国公開を予定しています。

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