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映画会見・舞台挨拶

2019年1月15日 (火)

TVドラマ、舞台、そしてついに映画化!「めんたいぴりり」福岡先行公開舞台挨拶

普段何気なく食べている<明太子>。そこには、成功の陰に知られざる家族の絆や激動の昭和がありました。
日本で初めて明太子を製造し、販売した福岡・博多の「ふくや」創業者・川原俊夫さん。商標登録も製造法特許も取得せずに、地元同業者に製造方法を教え、博多の名物として定着するきっかけを作った博多を代表する人物です。
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そんな川原さんの人生をモデルに戦後の混乱期を乗り越え、経済は復興から成長へとシフトしていく昭和を背景に描く感動物語が誕生しました。主演に、福岡出身の博多華丸。妻役に同じく福岡出身の富田靖子さん。

2013年にTVドラマ化、その後、舞台化もされた福岡では知らない人はいない「めんたいぴりり」が、遂に映画化となり、全国公開に先駆け、本日1月11日(金)に福岡にて先行上映がスタートしました。
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初日である本日、主演の博多華丸、富田靖子さんほか、物語には欠かせないふくのやファミリーが舞台挨拶に大集合しました。
場所は福岡市博多区、JR博多駅に隣接するJR博多シティ内の「T・ジョイ博多」。
上映後のお客様の前に現れたのは、主演の博多華丸、富田靖子さん、山時聡真さん、増永成遥さん、瀬口寛之さん、井上佳子さん、福場俊策さん、江口カン監督の8名。登場を待ちわびた客席からの拍手喝采に続き、博多華丸より順番にご挨拶しました。
司会は福岡で活躍中の博多華丸の同期のケン坊田中!
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まずは華丸より「無事NHKを終えてたどりつきました。大吉に『行くな』と止められたんですが、その腕を振り払って帰って参りました!」とひと笑い。「クランクインのときには公開の日なんてくるのかなと思っていましたが、無事に今日を迎えられて嬉しいです」とのご挨拶に続き、妻・千代子役を演じた富田靖子さんからは「今、舞台袖で待っている10分ほどの間、撮影のときよりみんなが緊張していたのですが、聡真くんが撮影のときより大きくなっていたり成遥くんが男前になっていたりして、みんながピカピカになって今日再会できたことがとても嬉しいです。
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そして今日ご覧下さった皆様、ぜひ会場を出られたら、素敵な感想を博多の街に振りまいてください」と、役柄同様しっかり者のお母さんのコメントをしてくれました。

華丸演じる海野俊之の長男・健一役を務めた山時聡真さんは、「普段は優しい役柄だけれど、ここぞという場面で男らしさを発揮したシーンが印象に残っている」、とコメントしてくれました。
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次男・勝役の増永成遥さんは「(先ほど富田さんが言われたように)いい感想を博多に広めてください」と誰よりも大人びたコメント。「そういうのは大人がやるけんいいったい」と突っ込む華丸が本当の父親のようでした。
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ふくのやの住み込み従業員・八重山役の瀬口寛之さんは「山笠のシーンが印象深いですね。翌日体中が痛かったです。わざとかどうかわからないんですが、痛いと言っている僕の肩を監督がポンっと叩いたんですけど...江口監督、あれはわざとですか?」という問いかけに「うん、ちょっと確かめてみたかった」と本音が。実際に山笠を担いでいますので、よほど痛かったのでしょう。
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同じくふくのやの住み込み従業員・ミチエ役の井上佳子さんは「これだけたくさんの方に観てもらえたことが本当に嬉しいです」とミチエのときよりもおしとやかにコメント。素の井上さんのはにかんだ表情がステキでした。
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同じくふくのやの住み込み従業員・笹嶋役の福場俊策さんは「今日は松尾さん(パラシュート部隊・斉藤優さん)がいなくて少し寂しいんですけど」と笑いをとりながら、今日を迎えらえた喜びを語ってくれました。
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江口カン監督は「やっと公開できて本当に嬉しいです。しかもどこよりも早く博多の皆さんに観て頂けたことが何よりです」と挨拶。
「最初のドラマから足掛け5年。当時『いつか映画になるといいね』と語ってはいましたが、実現して感慨深いです」と述べたあと、「ちなみに当時から映画化は実現しようと思っていましたか?」という質問に「はい、半分くらいは」との回答で、当初からかなり具体的に構想があったことを話してくれました。
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ドラマ、舞台、映画と進化してきた中で「いい意味で成長していないメンバー」と華丸がコメントすると「舞台には参加していませんが、映画で久々に再会して、みんなが大人になっているなぁと感じてちょっぴりの寂しさはあったんですが、凄く頼もしくて『映画だから頑張らなきゃ!』という気負いがなくなってよかったです」と富田さんが各人の成長ぶりをフォロー。いい夫婦のコンビネーションでした。
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その「映画のために久しぶりに集合した」ことについて、井上さんは「映画でふくのやのお茶の間のセットに久しぶりに入りましたが、『あ、帰ってきたな』と思えるあたたかさがあってすんなり撮影に入れました」とふくのやファミリーのチームワークについても語ってくれました。
同じく福場さんも「松尾さんが役柄同様に先輩としてアドバイスしてくれて、本当に近い存在になりました」と役柄がそのまま演者間の人間関係ににじんできた様子を話してくれました。5年かかって、本当のふくのやファミリーになってきたのですね。

福岡でのロケが多かったことについて江口監督から「たくさんのロケ地で撮りましたしたくさんのエキストラさんに出て頂きましたが、特に山笠のシーンは僕も博多の人間なんで『誰よりもかっこよく山笠を撮っちゃろう!』と意気込んで8回走ってもらったら最後のほうはみんなの目が血走ってましたね」と博多っ子ならではの想いとエピソードが飛び出しました。
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印象に残っているシーンとして、増永成遥さんは完成した映画を改めて観てみて、「スケトウダラさん」で笑ったそう。ここは本当に博多大吉が体を張っているのでぜひお楽しみに。同じく博多華丸は「あしながおじさん」が普通にできたことに自分でもびっくりしたそう。
その理由として奥さん、お子さん、ペットの犬がみんな女性でソファを占領されているため、「普段バランスボールが私の座り場所なんです。それがこのバランス感覚に役に立ったんでしょうね」とどこまでが冗談なのかわからないコメントで大爆笑!
富田さんも「特報でスケトウダラさんを見たときの衝撃がですねー!」とまたもスケトウダラさんのネタが!
「魚類なのに足はあるし、想いのほかすごく美脚で...ショックでした...」と、観ていない人からするとまったくわからない内容ですが、鑑賞直後の客席からは「うんうん」と頷いている人の声がたくさん聞こえました。
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最後に華丸より「『うわー、行こうと思ったら終わっとった!』という博多の人あるあるにならないように、ぜひみなさん周りの人にちょっとだけ耳打ちして頂ければと思います」という笑いに溢れた〆の挨拶で舞台挨拶は終了しました。
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5年に渡る「ふくのやファミリー」としてのチームワークやあたたかい人間関係が色濃く描かれている「めんたいぴりり」、ぜひ皆様、劇場に足をお運びください!


<「めんたいぴりり」物語>
昭和30年代の博多。戦後の傷跡が残る中洲の一角で海野俊之(博多華丸)は小さな食料品店「ふくのや」を立ち上げ、妻・千代子(富田靖子)と営んでいた。
バカがつくほどの"お人好し"で、「博多祇園山笠」に情熱を燃やす"のぼせもん"である俊之は、「おいしいもので人を幸せにしたい」との思いから、生まれ育った韓国・釜山で出会った総菜をヒントに日夜「明太子」づくりに精を出していた。
試行錯誤の末、明太子づくりが軌道に乗り出した矢先、俊之の明太子の一番のファンだった元博多人形師・丸尾の死、可愛がっていた英子の旅立ちなど悲報が相次ぎ、明太子では誰も幸せにできないと自信喪失する俊之。ついには明太子づくりを諦めてしまうが...。
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監督:江口カン 脚本:東憲司
出演:博多華丸/富田靖子/博多大吉/中澤裕子/高田延彦/吉本美憂/柄本時生/田中健/でんでん
原作:川原健「明太子をつくった男~ふくや創業者・川原俊夫の人生と経営~」
2018年/日本/カラー/上映時間:115分/シネマスコープ/配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
(C)2019『めんたいぴりり』製作委員会
http://www.piriri_movie.official-movie.com



【博多華丸・大吉】

2018年12月28日 (金)

「ウケないなぁ、おい」奥田瑛二さんがギャグを言う?! 映画「洗骨」舞台挨拶

12月17日(月)、沖縄・那覇市のシネマQで照屋年之(ガレッジセール・ゴリ)監督の長編2作目「洗骨」の公開記念プレミア試写会が行われました。

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「洗骨」は、沖縄の離島、粟国島を舞台に、亡き人を風葬し、肉がなくなり骨だけになった頃に対面し、骨を洗い、あの世に送り出すという独特の風習に焦点を当て、"親から子への生命のリレー"、"家族の再生"を描いた作品です。これまでにモスクワ、上海、ハワイなどの国際映画祭で高い評価を受け、8月に開催された北米最大の日本映画際「第12回JAPANCUTS」で28本の作品の中から見事観客賞を受賞しており、今回満を持しての試写会となりました。

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試写会の前に行われた舞台挨拶では、照屋監督、出演した奥田瑛二さん、筒井道隆さん、水崎綾女さん、山城智二さん、古謝美佐子さんが登壇しました。照屋監督が「沖縄の皆さんに喜んでもらえる作品ができたと思う。1日でも早く見てほしかったので、今日という日が来たことを嬉しく思います」と真面目な挨拶をしたかと思うと、山城さんに「実は山城さん出てないんですよ」とギャグをとばし、水崎さんが「そうそう。この人、出演者のふりして勝手に舞台挨拶に入ってきたんですよ」と相槌を打ったり、古謝さんに「美佐子さんは砂かけババアの役で出てもらっています」と声をかけるなど、客席に笑いを生み出し、ゴリらしい面ものぞかせていました。

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その雰囲気を引き継いでか、マイクを渡されて最初の一言に「沖縄の皆さんに喜んでもらえる作品ができたと思う」と、照屋監督と全く同じ言葉をしゃべる奥田さん。しかし周り全員、真面目に受け止めたほうがいいのか突っ込んだほうがいいのか判断できず、結局奥田さんが「ウケないなぁ、おい」と言ってやっとその場を締めくくることに。照屋監督の挨拶の中に出てきた「今までに見たことがない奥田さんを見ることができると思います」とはこういうことだったのか?!と含みを持たせます。

映画が始まると、島の美しい風景に目を奪われます。舞台である粟国島に住み、妻が亡くなった現実を受け入れられず酒びたりの生活を送る父親役の奥田瑛二さん、東京の大企業に勤めるも家庭がうまくいかずに悩む息子役の筒井道隆さん、名古屋で美容師をしており、シングルマザーになる決心をしている娘役の水崎綾女さん。バラバラになってしまったかのような3人の人生は、「洗骨」という行事を通して歩み寄っていきます。
ともすれば重くなりがちなテーマを、真剣に描きながらも所々に笑いを散りばめた作品に、客席からは涙だけでなく笑い声も度々上がり、来場者の満足した様子が伺えました。

上映後の挨拶で照屋監督は「ほらねー、いい映画だって言ったでしょう?」と笑いから入り、「登場人物はみんな完全ではない人間。でも完全じゃないから、周りの人と手を取り合うことによって生きていける。これは人間世界の縮図だと思うので、作品を見た人が明日からもう一歩強く進んで生きていけるような気持ちになってくれたら嬉しい」と話し、劇終時に客席から自然と拍手が沸き上がったことに「みんな喜んで観てくれたんだと思う。それだけで満足です」と笑顔で語りました。

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主演の奥田さんは「まるでワンダーランドにいるような現場だった。全身全霊傾けて参加させてもらった。監督の言うことを夢中にやって、作品の世界観や現場の空気に一体化した自分がスクリーンに映っていたらこれほど嬉しいことはない」と、これまでの奥田さんとは全く違う新境地を開いたことに会心の笑みを見せ、筒井さんは「沖縄にそういう(洗骨という)風習があったことを多くの人に見てもらって、命の大切さを伝えてほしい」と挨拶。水崎さんは2日前に済州島映画祭に出たときの事を少し話し、涙ぐみながら「一度観て良かった作品は良作、何度観ても良かったと思える作品が名作だと思っているので、この作品を何度も見てもらって『良かった』と思ってほしい」と話しました。

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山城さんは「僕、出てました?」と前半の舞台挨拶を受けての一言。客席から大きな拍手が上がり、照屋監督からも「そういえば出てたねぇ」との言葉をもらい、安心して挨拶に入ります。「(奥田さんたちが)撮影に入る瞬間までとても自然な状態なのに、撮影に入った瞬間から間違いなく役それぞれぞれの人間性が表現されている様子を最前列で見ることができ、とても贅沢な時間をいただけたと思っている。自分も劇団を持っているので、ここで得たものを沖縄に還元していきたい」と今後の抱負を語りました。

ところが挨拶の締めをするはずの古謝さんは「私も山城さんの言ったとおりに思っているわけさ~」とマイペースな一言。「3人ともすごい役者さんさーねー、ただ1人民謡歌手がこんな所(舞台挨拶の場)に立ってていいのかと思うさー」に対して、照屋監督は客席に向かい「とても演技がナチュラルだったでしょ?でもこの人(古謝さん)、(映画は)やらないって断り続けてたんですよ」と暴露。今までに3度もオファーを行い、「じゃーセリフなかったら出るさ」と言った古謝さんをうまく丸め込んで今回の出演が決まったそう。結局古謝さんは劇中でセリフを言うことになり、照屋監督が「セリフがなかったら女優じゃないさ」と声をかけると「私女優じゃないのに」ときっぱり断言し、照屋監督を黙らせていました。その後古謝さんは劇終で使われた「童神」を生歌で披露し、観客から大きな拍手を浴びていました。

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最後に照屋監督は、自身の1作目の長編にも出演し、沖縄新喜劇などでも一緒に仕事をしてきた福田加奈子さんの名前を上げ、「本来ここにいるはずだった福田さんが先月亡くなられました。付き合いが長かった分、動揺を隠せません。この作品が遺作となってしまったのですが、作品の中で人は生き続けるので、故人を忘れないよう、みんなの心の中でいつまでも生き続けさせてほしい」と述べました。そして奥田さんが「沖縄を先行して全国を回りますので、『この映画を観てほしい!』とみなさんに発信してほしい」と期待をこめて舞台挨拶を締めくくりました。

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「洗骨」は2019年1月18日(金)から沖縄県内で先行公開、2月9日(土)から丸の内TOEIをはじめ全国公開を予定しています。

【ガレッジセール】【ゴリ】

2018年11月 4日 (日)

奥山和由監督『熱狂宣言』がついに初日!南海キャンディーズ山里も「頑張ろうと思える映画」

 『GONIN』『ソナチネ』など数々の傑作を世に送りだしてきた奥山和由プロデューサーが、『クラッシュ』以来15年ぶりのメガホンをとった映画『熱狂宣言』が11月4日(日)にTOHOシネマズ 六本木ヒルズで初日を迎えました。上映前に行われた舞台あいさつには、本作主演の松村厚久さん、江角早由里プロデューサー、奥山監督、そしてMCとして南海キャンディーズの山里亮太が登壇しました。

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 映画『熱狂宣言』は、若年性パーキンソン病を抱えながらも、圧倒的な才気で会社を東証一部上場企業にまで押し上げた外食業界の風雲児・松村厚久さんの実像に迫ったドキュメンタリー作品。会場に集まった満員のお客さまを見渡した奥山監督は「TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映させていただけること、関係者の方に感謝しております。最初はレイトショーで1回ということだったんですが、なんと朝から晩まで6回も上映していただけることになりました。皆さんも、今日、明日と、どんどんといらしていただけるよう薦めていただけたらと思います」とあいさつ。そして「以前から松村さんのことは、本やテレビなどでチラチラと拝見はしていたんですが、そういったものを見ていると、正体不明な元気をもらえるんです。この不思議さの正体を確認したくて、映画を撮り始めました。皆さんでその正体を確認していただければ」と付け加えました。

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 その話を聞いていた松村さんは「今日はありがとうございます。いい映画になりました。奥山さんに撮ってもらえてうれしいです。2年前に奥山さんが会社に来て、映画をやると言われまして。あんな有名な方がと信じられなかったですね。これは映画になるのかなと思いながらも、あれよあれよといううちに......なりました(笑)。先ほども言われていましたが、はじめはレイトで1回上映ということだったのですが、1日で6回も上映していただくということで、ありがたく思っております。今日は楽しんでください」と呼びかけます。

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 そして最後に江角プロデューサーが「足かけ約2年になりまして、ようやく初日を迎えることができました。本当に映画になるまでは、いろんな課題やトラブルがあったんですけども、このように皆さんの前で観ていただけることになりまして。感無量、うれしく思っております」とあいさつ。お客さまからの拍手を集めていました。

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 そしてその後はトークセッションを実施。司会は南海キャンディーズの山里亮太が務めます。「本編がやっと観られると思った方。まだまだ前菜は続きましたね」とジョークを交えて登場した山里は、松村さんが故郷のよさこい祭りに参加していることに感銘を受けたとのことで、「今年の夏に初めて、よさこい祭りに行きまして。祭りって世の中にたくさんありますけど、だいたいが地元の神さまを祀っているものなんです。でも、よさこいは違うんです。みんなが何を祀るのかというと、高知への愛を祀るんです。つまり自分が生まれた高知をなんとか盛り上げたいという気持ちがあって、その集大成があのよさこい祭りなんです。そこで全身全霊でやっていた、よさこいのチームが松村さんのチームでした。そこで一緒に練り歩いたんですけど、その時、高知の人たちが一緒になって"松村さん、今年も盛り上げてくれてありがとうね!"というんです。あれを目の当たりにして、この人はなんてすごい人なんだろうと。愛というものを表現するのに、こんなに素敵な人がいるんだと思って。それでなんとかお近づきになりたいと思って。いろんな力を使って、今ここに至ります」とあふれる思いを一気に語り尽くし、会場をわかせます。

 さらに「最高でしたね、今年のよさこいも金賞をとりましたしね。すごかったですね。来年も楽しみですね~」とたたみかけるなど、よさこいへの愛が止まらない山里ですが、いったんここで軌道修正。インタビュアーとして、登壇者の皆さんに質問を投げかけることにします。まずは「この映画の話が来た時はどう思いました?」という山里の質問に、「(アポイントはあったけど)本当に(会社に)来るのかなと思いました」と述懐する松村さん。その言葉を補足するように奥山監督が「あの時は不思議そうな目で、ジッと見られていましたね。でも本当は僕が行った時は松村さんとだけ会うつもりだったんですけど、社員の方10人くらいに囲まれましてね。松村さんに会ってから映画にするかどうしようか決めようと思っていたんですが、その10人の圧で、一気に映画の話が進んだということです」と説明。

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 その言葉に「それだけの人に、熱をもって支えていられているなら、いいドキュメンタリー映画が撮れるに違いないと思ったんですね」と納得した様子の山里。奥山監督も「そして何がいいって、何事も全力投球で、真っ向勝負じゃないですか。真っ向勝負のシンプルさ、そしてテレビや本などではあまり伝わってこないんですけど、この人の欠点がとにかく魅力的なんですよ。ありていに言えば女好きだし、ダジャレが全部すべるのに(構わず)言うし。余計なものが全然なくて可愛らしいんですよ」と松村さんの魅力を力説。その言葉を聞いた松村さんも「もう奥山さんのおっしゃる通りですよ。正解ですね」と深くうなずいていました。

 本作を鑑賞した山里は「あそこまでさらけ出していいのだろうか、というくらいにいろんな松村さんの表情を見せていた」と驚きを隠せない様子。「それに対して抵抗はなかったんですか?」と松村さんに質問をぶつけますが、当の松村さんは「タブーはないですね。普段からそういうのはまったく構わないんですよ」とまったく意に介していない様子。奥山監督も「最初にタブーなしでいいですねと聞いたら、タブーはまったくありませんと言っていただいたので。それなら傑作が撮れるかなと思ったんです」とその意見に同意します。


 「実際にこの映画を観てもらうと、この話に納得していただけると思います。タブーがあったら上映出来ない映像が出てきますからね」としみじみ付け加える山里に対して、江角プロデューサーも「そういうことは相当ありましたし、使われていない映像でも、着替えのシーンから病院のシーンまで。相当撮っているんですけど、すべて撮って構わないと言っていただいた。その意味ではクリエイティブを重要視されるというか。奥山さんからもやりやすかったとおっしゃっていただきました」。

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 劇中では、松村さんが徳永英明さんの「レイニーブルー」を歌うシーンが登場しますが、「あの歌の下手くそさったらね」と笑う奥山監督。山里も「詳しくは言えないですが、今のキーワードを聞いて本編を観ていただけると、これかと思っていただけると思いますよ。なかなか個性的な『レイニーブルー』が出てきますからね」とお客さまの期待をあおります。松村さん自身、「あれ以来歌っていない」そうですが、奥山監督によると、「タブーはなかったですけど、唯一言ったのが『レイニーブルー』を入れ替えてくれないか、ということ。今度はうまく歌うから、ということだったんですよね」と明かし、会場は大笑い。そして山里が「これだけ『レイニーブルー』という単語を出てくるとワクワクするでしょ。でも歌に行きつくまでがめちゃくちゃいいところなんです。初めて観ると、あの歌がすごく染みるんですよ」と見どころを紹介しました。

 そして松村さんの会社の広報として、さらに本作プロデューサーとして松村さんを支えてきた江角プロデューサーには「松村さんってどんな人なんですか?」と質問。それに対して江角プロデューサーは「映画の許諾で、このシーンが使えるか使えないかという部分で、たくさんの課題があったんですが、そのたびに社長に相談をするんです。もちろんすぐに解決しない問題もあるんですが、真摯にそうかそうかと話を聞いてくださって。そしてわたしが悩んで疲れている時は、『社長室にアイスがあるから持ってきて。俺の分も一緒にね』と言って。アイスを一緒に食べながら相談したりして、本当に支えてもらいましたね。社長は、女性には怒らないんですよ」と明かします。

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 しかし、その答えの中にあった「女性には怒らない」というキーワードに鋭く反応した山里は、「そうなると男性には怒ると捉えていいんですか?」と質問。すると松村さんが「そりゃ怒りますよ」と即答し会場は大笑い。「もともと女性にモテたくて起業したのに、女性に嫌われたら元も子もない」と語る松村さんに、山里も思わず「めちゃくちゃ軟派な男じゃないですか。でもそれも映画を観ると納得しますよね」と笑顔。さらに江角プロデューサーが「こんなにフェミニストな社長はいないと思います」と続けると、奥山監督も「病気によっていろいろな価値観をそぎ落とされて、こんなにさわやかな笑顔になったわけですよね。この映画でも一番意識したのが笑顔ですね。こんな歳なのに、彼の笑顔が異常にかわいいんですよ。それはモテますよ。だいたいが会社の社長のドキュメンタリーなんていやらしいじゃないですか、ヨイショ映画になっちゃう。でも真っ向からヨイショにならない映画を撮ろうということで、ありのままを撮りました」。

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 映画を通じて松村さんに触れた山里は、「松村さんと一緒にいると自然と頑張ることができるというか。呼吸をするように頑張ろうとさせる人ですね。だから何かに向けて頑張ろうという人たちにこの映画を観てもらいたい。ドーピング的に頑張れるというか、いつの間にか、頑張らないといけないという空気にさせられてしまうんですよね」としみじみ。「本当に不思議ですよね」という奥山監督も「そのまんまの松村さんを撮ろうと思ったんですよ。この映画にパーキンソン病の説明を入れてくれとか、仕事はどう成功したかといった解説が必要だという方もいらっしゃった。病気になる前の姿も入れるべきだろうとも言われました。確かに元気だった時の資料はいっぱいあるんです。でもそれは面白くないんですね。それは不思議ですよ。パーキンソン病にかかってからの方が、すごく魅力的なんです。ですから、この映画を通じて、その正体を観ていただきたいと思います」と会場に呼びかけました。

2018年11月 3日 (土)

奥山和由監督『熱狂宣言』が東京国際映画祭でワールドプレミア上映!

 第31回東京国際映画祭 特別上映作品『熱狂宣言』が11月2日(金)にTOHOシネマズ 六本木ヒルズでワールドプレミア上映されました。上映前には本作主演の松村厚久さん、そして本作の応援企業代表であり、本作ポスターでも強烈なインパクトを残した株式会社ネクシィーズ 代表取締役社長の近藤太香巳さん、そして奥山和由監督が登壇し、舞台あいさつを行いました。

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 松村さんが代表取締役社長を務めるDDホールディングスは、グループ全体で国内外合わせて約500店舗を展開、従業員数は約1万人、年商約500億円。2015年には東証一部上場を果たした大手企業です。映画『熱狂宣言』は、若年性パーキンソン病を抱えながらも、圧倒的な才気で会社を東証一部上場企業にまで押し上げた外食業界の風雲児・松村厚久さんの実像に迫ったドキュメンタリー作品。数々のヒット作を送りだしてきた奥山和由プロデューサーが、『クラッシュ』以来15年ぶりのメガホンをとった作品となります。

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 「東京国際映画祭の舞台、そしてレッドカーペットに立つのが夢だった」と言っていた松村さんは、本映画祭に参加し、「うれしいですね」と喜びもひとしおの様子。一方の奥山監督も「松村さんの映画を作り始めてから、松村さんからは東京国際映画祭に行こうと言われていたんですよ。映画を作っていたのは自分なんですけどね」と笑ってみせます。

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 松村さんの映画を作ろうと思ったきっかけについて奥山監督は「一昨年の暮れだったと思いますが、精神的に具合が悪いなと思っていた時、たまたま本屋さんで(小松成美さんが書いた)『熱狂宣言』の本を見つけたんです。そしてそこに映っている松村さんの写真を見て、いい顔をしているなと思ったことがきっかけでした。それくらいにシンプルなことでした」と述懐。「奥山さんに撮ってもらえるのはうれしいですね」と語る松村さんに対して、近藤さんは「さっきからずっと"うれしい"ばかり言っているね」とちゃかしてみせます。

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 そして「松ちゃんとは親友なんです」とうれしそうに語る近藤さんが、「僕は大きなイベントで話す機会があったんですが、もともと彼はそこの生徒さんとして来ていたんです。あの時、彼は10店舗くらい経営していた頃だったと思うんですが、当時はダサかったですね(笑)。でもそれが病気になってからどんどんカッコ良くなっていったんですよね」と振り返ると、奥山監督も「松村さんが元気な時の映像を見せてもらったんですけど、どうも面白くなくて。映画に使えるものではないなと思っていたんですけど、パーキンソン病になってからはどんどん魅力的になっていったんですよね」とその意見に同意。そんな二人の言葉を聞いて、当の松村さんは「正解です」と笑っていました。

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 さらに近藤さんによると、松村さんは男性社員に厳しく、そして女性社員には優しいのだそう。その理由について聞かれた松村さんは「だって女性を怒らせたらモテなくなるじゃないですか。モテたくて仕事をしたのに」とキッパリ。そんな軽妙なやりとりに会場からは笑いが起こりました。

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 そんな松村さんを見て奥山監督は「松村さんという人はものすごくシンプルな方なんですよね。彼の笑顔はすごくいいじゃないですか。この笑顔はどこから来るのかと思うんですよ。そしてこれは僕の勝手な想像なんですが、パーキンソン病になって出来なくなったことが山ほどあり、その中で捨てなくてはならないものがたくさんあった。スマホでもなんでも、インストールしすぎると動作が重くなる、ということがありますが、松村さんの中では、価値観の断捨離が行われて、どんどんシンプルになっていったんだと思います」と分析。その上で「撮影する上でタブーは一切ありませんでした。株主総会でもなんでも撮らせてもらいました」と付け加えました。

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 近藤さんが松村さんを支えるポスターについて「本当にこれが象徴しています。もともと『止まったら死ぬぞ』というキャッチコピーを考えていて。この写真はそれにピッタリだったんです」と振り返る奥山監督。近藤さんも「松ちゃんを支えることで、みんなどんどんいい人になっていくんですよ。彼を支えることで自分の心もきれいになっていく。彼の近くにいると、こんなにも人は優しくなれるんだと感じるんですよね」としみじみ。

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 そして「僕は本当に運がいいんですよ」と語る松村さんに対して、奥山監督も「俳優のマイケル・J・フォックスが同じ病気になり。『ラッキー・マン』という本を出したことがあるんですが、そこに通じるものがあります。松村さんも心底運がいいと思っているんです。この映画でも、「病気も治りそうですね」と言ったら、「治るに決まっているじゃないですか」と真剣に言っています。そのポジティブシンキングがどこから来ているのかを、この映画で確認していただけたら。1時間17分くらいなんで、すぐに終わります。この映画は最初から、松村さんを1年間だけ撮ろうと決めていました。それをまるっとお見せするだけです。そしておそらく、3年後か4年後か5年後に、松村さんは何かをやります。その時に撮影したものを20分くらい足してもう一度完成させます。それを楽しみにしてください」と宣言。映画『熱狂宣言』がさらなる進化を遂げることを示唆しました。

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 そして最後に「こういう映画をTOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映するのは珍しいこと。最初にお願いしたときは1日1回ならということで受け入れてもらいましたけど、松村さんの人望で、協賛応援企業が1118社も集まりました。ということで、TOHOシネマズさんのご厚意で1日6回上映されることが決まりました。ですから何時にいらしても結構です。そして、六本木の交差点近くにグラスダンスというお店が営業しているんですが、映画を見終えてからそこに行くと、もしかしたら生松村さんに会えるかもしれません。近藤さんも遊びに来ているかもしれません。ぜひご来場いただけたら」と会場に呼びかけました。映画『熱狂宣言』は11月4日(日)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映開始となります。ぜひお越しください!

2018年11月 2日 (金)

村上虹郎さん、広瀬アリスさん登壇の東京国際映画祭『銃』上映に大勢の観客の熱気あふれる

現在開催中の第31回東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門正式出品作品『銃』、2度目となる上映会が11月1日(木)にTOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われ、主演の村上虹郎さん、ヒロインの広瀬アリスさん、奥山和由プロデューサー、武正晴監督が、お客さまからの質問に答えました。この日の会場にはお客さまだけでなく、報道陣もあふれんばかりに殺到、この作品の注目の高さがうかがい知れました。

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 芥川賞作家・中村文則さんの同名小説を映画化した本作は、雨が降りしきる河原で偶然に銃を拾った大学生トオル(村上虹郎さん)がその銃に魅せられ、やがて狂気の世界に導かれていくさまをスタイリッシュなモノクロ映像で描き出した衝撃作です。

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 本作の映画化を熱望していた奥山プロデューサーは、2015年東京国際映画祭のレッドカーペットで村上さんと出会い、「『銃』の主人公がここにいる!」と運命的なものを感じたといいます。

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 一方の村上さんも「それはすごく不思議な縁でした。3年か4年前に初めてやった舞台があって。その時の共演者の方が『虹郎に合う本があるよ』と言ってくださったんですけど、それが中村文則さんの「銃」だったんです。でもその時はとりあえず買ったままで、読まずに積んでいたんです。それから奥山さんから連絡が来て、そういえばその本は持っていたなと思って。驚きましたけど、宿命だなと思いましたね」と続けました。そして銃に魅せられた大学生のトオルという役を演じるにあたり、村上さんはクランクイン前から撮影場所となった廃屋のアパートに住み込んだそう。武監督も「撮影の時も寝ているかなと思って。朝来た時は『撮影隊が来たよ』と言って、その部屋をノックをしていました。虹郎くんは完全にトオルになっていましたね」と振り返ります。

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 本作のヒロインとなる広瀬アリスさんのキャスティングについて「ヒロインを決めようという時に、『百円の恋』で組んだ(脚本家の)足立紳が書いた『佐知とマユ』というドラマのことを思い出して。(見た目はギャルの家出少女という広瀬さんが演じた役に)こんなことができる人なんだと。引き出しの深い女優さんですし、年齢的にもジャストだったんでお願いしたかった。そこで(この作品のオファーについて話を)聞くだけ聞いてほしいと言ったら、意外と早くにやると返事をもらえて。やった! という感じでした」と述懐。広瀬さんも「ちょうど朝のドラマをやっていた時期だったんですが、全然出番がない時期だったんです」と語るなど、いろいろなタイミングがビシッとハマった結果のキャスティングだったようです。

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 さらにヒロインのヨシカワヤスコについて「(この映画では)唯一の天使というか、陽の部分だと思っていました」と語る広瀬さんに対して、武監督も「この人が出なかったらつらいですよね。この映画はかなり原作に忠実に描いたんですけど、ラストの方にとあるシーンを足したんです。そうしたら(原作の)中村さんもこういうシーンがないとつらすぎますよね、助かります、と笑いながら言ってくれたんです。そのうえ、中村さんご本人から、あそこはこういうセリフにしたらどうですかと言って、新たにセリフを書き足してくださったんです」とコメント。奥山プロデューサーが感激した様子で「原作者として筆を入れたのは初めてだと言っていましたね」と述懐すると、さらに武監督が「あれは本当に感動的で。僕にとっても救われる言葉なんですよ。この作品はかなり自分たちを追い込んでやらないといけない作品なんで。抜け出したいときにあのセリフを読むと泣きそうになっちゃって。いいセリフだなと思いました」としみじみ付け加えました。


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 そしてその後はお客さまからの質疑応答タイムに。銃を持つトオルに疑いの目を持つ刑事役のリリー・フランキーさんと村上さんが、喫茶店で対峙するシーンは息が詰まるような緊迫感があり、本作の見どころのひとつとなりますが、そんなリリーさんとのシーンの撮影秘話について質問された武監督は、「撮影前はなかなかリリーさんと会うことができなくて。ようやく会うことができたときに、とにかく虹郎くんと一緒に本読みをしましょうかということになったんです。台本は7ページ半近くあるので大丈夫かなと心配していたんですが、しっかりと頭に入っていた。その上でどんどんアドリブが出てくるんです。しかもその発想は僕には思い浮かばないようなことばかり。そうすると虹郎くんがどんどんのせられてくるんですよ。うわさに聞いていた"リリーさん"を初めて体験することができました。本当に楽しい現場でしたね」と振り返ります。

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 さらに村上さんが「リリーさんとは世代も違いますし、現場では、『虹郎くんはいくつなの?』とか、たわいのない話をしていましたけど、一度、『どうやって台本を覚えているんですか?』と聞いたことがあったんですよ。そうしたら黙読していると言うんですよ。テストの瞬間まで一度も声に出さないと言っていて。それはビックリしましたね。それからリリーさんと盛り上がったのが麻雀の話。前にドラマで覚えたことがあったので、覚えていて良かったなと思いました」と振り返りました。

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 続くお客さまからは、原作小説をいかにして映画のキャラクターに肉付けしていったかについて質問が。それについて武監督は「僕は今まで(原作がない)オリジナル作品をやってきたので、ちょっとでも分からなくなるところがあったら、原作を読み返したいなという衝動に駆られて、こっそり見ていたんです。そうしたら虹郎くんが、台本と一緒に原作本をチラッと見ていたのを見つけて。虹郎くんも原作を見ていたんだと思ったらうれしくなっちゃって。それで共犯めいた気持ちがわき起こったということがありました」とコメント。

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 村上さんは「この作品に僕は出ずっぱりなんですが、こんなにお客さまにサービスしない、とがった作品はない。『銃』は中村さんにとって宝物の作品。その作品を奥山さんが"俺がやりたい"と言った。"誰かがこれを求めているから作ってあげたい"ではなくて、"俺はこれをやりたい"んだと。そういう思いを持った人が集まって、純度の高いものを作ったということです。だからアプローチとしても濁りなく。ただそこにトオルが生きていることだけを意識してやったということですね」。


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 広瀬さんは「監督からは、ヨシカワヤスコというのはこの作品の"陽"の部分だからと言われただけで。それ以外はそんなに、お芝居に関しては何もなかったんですよね。ただ、会うたびに虹郎くんが違う顔を見せていて...というか、どんどん飲み込まれている感じがして。わたしも台本を何度も何度も読み返していたんですけど、その波に飲み込まれちゃいけないなというのが自分の中にあって。彼女は彼女で、自分の中でモヤモヤして解決できないものがあったりするんですが、それでもわたしは陽の部分を持とう、ということは意識しましたね。二人のシーンが多かったので、引っ張られないように、と思いました」。

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 そして奥山プロデューサーは「何年かに一度、精神的に病むんですけど(笑)。思いっきり病んでいる時に、ジーパンのポケットに銃を差している表紙のイラストを見て、「これじゃないか」と運命的な出会いがあって。主人公にグワッとのめり込んだんです。若い時に誰しも通過するものが、闇というものがこんなにも甘いものなのかという陶酔感があったんですよ。自分自身がその作品をやるということで、勝手な言い方かもしれませんが、運命みたいなものを感じたんです。原作権はないよとは言われたけど、でもいずれ俺のところに来るだろうと思ったら...来た。武さんどう? と言ったら...来てくれた。虹郎くんともバッタリ会った。それも運命だし。それから僕も知らなかったんですけど、武さんも(映画の舞台となった)高島平に住んでいた。だから土地のことも微に入り細に入り全部分かっていて。原作にある舞台を全部言い当てるんですよね。そういう風に、運命に導かれるように出来上がった映画で。そういう映画が何年かに一度あるんですよ。だいぶ昔の映画ですけど、北野武監督の『ソナチネ』もそんな感じででした。そういう映画だと、プロデューサーとして『この映画は当たりますよ』と説得することができなくて。会社にはとにかくいいからやらせてください、やれなかったらやめますという言い方しかできなくて。それでやらせてもらったというわけです。たぶんこの映画は、"あの年の東京国際映画祭でかかってすごかった"と語り継いでもらえる映画だと思う。そんな確信だけがただ、あるという。そういう映画だと思います」と一気に語りました。

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 そして最後に武監督が「この映画は銃というものを描いていますが、人間が道具に支配されるというところが僕の中でのテーマでした。特にこの映画が海外に行って、銃社会で生きている人たちがどのような感想を持つのか、聞いてみたいなと思っています。ぜひこの映画祭から出発して、少しでもこの映画を世界に広げていきたいなと思っております」とお客さまに呼びかけました。映画『銃』は11月17日よりテアトル新宿ほかにて全国ロードショーとなります。

2018年10月29日 (月)

東京国際映画祭で映画『銃』を上映!奥山和由プロデューサー、武正晴監督が裏側を明かす

 現在開催中の第31回東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門出品作品『銃』が10月28日(日)にTOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映されました。そして上映終了後は、本作を企画した奥山和由プロデューサー、そしてメガホンをとった武正晴監督を迎えて、お客さまとのQ&Aが行われました。

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 芥川賞作家・中村文則さんの同名小説を映画化した本作は、雨が降りしきる河原で偶然に銃を拾った大学生トオル(村上虹郎さん)がその銃に魅せられ、やがて狂気の世界に導かれていくさまをスタイリッシュなモノクロ映像で描き出した衝撃作。本作には村上虹郎さんの父・村上淳さんもとある重要な場面で出演。村上虹郎さんのデビュー作で、河瀬直美監督がメガホンをとった『2つ目の窓』以来の親子共演が話題ですが、そのキャスティングについてまず質問を受けた奥山プロデューサーは、「実は(村上淳さんの)あの役はギリギリまで別の大俳優に決まっていたんですが、その人のギャラの折り合いがつかなくてお願いできなくなった。そこでどうしようかと思った時に、(村上さんの)お父さんはどうかと思いついて。それで虹郎くんに恐る恐る聞いてみたら、『親父が大丈夫なら』ということでオッケーが出た」と説明。それには武監督も「はじめて聞きました」と驚いた様子を見せました。

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 原作小説の「銃」が世に出た時に、奥山プロデューサーは、すぐに映画化したい旨を出版社に告げたそう。しかしその時点で、すでに別の俳優さん主演で映画化企画が進められていたといいます。その後、紆余曲折あって、映画化権を奥山プロデューサーが獲得することになりましたが、「主人公を誰にしようかなと考えたんですけど、その時は誰も思い浮かばなかった」のだとか。

 本作で主人公トオルを演じるのは俳優の村上虹郎さんですが、実は村上さんとの出会いは東京国際映画祭でのレッドカーペットだったのだとか。「彼は深田晃司監督の『さようなら』でレッドカーペットを歩いていたんですけど、そうしたら『奥山さんでしょ』と。初対面なのにタメ口で呼びかけてくるんですよ。でもその表情を見て、トオルはこいつしかいないと思ったんです。だから東京国際映画祭でのご縁があって『銃』が出来上がり、この間もまた映画祭のレッドカーペットを歩くことができたので、縁があるよなと思いました」としみじみ語る奥山プロデューサー。刑事役のリリー・フランキーさんもブルーリボン賞の授賞式で会ったことがきっかけでオファー。武監督とも「刑事の役はリリーさんしかいない」と確信を抱きつつも、しかしなかなか返事が来ないことにやきもきしたとのことですが、二人ともギリギリまで出演を待ち続けたそう。その甲斐あって、リリーさんが出演することとなりましたが、そんなリリーさんの演技は驚きの連続だったそうで、初のリリーさんとの仕事に二人とも感銘を受けた様子でした。

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 メガホンをとった武政晴監督は、『百円の恋』で各種映画賞を総なめにした売れっ子監督。「武さんは『GONIN』の助監督をやっていただき。そして壮絶だった『SCORE』の現場を支えていただき。僕の作ったアクション映画を助監督として支えてくれた方。武監督もこの映画祭でバッタリお会いしたんです」と振り返る奥山プロデューサーは、「ただ武監督のスケジュールが2年後まで埋まっていた。でも一本くらい(仕事が)飛ぶでしょと言ったら、翌日飛んだんですよ。何日空きました? と聞いたら20日というんで。それでも、やっちまいましょうか、ということでどんどん進んでいって。気づいたら十分に仕上げができるくらいのスケジュールになった」と述懐します。

 一方の武監督は「原作を読んで、こんな難しいものをよく映画にするなと思ったんですよ。でもその時に(村上)虹郎が夏に空いているんだよと。それはいいなと思ったんですよ。それから(むしろ海外を目指して)日本の興行を気にしないでいいと。いまどきそんなプロデューサーはいないですよ。これは監督にとっても殺し文句でしたね。とにかく何かやりましょうと。ただ(予定していた仕事が流れたので)『百円の恋』の気心が知れたスタッフが流れてくれた」と振り返ります。そして奥山プロデューサーは「(奥山プロデューサーが手掛けた北野武監督の)『ソナチネ』みたいに年数が経って評価されるような映画になる確信があった。だから何がなんでもやろうよという気持ちでしたね」と続けました。


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 その後は客席からの質問を受け付け。喫茶店で村上さんと広瀬アリスさんが話すシーンで、まわりのガヤガヤした話し声も逐一聞こえてくるような音響設計にした意図について、タバコの使い方についての意図、モノクロの画面設計、主人公の衣装について、そして原作者の中村さんと武監督は隣の小学校の出身で、同じ原風景を見てきた同士として舞台を理解していた話など、映画を観たお客さまならではの鋭い質問の数々に丁寧に返すお二人。まわりのお客さまも熱心にその話を聞いていました。

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