「第四回 上方漫才協会大賞」で見取り図が大賞、特別賞に霜降り明星! 新人賞はエンペラー、男前・ブサイクランキングも発表
1月14日(月・祝)、なんばグランド花月にて、「第四回 上方漫才協会大賞」が開催されました。近代漫才の祖、横山エンタツ・花菱アチャコからの歴史の継承と発展のために、ノーブランドの若手芸人を育成・サポートしている上方漫才協会が、昨年活躍した芸人を称え、さまざまな賞を贈る年に一度のビッグイベント。今回も、昨年に引き続き東京のヨシモト∞ホールを拠点とする芸人たちにも枠を広げ、大賞をはじめ特別賞、新人賞、話題賞など5つの賞を授与します。
開演と同時にオープニングアクトのFOX EYEが登場。ダブルアート・タグ扮するスペースアイドルのステージに、アインシュタイン、ミキ、てんしとあくま・かんざき、祇園・櫻井、ビスケットブラザーズ・きんも加わり、ド派手に盛り上げました。
オープニングVTRに続き、司会進行を務めるハイヒール リンゴと、上方漫才協会会長・中田カウスが舞台へ。カウスは先ほどのFOX EYEについて「おもろいなあ。あんな若手がいっぱいおる」と大笑い。昨年から東京勢も加わってさらに層が厚くなったことに触れつつ、「東西が仲良く、ちょっとした嫉妬と闘争心を持ちながらやっている。それで足腰が鍛えられている」と若手たちの頑張りを評しました。
2階席には、各賞にノミネートされた芸人たちが大集合。レポーターのかまいたちが、舞台上のマルチビジョンを通じて、彼らの生の声を届けます。今をときめくEXITのチャラすぎる言動に、ふたりはヒヤヒヤ。「完全に散髪をミスったチャンピオン」とイジられたのは、霜降り明星・せいや。背後に陣取ったゆりやんから熱い視線を受けタジタジとなるひと幕もあり、各自思い思いにアピール合戦を繰り広げました。
まずは、各メディアを中心に話題となり、上方漫才の発展に貢献した芸人に贈られる「話題賞」の発表から。審査会で既に決定している受賞者はなんと、「よしもと漫才劇場」! カウスは「300席しかない劇場に、年間約30万人のお客さまにお越しいただいた。若手たちが活躍できるのも劇場あってこそ」と受賞理由を説明。劇場を代表して、武林裕輔支配人とトットが舞台に上がります。「お客さまに愛される劇場になったかなと思う。この勢いのまま今年も頑張りたい」と武林支配人。桑原は「毎日、劇場で誰かが努力して...」と切磋琢磨の場であることを述べるとともに、「藤崎マーケットのトキさんがずっと楽屋にいる」と明かし、「注意してほしい」とカウスに懇願していました。
続いては「新人賞」です。この賞は、芸歴8年目以下の芸人が対象となり、昨年のネタバトル等の成績をもとに選出。大阪・よしもと漫才劇場からはエンペラー、からし蓮根、コウテイ、東京・ヨシモト∞ホールからはひょっこりはん、EXIT、魔人無骨がノミネートされました。
舞台上に6組が整列すると、抽選によりネタ順が決定。「新人賞をとって若手芸人の勢力図をぐちゃぐちゃにしたい」と話したひょっこりはん、「今日は熊本からお父さんとお母さんが見に来てて...うっそ〜」と伊織のボケで笑わせたからし蓮根、「もうちょっと後の方がよかった」とちょっぴり不安げなエンペラー、カウスの「頑張って」に「うぃーっす」で応えたEXIT、ギャグ連発で意気込みを表現したコウテイ、東京NSCでカウスの教え子だった魔神無骨の順に、4分ネタで勝負をかけることになりました。
審査を行うのは、上方漫才協会副会長・中田ボタン、漫才作家・大池晶さん、漫才作家・高見孔二さん、漫才作家・片山良文さん、漫才作家・タフ計画さん。そして、なんばグランド花月・新田敦生支配人が審査委員長を務めます。
いよいよ各組のネタがスタート。それぞれ渾身のネタで笑いを巻き起こしていきます。全組終了後、審査員は別室に移動して審議に。気になる結果は後ほど発表されます。
次は、ネタの台本や表現方法など、文芸部の視点で特に優れている芸人に贈られる「文芸部門賞」。ジソンシン、ツートライブ、ロングコートダディ、ダンビラムーチョ、なにわスワンキーズの5組が選ばれました。
なにわスワンキーズは、父・母・息子による家族コントを。さまざまなノリが盛り込まれた斬新な構成で笑わせました。
ダンビラムーチョは「怖いもの」をテーマにした漫才を展開。何者にも動じないおじさんの最強ぶりが笑いを呼びます。
ホームセンターを目指す男の苦難をコントに仕立てたのは、ロングコートダディ。
ツートライブの漫才では、おなじみ周平魂の「イキりワード」が次々と炸裂!
ジソンシンは、父と子に扮したコントを披露。徐々に明らかになるふたりの素顔に爆笑と戦慄が広がりました。
ネタの後は、同協会文芸部部長・大池晶さんによる選評が。なにわスワンキーズに対しては、「トリオでないとできない設定。親が子どもについていけないネタは多いが、親がおかしいというのも面白い」とコメント。ダンビラムーチョには「"怖いもの"というテーマはぶれずに、繰り返しをうまく使って、ネタとしてしてまとまっていた」と述べました。「ショートコント風に、何度も繰り返す新しいパターンを見つけたのでは」と評されたのはロングコートダディ。ツートライブのネタについては、「言葉の言い換えが非常に面白い。ひとひねり・ふたひねりもある」。ジソンシンには「予想もしない言葉がどんどん出てくる。ゆっくりしゃべって、間を取っているのもすばらしい」との言葉を送りました。
ここでちょっとひと息、「上方漫才協会大賞」名物企画、よしもと漫才劇場「男前&ブサイク芸人ランキング」の発表です。昨年12月、同劇場に所属する芸人を対象に観客投票を実施。そのトップ50がここで発表されます。
かまいたちがコーナーMCを担当し、一気に50位から6位までが発表されると、1、2階席とも歓声・悲鳴・笑いが入り乱れる大騒ぎに。さらに5位から1位へ順番に名前が映し出されると、そのたび大きな拍手が起こります。栄えある1位に選ばれたのは、男前がアインシュタイン・河井、ブサイクがアインシュタイン・稲田! コンビ揃っての1位に、ふたりは喜びを爆発させます。「これまで2位とか3位とか中途半端な結果だったので、なんとか1位がとれてよかった」と河井。対する稲田は3年連続の1位獲得で、ついに殿堂入り! 「ブサイクと言われることに誇りを持っています。そういう芸人が増えてきてほしい」と後続の芸人たちにエールを送り、潜在能力の高い"後継人"としてブサイク23位の吉田たち・ゆうへいを指名しました。当のゆうへいは「僕、結婚してますから」と丁重に辞退しましたが、来年のランキングに今から期待が高まります。
いよいよ新人賞の結果発表です。受賞者は、エンペラー! 審査委員長の新田支配人によると「今年が一番、審査員の意見が割れたかもしれません。とくに審査員の評価をかき乱したのはEXIT。どう評価するか意見が割れた。最後は総合的に、ということでエンペラーが選ばれた」とのこと。カウスも「テンポといい間・呼吸といい、いい感じになってきた」と絶賛します。「賞をもらうのは初めて」というエンペラーは、「意外と涙って出ないもんですね」(安井)と、喜びを噛みしめていました。
そして、ついに大賞発表の瞬間が。と、その前に昨年、大賞を受賞したトットを呼び込み。「昨年はどんな年でしたか?」ときかれると、各地で大盛況となった全国ツアーや、大先輩のカウス・ボタンとの特番共演など、手応えが大きかったと回答。さらなる飛躍のために、カウスからは「そろそろ衣装を替えては?」とのアドバイスも飛び出していました。
また、2階席にはアインシュタイン、吉田たちも。河井は「どこに行くにも受賞がついてまわるので、それに恥じないようなネタをしないといけないと、責任感を持つようになった」とキッパリ。吉田たちは受賞の年、吉本でもっとも舞台に立ったコンビとなったそう。しかし、この3が日は2ステージに終わり、対するゆうへいの妻、吉本新喜劇・井上安世は24ステージと差が付いたため、「もっと(出番を)入れてほしい」とリクエストしていました。
事前に発表された大賞ノミネート芸人は58組。そこからさらなる審査を経て、まずは最終ノミネート10組が発表されます。名前を呼ばれた芸人は、客席の通路を通って舞台へ。よしもと漫才劇場からは、祇園、
見取り図、
ネイビーズアフロ、
さや香、
ミキ、
よしもと∞ホールからは、ニューヨーク、
やさしいズ、
ゆにばーす、
レインボー、
ひょっこりはんが名を連ねました。
緊張の面持ちで舞台に並ぶ10組のなかから、カウスが発表した大賞受賞者は、見取り図! 上方漫才協会名誉会長の吉本興業・吉野伊佐男会長からトロフィーを受け取った盛山は、「やったー!」と思わず雄叫び!
ふたりとも「予想してなかった」そうで、盛山は「この賞に恥じぬよう、漫才を頑張っていきます」と表情を引き締めます。「漫才のなかに人柄が出ている。M-1でもトップで出ていき、いつもと同じ感じでやっていたのがすごい」とカウス。この後、喜びのあまり「勢いに乗ってM-1で優勝して、最終的にアジア初のローマ法王になりたい」とぶち上げる盛山でした。
さらにもう1組、「特別賞」の発表も。選ばれたのは、霜降り明星! 2階席にいたふたりは名前を呼ばれてビックリ、舞台へと急ぎます。最終ノミネートに残らず、「泣きそうになりながら、隣のらぶおじさん(絶対アイシテルズ)に『どういうこと?』って言っていた」というせいや。粗品は「サプライズ、うれしかったです」と満面の笑みを見せました。
最後は特別賞の霜降り明星、大賞の見取り図がネタを披露。霜降り明星はせいやのモノマネを生かした漫才、見取り図は結婚相談所を舞台に男女の出会いを描く漫才で、受賞にふさわしい大爆笑を巻き起こしました。
ネタ終わりで紙吹雪が打ち上げられると、祝福ムードは最高潮に。舞台上には改めて受賞芸人が集まり、「第四回 上方漫才協会大賞」は晴れやかに幕を閉じました。
終演後の囲み会見で、カウスは「年々みんな力をつけてきて、若手と思えないような技を身に着けている。NGKに出てる中堅クラスは焦ってるんちゃうかな?」とニッコリ。それもすべて「漫才劇場ありき」と語り、「あの劇場でみんな足腰を鍛えて、その成長ぶりを見たくてお客さまが足を運んでくださる」とも。さらに、年内に東京にも「よしもと漫才劇場」が誕生することを発表! 予想外のニュースに、芸人たちからも驚きの声と拍手が上がります。「東京にも、このように素晴らしい若手がいる。まだまだ世に出るチャンスがない子もいる。その子たちにチャンスを作ってあげたい」と新劇場に込めた思いを明かし、「落ち着いたら、そこで上方漫才協会大賞をやってみたい」と夢を広げました。
大賞受賞の見取り図・盛山は「今まで賞を獲らせてもらうことがなかったので、本当に光栄。すごくうれしくて、まだ動揺してますし、この賞に恥じないように大阪の劇場、そしてよしもと漫才劇場をもっともっと盛り上げていけたらなと思っています」と挨拶。相方のリリーは「紙吹雪を浴びたのも人生で初めて。記念にぜんぶ持って帰ろうかな」とうれしそうに話していました。
特別賞に輝いた霜降り明星は、「昨年は僕たちにとって素敵な1年になりましたが、よしもと漫才劇場のおかげでM-1にも優勝できたと思うので、恩返ししていくこれからにしたい」と粗品。「次は大賞を目指したい」と、早くも来年に向けて気合充分です。「上方漫才協会大賞」では、新人賞を逃すなど「負け続けてきた」と振り返ったのはせいや。今回の受賞を経て、「散髪もキマったので、次はトータルコーディネイト賞を」と新たな目標も掲げていました。
「今年の目標は賞を獲ることだった」というのは新人賞のエンペラー・安井。早々に叶ってしまい、「あと11カ月どうしようかな」と戸惑いを隠せません。相方の西山は、「賞とかにかすりもしなかったんで、こういった賞をいただけて大変光栄。おごらずに今年もまい進していきたい」と決意を新たにしていました。
質疑応答では、カウスが「ネタに人柄がにじみ出ている」と評した見取り図について、「どんな人柄ですか?」との質問が。カウスは盛山を指し「やさしいんです。いつも後輩のことをかばうというか、そういうところが見える」と回答。女性にまつわるネタが多いことについても「色っぽくていいんじゃないですか」と笑顔で話していました。
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